第39話 休暇センターゆき

それで、愛紗は

まだ時間が早いから、ジャージの上下で(笑)


丘の上の休暇センターにお風呂とご飯。


「いつも、このくらいに帰れるといいなぁ。」まだ5時半。



それは無理だ(笑)路線バスって、主に通勤・通学の為のものだから

行政が補助金を出していたりして、赤字路線を走らせていたけれど

これも、行政改革で廃止が簡単になった代わりに、補助金が減った。


貸切扱いで、路線バスを住民専用にしたり。


市営委託でコミュニティバスを走らせたり。


いずれも結構乗客があるのは、料金が安いから。


だいたい100円くらいである。


熊本とか大分あたりでもだいたいそのくらい。


全国でもだいたいそう。そのくらいで走れるのは

行政補助であるから。


過疎地域では、更にお金が出ないので

乗り合いタクシーになっている。


山の中とか海辺のもと漁村とか。


大岡山はまだ、路線で大丈夫なところももあるが

廃止の検討地域もある。



「さてと。」メークも落として、ジャージにタオルと

ほぼ、体育部の学生みたい。


まだ21である。大学生でも通るし


愛紗はのんびりしてて、高校生にも見えたり。



「さーて。あ、そうだ。旅行の相談を。」メールで出した。


みんなに。




「泊まるのは、うちでいい?来週。私は寝台特急で帰ろうかと思うけど。」と

愛紗。


宮崎まで乗り換えなしで寝ていけるし、のんびりできるから。

出てくる時も乗ってきた。


12時間くらいかかるけど、普段ダイヤに追われてと

帰ってのんびりできていい。


それに、国鉄だと会社から旅費の補助があるので(笑)


切符が安いし、周遊券がある。


7日乗り放題で15000円。寝台券だけ買えばいいので

6300円×2。


補助が2割。


結構いい制度である。


飛行機はライバルなのか、国鉄は斜陽産業同士だからか(笑)



安い。そういえば、バスの前に国鉄マークが小さくあるのは

そういう理由であるらしい。




それで、大岡山駅に電話して、土曜日の夕方の列車を聞くと

思ったとおりの空き具合だったが


個室は結構埋まっていたので


車体の真ん中あたりを取った。



いつも、それが楽しみで旅行していた。



友里絵と由香は、それぞれ

土曜が乗務であるらしく


夜行は無理だろうと愛紗は思っていた。


日曜を休みにして、お昼の飛行機で来ても1時間くらいだ。


新幹線でも6時間くらいではあるが。ふたりの性格からして

列車に6時間なんて飽きるに違いない(笑)と、思う。



菜由は、まあ、性格から言っても夜行だろうけど

鹿児島までは15時間くらい。結構長いので


「奥さんになったら、飛行機かなー。」




なんて、愛紗は楽しくバケーションを空想した。


おなじ空想でも、どうしてこんなに楽しいんだろう。




悪い妄想と違って(笑)




ココアのエンジンを掛け、シフトを手前に。

あっけなく感じられて。「楽でいいけど。」



バスの機械シフトがなんとなく頼もしい。



自分の車で走り出すときも、指差しをしようとして

笑った。



「癖になってるね」



ひょい、と軽いアクセルは

電子スロットルで

最近のバスも同じ。



丘の上への上り坂を走っていくと、大岡山のバスにすれ違う。


丘の上にはコンピュータ工場があって、そこへの通勤バスと

休暇センターゆきバスがここを通る。


新しい高速道路も出来、サービスエリアの道の駅とか

田舎なので人気がある。


連絡バスも、いくつか。



のーんびり、古いバスがふんわり、ふんわり走っている。


3551あたりは、いすゞでも乗り心地がいいけれど

ふつうの板ばね。


空気ばねの4762とかあたりとそんなに変わらない。


それが、長年バスやトラックを作ってきたいすゞで

乗用車にも板ばねを使ったりしたが


形式だけ見る人には価値がわからなかったらしい。



SUVにも使われたが、人気がなかった。



そんなものかもしれない。バスの運転手もそうで


事故はなくて当たり前、乗り心地は良くて当たり前。


だけども、それは大変なことなのだ。


やってみて、判った。



そう思う愛紗は、丘の上の休暇センターに着いて。


屋根つきの駐車場に停めた。


メールが入ってきて。


友里絵と由香は、思った通り飛行機で来るとの事。


夕方くらいに宮崎空港で、との事。



菜由も、今回は飛行機で行くから

友里絵たちと一緒に、との事。



「そっか。それだとひとり旅だね。ほとんど。」

まあ、元々そのつもりだったし

戻ってくるかどうかも、向こうで考えるつもり。



のんびり旅になるな。


それも、いいかも。



疲れた。



なんだか、どうして今ここにいるのかもよく判らなくなった。


元々、運転をしたくて出てきたのに、適性と言うか

環境が悪くて(笑)



そんなこと、就職情報になかったもん(笑)。


とか、思いながら。

エンジンを止めて、車を降りて歩いていくと


増田のバスが、休暇センターのロータリーを通過していった。


平日に乗る人は、あまりない。


窓越しに見る制帽姿はカッコイイ。



「それだけ、だったのかなー。」と


愛紗は、自分の甘い思い込みを恥じた。


なんて、子供だったんだろ。



本当に、何がしたかったんだ。私(笑)

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