ひとりと、みんな



ほんの一瞬の、ルーフィのお手柄(w)も

「でも、この世界のひと全部に、この手は使えないね」と言うお話。



めぐは「あ、ルーフィさん、すこしお疲れですね」と

穏やかな笑顔。


ロビーで、お休みになって、と

エルゴノミクスデザインの、おもしろいソファーに

ルーフィを薦めた。



イタリアンテイストだろうか、こういう

優雅な雰囲気のものが、図書館にあるのは

ちょっと楽しげで、いい感じ。


ベージュの、カーブしたバックレストに、リアル・ウッドのシート。

ソファースタイルで、重厚感があって。



デザインで、人の心を和ませるのも

またいいものね。



そんな風に、わたしは思う。

この、デザイナーさんも、そういう気持ちで

作ったのかな....。



ベリーニさん、と言うサインがソファーに入っていたので

いつか、どこかで会えるといいな...なんて

その名前を記憶した。



わたしも、ルーフィの近く、そのソファーに腰掛けた。

反対側からも座れるようになっているのが、図書館用、っぽくて

おもしろい作り。


ふにゃふにゃとカーブしているバックレストの、それぞれに

ひとりひとりが優美に座れるように考えられていて。


「作り手の心、だね。」と、ルーフィ。



「デザインで、心に訴えるのってステキ。デザイナーさんも

天のお使いかしら。」と、わたし。


「そうかもしれないね。作り手の気持ちが作品に出るものだ、って

言われてるし。」と、ルーフィ。



仕事もそうで、楽して儲けよう、ってスタイルもあるし

このデザインみたいに、心を込めてする仕事もあって。



めぐ、は

これからどんな仕事をしていくのかなー。


カウンターにいる彼女は、耳の遠いおばあちゃんに

本のご案内をしている。


手話を使おうと思ったらしいけど、おばあちゃんが手話を

知らないので(3w)


本のある書架まで、ご案内することに。


公共の施設なので、そんな時も

他の司書さんが、カウンターの仕事を

代わってくれたりしているけれど



忙しい場所だったら、カウンターに

人が並んでしまったり

そんなこともあるかもしれない。



カウンターで待っている人も、耳の遠いおばあちゃんも

おなじ、サービスを受けている人。



そんなふうに考えて、サービスをお金で売るお店なら

わりと、めぐ、みたいな丁寧な対応を

喜ばない、そんなお店もあったりもする...。


そんな事を、わたしは取材の経験から思い起こした。





そこにある「心」ってなんだろう?。





そんなお店に勤めていたりすると、時間に追われて

セカセカしたりするのかな....。なんて。




昨日の、あの

本を借りに来たおじさんの事を思い出した。





「ねえ、ルーフィ? 悪魔くんの憑いている心って

結局、その人の想像を、悪魔くんが歪めちゃう、って事?」

と、わたしはなーんとなく。



「そうだね。昨日のイライラおじさんで言えば、物理的な時間の経過を

見ないで、ひたすら急いでるって感じで。感覚は4次元だから。」と、ルーフィ。




「3次元の感覚に合わせればいいのね」と、わたし。



「そう。目の前にある時間の流れと環境に合わせる、って事。

なんだけどね。自分の意思を弱める事だから.....。神経の昂奮を

少し抑える薬、そんなものとか....。それか。

針治療みたいなもので、昂奮する気持ちを抑える、とか...。」



隣町で会った、気術使いの人だったら

そんな薬を知っているかもしれないし、針治療も詳しいかな....。



偶然が、ほんとは必然だったりする。


そんなこともあるけれど、あの人もそうかもしれない....。?






めぐ、は

静かに書架から戻ってきて「歴史小説って、いっぱいあるんですね。」

と、楽しげに感想。



「文学は幅広いもん」と、ルーフィ。


どちらかと言うと、魔法使いは理系なのかしら...。

ルーフィの魔法は、そんな感じだ。



「コンピュータで見出し作るといいわね」と、わたしは思いつき。



「はい、そういうのあるみたいです。」って

めぐは、第一図書室の真ん中にあるパソコン数台の事を

見た。



「それでも、おばあちゃんでパソコン使うのって、結構大変らしくって。

いろんな言葉で本、書かれてるので。

原語で検索ってできないらしくて。」



それで、人の手でご案内するのも、とってもいいことね。


コンピューターの都合に、人が合わせるのも

なんとなくヘンな感じもするし。



忘れてたけど、そういう事って多くて

なーんとなく悪魔くん的な考えっぽいような気も....(2w)した。





カウンターで、本を貸し出しする人、返すひと。


いろんな人たちが、川のように流れていくけれど

楽しそうに、嬉しそうに

帰って行く人の表情を眺めているのは、ちょっとしあわせな感じ。






コメディ



アルバイト、いろいろあった

その日の仕事を終えて、昨日みたいに

めぐと、わたし、ルーフィは

図書館の前から、路面電車の通りまで

歩きながら、お話をした。


ルーフィは、過去へ旅して

悪魔くんが憑いていた人の、悲しい過去を

克服できるように、お薬をあげてきた、と

そんな風に伝えた。


「よかったですね。その方が、しあわせになってくだされば。

赤ちゃんもしあわせになるでしょう」と、めぐは

ハイスクールの生徒にしては、落着いた言葉を発した。



たぶん....それは、宿っている天使さんの言葉かな....。


なんて、わたしは想像した。


時々、台風娘になる時のめぐは

とってもかわいいけど、あっちが17歳の彼女らしい、そんな感じもする。



わたしは、悪魔くんたちからの防御だけ考えていたのに

めぐは、その、クレームを付ける人がお母さんで

その人の赤ちゃんのしあわせを考えていたり。


そういう、深い広い考えも、なーんとなく。天使さんっぽいなぁ、

そんな風にも思った。




でも。


天使さんは、なーんの為にめぐに宿ったのだろう?


めぐは、ちょっと窮屈なんじゃないかしら....?



一度、天使さんに会って話をしたい(3w)そんな気もして。



ちょっと複雑な夕暮れだった。




「ねえ、めぐ」と、わたしはその事を、本人に聞いてみようと思った。



「はい....?..。」めぐは、歩きながらわたしの方を見たので

舗道のタイルにつまづいて、転びそうになった。


「あぶないっ!」と、ルーフィが

支えようと、手をさしのべた。


ところが。



ルーフィの手の高さは、ちょうど、めぐのかわいいバスとのあたりだった(8w)



「あ....。」と、ルーフィはめぐを起こしてから

すぐに手を引っ込めて「pardon,me」


「い、いいえ...。」めぐは、両腕で

ひとり抱きしめ(3w)ポーズで、

でも、真っ赤になって俯いちゃって。



かわいいスカートからのぞく、すらっとした脚まで

真っ赤に染まってた。



男の子に触れられた事、なんて無いんだろうし(アタリマエ)。


わたしだってないわよ....(4w)。ルーフィに触れられたの、なんて。



そりゃ、事故だけど....なんかもやもやするっ(笑)。



めぐが黙っちゃったので、わたしたちも静かに

路面電車に乗って、おうちに帰った。





昨日みたいに、ディナーを頂いて

わたしたちは、それでもふつーに過ごしたつもりだったけど

めぐがおとなしいので、お母さんが心配してた。


「学校で、何かあったの?」と、尋ねても


めぐは、俯いてかぶりを振るだけで

まだ、すこし頬が赤かったり....。




きょうは、温泉には行かないで

お家のお風呂に入った、と言っても

お家のお風呂も、温泉が引いてあるので

お湯の感じは似ている。



離れの、おばあちゃんのトマト畑のあたりに

新しく、温泉を引いて。

お父さんが、お風呂を建てたのは

最近のことだったと思う。


ログハウスを作って。

檜で、バスタブ。

アジアふう、らしくて

とってもいい香り。





....でも....わたし...は。

あんな事件ってなかったなー。


クラスメートの男の子に、ムネさわられた、なんてないし

だいたい女子高だもん...。



思い起こすと、お医者さんしか触ってない(4w)。

おのれーめぐぅー、わたしのルーフィーにぃ!(笑)なーんて。


ルーフィにだって、触られてないのにぃ、あーん

かわいそうなわたしのおムネさん(99w)。



なにいってんだろ、あたし....(^^)。




ま、めぐはわたしだから、いいのか......(?)





「一緒にいこっか」と、わたしは

めぐを、お風呂に誘った。



奇妙におとなしくなっちゃった、めぐを誘って

わたしは、裏庭から

おばあちゃんのひろーい畑を歩いて。

離れにある、ログハウスのお風呂に。


自分の家とおんなじだから、なんか不思議。


でも、一人用のお風呂だから、ふたりで入ると

ちょっと、狭いかしら。


ほいほい、と

女同士で気楽なので、わたしはおーるぬーど(笑)。

めぐ、は

うつむいたまま、背中に手を回して。


ゆっくりと。


ちょっと、まだ素肌はピンクに染まってるみたい。


まーだ、どきどきしてるのかな....。


無理も無いわ。初めてのことじゃ....。


でも、わたしはつとめて明るく「さ、はいろーよぉ。昨日みたく、背中

ながしっこしよっか」と、言うと、めぐは

俯いていた顔をあげて。


「Megさん」と、真面目な顔で言うので

わたしは、どっきりした。



しっかりとした表情をすると、かなり美人だ。



そりゃそうだ、わたしだもん...(88w)なんて、ヘンなことを

わたしは思った。




「.....。」めぐは、黙ってわたしを見ている。


朝露に綻ぶ蕾のように、その瞳は潤み

かたちのいい唇は、きゅ、っとしてて弓みたい。


キスしたくなっちゃう(笑)。


わたしは、そういう趣味はないけれど(3w)

そのくらい魅力的。



「どうしたの?」って、わたしは

めぐの雰囲気で、なーんとなく応えた。



「あたし....ルーフィさん、好きになっちゃった!」

と、おっきな声で言って、泣き出しためぐは

素肌のまま、わたしに抱きついてきた。


若鮎みたいなボディは、ほんとに

わたしの3年まえかしら、って思うくらいに

凛々しくて。


ルーフィも、こっちに転ぶかなぁ(88w)なんて

不埒な想像をしながら、わたしは

めぐを慰めた。



「うんうん....そっか。」そうは言ったけど

ルーフィは、わたしの...。あ、でも

めぐは、わたしだから。

どっちでもいいのか(笑)。



「.....でも.......るーふぃーさん..は...Megさん..の...。」と

めぐは、しゃくりながら絶え絶えに、わたしを気遣う。



「でもね....。いいの。『あなたはわたし』だもん。それに....。

決めるのは彼だし。」


わたしもそう言った。いつか、わたしたちは

じぶんたちの世界に帰る事になるんだもん。


それとも、こっちの世界からルーフィーは戻らないって

そういうかしら?


ちょっと不安に思ったけど、それでも

めぐの気持ちも大切にしてあげたかったし....。



ちょっと狭いかな、って思ったけど

それでも、ふたり並んで洗うには十分な広さ。

なんたって、ログハウスだもん。


「2階つけて、お洗濯物干せるといいわね」なーんて

わたしはちょっと主婦っぽい(2w)あーあ、年かしら。



気持ちを打ち明けて、すっきりしたのか

めぐは、すこし元気になった。


笑顔が戻ってくると、わたしも安心する。



「何も、言わなくていいの....?ルーフィに。」と、わたしが言うと


めぐは、はい、とだけ。

静かに、シャボンを泡立てながら。


ふたりっきりで、こうしてると

清楚で、不思議に魅惑的。


大人っぽいボディと違って、惹かれる感じじゃなくって

大切にしてあげたい、って。

そんな感じに見えて。



....これは、強敵だわ(66w)。



ルーフィめぇ。オトメふたりを惑わせて。

悪いやっちゃ。





そんな風に思ってたら、ログハウスの入り口に

人の気配。



だーれも来ないと思って。鍵は掛けてなかった(笑)。


扉の立て付けが少し悪いので、思いっきり引っ張らないと

開かない。



ばん!


扉が開かれて、わたしはめぐを守ろうと

お風呂の入り口の硝子戸、すりガラスだけど

そこに立ちはだかった。


「あれ...なんだ、ルーフィじゃ....キャー、出てけ、ばかーーー。」と

叫んだので、ルーフィはびっくりして瞬間移動。

手に持ってたわたしの、シャボンがついた海綿は、宙を舞って

ルーフィの居た空間を超えて、ドアに当たって落ちた(笑)。



すりガラスだから、よく考えたら首から上しか見えないのに(33w)

硝子扉開けて、スポンジぶつけなきゃよかった(笑)。






「まったくもぅ。スケベ魔法使いめ!」と、わたしは

すこーし、めぐの気持ちを気にして。



たぶん、わたしたちが入ってるのを知らないで来たのね。

お風呂セット(w)落ちてたもん。



「だいじょぶよ、めぐちゃんの方は見えないから、入り口から。」と


わたしは言った。



「はい.....。」と、そうは言いながらも

めぐは、なーんとなく恥ずかしそう。


だって、ねぇ。なーんとなく....。

着てたものもかごに入ってたし(笑)まあ、見えないようになってるけど。







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