44話
感知していた、魔力が突然動き出した。
その瞬間カイは腰に下げている剣を抜き戦闘体勢に入った。
「...お前、何している?」
目の前で剣を抜かれたため、ガルはカイのことを警戒し始めた。
教師と生徒達にとっては突然のこと過ぎて何が起きているか分からなかった。
だが、ガルは不思議に思った。剣を抜いたカイが見ているのは自分たちが進もうとしていた通路の奥だった。
「...先生、ここは引き返すべきです。この状態はおかしすぎます。」
先程とはカイの纏う空気が違うことを感じた教師はカイの言う通り引き返すことにした。
「わ、わかりました。こ、ここは戻りましょう。」
「ですが...!?」
「い、今の3階層の様子はおかしいところがあります。な、なのでここは戻ります。」
教師が戻るという明確な意思を示したことで生徒達も渋々言うことを聞くことにした。1人を除いて。
「俺は奥に行く。」
「ダ、ダメです!」
すると突然3階層の奥から膨大の魔力が波の様に流れて来た。
(ッ!?)
カイは咄嗟に自分の魔力で全員を包んで障壁を作った。他の皆は魔力を感知することが出来ないため魔力の波が来ていることには気づかない。
流れて来た魔力とカイの魔力が衝突した。
しかし、流れて来た魔力は障壁を素通りし全員が魔力の波に当たった。
だが、カイ達には何も起きなかった。
(今のは...?)
カイが今のことを考えていると、教師がガルの腕を掴み無理やりにでも連れて行こうと考えた。
教師があと少しで掴めそうなときに、ガルが教師の手を叩いた。
「奥に行く。」
ガルの纏う空気が変わった。
先程までは戦うために奥に行こうとしていたのに、今は『なんとしてでも奥に行かないといけない』という様子だった。
「奥に行く。オクに行く。...オクにイク。...オクニ、オクニ、オクニ...。」
最後の方はぶつぶつと言っていたため誰も聞き取れなかったが、全員がガルに狂気を感じていた。
「オクニ!!」
突然ガルが3階層の奥に向かって走り出した。生徒はそのことに反応が出来ず、近くにいた教師もガルに向かって手を伸ばしたが、掴めなかった。
だが、カイだけは魔力を纏い走り始めたばかりのガルを捕まえた。
後ろから跳びついて抑え込んだため、ガルを下にして地面に倒れ込んだ。
(さっきの魔力波のせい!?)
カイはさっきの魔力波のせいでガルがおかしくなったのだと考えた。
抑え込まれて動けないにも関わらず、地面を這ってでも奥に行こうとするガルはまさに狂気の沙汰だった。
「先生!!バイトを抑え込むの手伝って下さい!!」
無理やり抜け出そうとするため、所々地面と擦れて擦り傷から血が出ていた。
教師も加わり無理やり抑え込んだが、ガルは魔力を纏い抜け出そうとし始めた。
「うっ!?」
突然力が強くなったため教師がのけぞった。
ここまでカイは極力傷つけないように抑え込んでいたが、このままでは逃げ出してしまうためもっと力を込めて抑え込もうとしたとき、急にガルが抵抗しなくなった。
カイも教師も突然のことに驚き思考が停止してしまった。
ガルを抑え込むのに夢中になり魔力感知をしていなかったのはカイの最大のミスだった。
(ッ!?)
「あなた達が今回の実験のモルモットですか!!」
不意に声がしたため全員が声のした方を見た。
そこにはフード付きの黒いローブを着た人が2人いた。片方はフードを脱いでおり、普通の成人男性と変わらない容姿をしていた。もう片方はフードを深くまでかぶっており、ローブ越しでもガタイが良いのが分かった。
(あの男は普通の魔力量だけど、あのガタイが良いほうはおかしい...。魔力が多すぎる...。)
ガタイが良いほうはオークファイターよりも多くの魔力を持っていることをカイは感知した。
「さて、時間は惜しいですからね!!さっそく実験を始めますよ!!」
「あ、あなた達は何者ですか!!ダ、ダンジョンには学園の関係者以外入れない様になってるはずです!」
教師がローブの2人に問いかける。すると機嫌が悪そうな顔になった。
「はぁ~。うるさいなぁ。お前たちは食われてればいいんだよ。」
先程と口調が変わり、突然「食われてろ。」言い出した。その言葉には濃密な殺気が含まれていたことで教師は恐怖で喋れなくなった。
「早く来い。」
男がそう言うと通路の奥からドスドス聞こえ始めた。
ローブを着た2人の後ろからオークファイターが現れた。
「プギィイ、プ、プギィィイイイイ!!」
だが、そのオークファイターの口からは血が混ざった涎が零れ、腕は多くの血管が浮き出ており、腹は肉割れが出来ていた。
「ほら、食え。」
オークファイターがカイ達を食べるために動き出した。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
5月の投稿ですが、4月と同様に2日に1回、奇数の日に投稿します。
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