第43話 その名はマリオン③
「では、まいります」
マリオンの両腕に現れた、ギアのように絡み回る魔方陣の回転が加速する。
「
両
「魔法!? まさかお前も
「不愉快な誤解はよして下さいマスター。わたくしはあんな劣悪な試作品とは違います」
その表情は僅かではあるが、不快の念が刻まれている。
「それはそうと、個体名マコトから離れて下さい。巻き込まれては元も子もないので」
「なら余計に離れるわけにはいかねぇな」
光は不敵に笑って居合いの要領で腰だめに構えた。
だが、真琴がズイッと前に出て光を庇うように立ち塞がる。
「真琴!?」
「まーかせて、先輩。鉄壁の防御てやつ見せ付けて、格の違いを思い知らせてあげるから」
真琴は盾を構えマリオンを挑発するように手招きする。
「
真琴が持つ盾に聖印が現れ、光の防壁が盾を中心に形成される。
「その傲慢と共に消滅しなさい。『
「お断りだい! 『
マリオンから放たれた光の洪水が、うねりを上げて真琴に襲いかかる。
だが、二重三重に張られた真琴の防壁をそうやすやすとは突破出来ない。無論真琴の方も余裕というわけでは無く、魔力の洪水に押されジリジリと後退していく。
だが軍配は真琴の方に上がった。
「やぁあああ! はぁっ!!」
歯を食いしばって耐えていた真琴が、裂帛の気合いを放つと、障壁が爆ぜると同時に魔力の洪水をも弾き返したのだ。
「はい終わり。わかった? これが本妻との力の差よ!」
マリオンと言えば、恐らく必殺の一撃を耐えられたのがショックだったのか、またぞろろくでもない事を考え込むように、ブツブツと独り言を呟いている。
「防御力極めて大。真正面からの攻略は困難。
「残念でした。あたしには『
胸を張って宣言する真琴の言葉に絶句したように、マリオンは黙り込んだ。
「敵の排除事実上不可能。では不本意ながら、第二案を採用」
そしてクルリと光の方を向くと、どこか興奮したように懇願する。
「わたくしと一緒に死んで下さいマスター」
「なんでそうなるかな!?」
「共に来世で結ばれましょう」
「人の話を聞いていた!?」
「痛みは一瞬ですから」
「うわよせ貴様止めろ!!」
髪を振り乱しながらじわりじわりと迫ってくる様は、まるでホラーである。
おまけに聞く耳を持たないので、お話にならない。
そんな時だった。救いの声が聞こえたのは。
『貴様ら、人の嫁を勝手に覚醒させて何をしておるか』
いつの間に居たのか、ライオネルと名乗っていた
「わたくしを嫁と呼ぶあなたは何者です」
『おお、マリオン。私の最高傑作にして伴侶よ。私が真のマスターだ』
だがマリオンは首を傾げて、事もあろうか反論した。
「わたくしのマスターは既にいます。わたくしを嫁と呼んでいいのはマスターただ一人。あなたの出る幕はありません。この骸骨」
『馬鹿……なっ! おかしい。覚醒したら自動的に私を伴侶として認識するはず。マリオン、ちょっと『
そう言うとライオネルはマリオンの胸にある、クリスタルに手をかざす。だが、マリオンの鋭いアッパーカットが炸裂し、その頭部が吹き飛んだ。
「自己防衛システム起動。わたくしに触れないで下さい」
『いや、これは過剰防衛だろうがっ!』
吹き飛ばされた頭部を脇に抱えてライオネルが抗議するが、マリオンは無視している。
取りあえずマリオンの矛先が、この変態リッチに向いている間に光は事の真相を聞き出すことに決めた。
「おい、そこの変態リッチ」
『誰が変態かっ誰がっ』
「どうしてこいつ何百年も動かなかったのに、今頃動いてんだ?」
『ふむ。恐らくだが
「んじゃ次の質問。その胸の
『決まっておる。ユーザー登録を行うのに生者の魔素が必要……あっ』
カックンとライオネルの顎が下がった。
『しまったぁああ!? 私死んでおるじゃないかっ!! そもそも起動自体が出来ん!!』
「アホかっ! お前!?」
だが、ライオネルは馬耳東風とばかり、光の言葉を無視してなにやらブツブツ呟いている。
この辺マリオンそっくりだった。
『ううむ。
「言ってることはもっともらしいが、随分アバウトだな、おいっ」
『柔軟性に富んだシステムと言ってくれんか』
「そのおかげでこっちまで苦労してるんだよ!」
頭を元の位置に戻したライオネルは、腕を組んで『どうしたものか』と悩んでいたが、やがてポンと手を打つ。
『そうか。貴様の心を殺して憑依すれば問題は無くなるではないか』
「大問題だわ!?」
だがライオネルは相変わらず人の話に聞く耳を持たず、光に向かって宣言した。
『というわけで、貴様の肉体貰い受けるぞ。小僧』
こうして最終決戦の火蓋は切って落とされた。
割としょうも無い理由で。
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