第39話 破壊神降臨④
『さて、奥よ』
『なんでございましょう。我が君』
すでに人形達は消滅し、跡には高熱によって赤く染められた床や壁が熱を放つ、凄惨な光景が広がる中で、
『久方ぶりに若い肉体を得た事でもあるし、
『まぁ』
真琴はコロコロと笑って、そっと身を離す。
『愛を語るにせよ、交わすにせよ、時と場所というものがございます』
だが光は引き下がらない。
『良いではないか。こうやって共に表に出てくる機会なぞ、そうそう有るものでは無いぞ。ん?』
そして真琴の肩を掴み、優しくも激しく真琴の唇を求める。
『ああ……っ、我が君』
真琴も恥ずかしそうに光の唇を受け入れ、さらに身体を密着させた。
そこに光の右手が真琴のスカートの中に伸びようとする。
その時。
「いい加減にしろよ、この野郎!」
光は真琴の秘所へと手を伸ばしかけた右手を左手で掴み、叫びながらよろよろと真琴から離れていった。
「黙ってりゃ人の身体勝手に使ってやりたい放題っ! キスまではともかくっ、真琴の、その、なんだ」
『何が言いたい貴様』
自分で自分の腕を掴み、独り言で言い合う姿はどうみても厨二病をこじらせた少年だが、光本人は大真面目である。
「ともかくっ、人の身体使って人の女に手を出すの禁止!」
『何と無体な。こちらも肉の身体を使っての
「当たるわ!? そもそもお前何者だ!」
『ほう、我が名を問うか。よかろう、耳の穴かっぽじってよく聞くがよい!』
そして光は胸を張って威風堂々と名乗りをあげた。
『我が名はシヴァ! ガンジスを守護する三柱が一柱にして、破壊と創造を司りし神である!』
だが、光の反応は実に冷ややかであった。
「シヴァ神だぁ? インド・ヒンドゥー教の? なんでそんなもんが俺の中に居るんだよ」
『貴様、覚えておらんのか……と、そうか。ブラフマンめに記憶を封印されておったのだったな、良かろう一部我の権限で解除してやろうぞ』
シヴァ神がそう言うと、光の脳裏に転移してきた時の情景が浮かび上がってきた。
四本の四肢と額に輝く第三の眼を持つ巨神に、この身を蹂躙され、改造された時の事を。
「お前らが……!」
『思い出したか』
シヴァ神の無慈悲とも冷酷とも取れる言葉に、光は激怒した。
「神の資格かなんだか知らねぇがっ! 勝手に改造されて、勝手に異世界に放り出されて! お前ら俺達に何をさせる気だ!!」
その言葉にシヴァ神は傲然とした口調でこう宣言した。
『破壊を。この世界一切の破壊を!』
その言葉に光は絶句した。
「破壊? この世界を? 何のために、どうやって!?」
『すでに貴様は我が
「意味がわからねぇよ!?」
シヴァ神は仕方ないとでも言いたげな口調で言葉を続ける。
『かつて我々に敵対する神々がいた。そやつらが世界の壁を越えて力を蓄え、今も虎視眈々と我らが世界に再侵攻せんと狙っておる。その前に滅ぼし尽くす。そして貴様らはその先兵よ』
「ふざけるなっコラぁあ!! 人を勝手に改造して、兵器代わりだと!? あまつさえ、関係も無い別世界まで滅ぼすなんて、正気じゃねぇ!」
光は尚も言いつのる。
「第一、やり方が極端すぎるっ! 人の家に潜り込んだ自分の家のゴキブリを退治するのに、他人の家一軒燃やすって言ってるのと同じだぞ!?」
『ふむ。言い得て妙だな』
「何感心してやがる!」
『お待ちなさい。落ち着いて』
「これが落ち着いていられるかっ!!」
真琴が諭すが、それは逆に光の怒りを買う。
「お前も真琴じゃねぇな!? 何者だ!」
真琴
『私はシヴァ神の配偶者、豊穣と生命を司る神。名をパールバティと申します。いと猛々しくも優しき少年よ』
真琴とは思えない程落ち着いた、包容力のある言葉が光の心に染み入り、光は不思議と冷静さを取り戻していく。
『あなたの愛らしい奥様の身体を使うこと、どうか許して下さい。私と我が君、シヴァ神は二柱で一つなものなれば』
「……どういう意味だ」
不思議と先程まで怒りで頭の中が真っ赤になっていたのが、今では嘘のように落ち着いている。
『禁忌に触れること故、多くの事は言えませんが、私達は男女一体となって初めてその役割を果たすことが出来るのです』
「役割? どんな。まさかそれも言えないって言うんじゃないだろうな?」
だが真琴、いやパールバティは静かに首を横に振って答えた。
『破壊の後の創造。私達が担っているのは古き世界を破壊し、よりよい世界を創造する。それが役目なのです』
パールバティの言葉に、光は絶句する。
「ちょっと待て」
『何でしょう少年』
「まさかお前らが本番したら、その破壊と創造が起きる、なんて言うんじゃないだろうな?」
『言い方が下世話な気がしますが、概ねその通りです』
「じゃ、俺と真琴の場合はどうなる」
『別に普通の営みなら何事もおきません。ある特定の場合以外は』
なんだかいやな予感がしてきた。
『
「じゃあの姿で同時にイったら、その場で世界は終了ってか!?」
『
「冗談じゃねぇぞコラぁあ!!」
こうして光にとって悩みの種がまた一つ増えたのだった。
割と
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