第49話 荒海へと漕ぎ出す機人たち 4
「ショウ……?」
「すまねえ拓。こいつに頼らざるを得なかった……」
ショウがそう漏らすと多関節アームの手から銃が落ち、床に転がった。
「このマグナムは腹にしまってあったんだが、至近距離から自分の腹を撃つと俺まで機能停止してしまう。監視カメラが作動してる中で俺が妙な動きを見せれば麻利亜が危ない。だがお前たちが麻利亜を助けだしてくれたおかげで、こいつをやっつけることができた」
「ショウ、あなたはもしかしてイグ……」
僕がショウに問いかけようとした、その時だった。突然、コンテナの床が傾き始め、僕ら三人は床の上に転がった。
「ショウ!」
身を起こそうと床に手をついた途端、さらに床が大きく傾いて僕は搬出口から外へと放りだされた。
「ぐおおおっ」
僕が地面に倒れたまま顔を上げると、徹也がコンテナの扉にしがみついて耐えている姿が目に入った。
「徹也、無理するな!」
僕が叫んだ瞬間、徹也の手がコンテナから離れ、大きな身体が空中に投げ出された。
「な、なんだこれは……」
謎の力で持ち上がったコンテナの下から現れたのは、タイヤがはめ込まれたトレーラーの本体だった。
「まさか……あれでショウを連れ去るつもりなのか?」
僕が呟いた瞬間、運転席の存在しないトレーラーがアイドリングの音を立てはじめた。
「基紀、敵が逃げるぞ。ワゴン車に戻って追いかけよう。麻利亜さんを車に乗せてくれ」
拓さんはそう叫ぶと、コンテナから転がり落ちたショウのマグナムを拾った。
「――徹也、起きられるか?」
僕は呻き声を漏らしながらゆっくりと身を起こしている徹也に、声をかけた。
「大丈夫だ。……くそっ、ショウを助けられなかった」
僕と徹也はぐったりしている麻里亜の身体を担ぎ上げると、ワゴン車の狭い後部席に運びこんだ。
「見ろ、逃げるぞ。早く乗るんだ」
拓さんがワゴン車のエンジンをかけ、僕と徹也は慌てて車内に身体を滑り込ませた。
僕らより一足先に飛びだしたトレーラーを見て、拓さんは「ちっ」と小さく舌打ちした。
「遠隔操作じゃない。あれはAIを搭載した『考えるトレーラー』だ。逃がすものか」
拓さんは険しい表情で前方を見据えると、獲物を追う狩人のようにアクセルを踏みこんだ。
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