移動文庫

「もし、移動図書になっていたら、別の本と取り替えるってこと

できるだろうか?」とルーフィは考える。


クリスタさんは「・・・そうですね。3冊あるうちの

どれが貸し出しされているかは分からないですね。」



個々に識別はされておらず、同じ本が複数あっても「冊数」が変わるだけ。

この図書館はそういう管理になっている。


ただ、館内にあるか、移動文庫になっているか

どこかの図書館に貸しているかは、分かるらしい。





「ゆきのひとひら、みたいな本が

ほかの町の図書館に貸し出されるのは

あまりないみたいですね。」



めずらしい絵本でもないので、どこの街にも

複数ある、と

検索コンピュータには表示されているそうだ。



「移動文庫に乗せるなら、[移動]って

コンピュータに表示されるんです。」と


クリスタさん。





「本だけ、持って行ってしまったのかしら。」とも。




これだけ本があると、中には

行方不明の本もある。



コンピュータ管理をしても、最後は

データと本が合っていないと、誤差もある。

コンピュータは万能マシンじゃない。


結局人なのだ。管理は。




もし、本に心があったり

ルーフィの思いみたいに

何かが宿っていたり。


めぐみたいに、魔法を間違えて(笑)


2次元モデルになってしまった魔法使いさんが


くっついている事も、ひょっとしたらあるかも。





そんな風にルーフィは思い



「移動文庫のバスは、いまどこにあるのですか?」と

言いかけて。



図書館脇の道路沿い、車庫に止まっていた

水色のバスか、と


何気なく眺めていた風景を思い出した。





振り向いて、地下のパーキングから

坂道を駆け上がり



ルーフィは、バスの止まっているあたりを見た。




いない。




「やっぱり・・・・移動文庫に乗ってしまったのかな。」




確証はない。けれど、リスクの高い方から探していくのが

鉄則だ。




バスの巡回ルートは決まっているはず。




思い返し、ルーフィは図書館の中に引き返す。





1階の貸し出しカウンターには、クリスタさんが戻っていて

絵本の行方を捜していた。



児童図書館の方でなくて、一般図書の書架に

1冊あった。



そうすると、残りは2冊、そのうち1冊が

めぐが乗っているかもしれない。



その、書架にあった1冊を、内緒で持ち出して

移動文庫にもし、めぐが乗っていたら


その「ゆきのひとひら」と取り替えて

持って帰ってくれば、いい。



そんなふうにルーフィは考えた。



貸し出しリクエスト処理を3冊とも、掛ければ

誰かが移動文庫で借りようとしても、エラーになって

貸し出しができない筈だから


めぐの身は安全だ。




だけど、同じ絵本に3冊、貸し出しリクエストをするのは

ヘンだ(笑)。




ひとりひとりにID、識別番号がついているので

ひとりで同じ本3冊にリクエストするのは無理。





しかたないので

とりあえずバスの巡回ルートを調べ、貸し出しをクリスタさんの名前でしてもらい

1冊の「ゆきのひとひら」を持って


ルーフィは、バスの後を追った。




夜ならともかく、昼間から空を飛ぶのは・・・ちょっとダメ。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る