第54話 過剰戦力 1

 一年第一航空隊の生徒たちは青空学校と国が支援する研究施設へと見学に来ていた。施設はスカイシティの研究区に存在しそこにはパワードスーツや無人車両の開発、薬品開発や実験を行う場所がたくさんある。

 研究施設を一か所に集めているのは、防衛する際に戦力を一か所に集中させるためである。

 二つの班に分かれステラやミチやヤマネは生物研究の施設を見学していた。

「うわ……これなんていうんだっけ?」

 ステラは液体に満たされた入れ物の中にいる動物を見ていった。

「それはホルマリン漬け。腐らせないようにするの」

「ヤマネこういうの詳しいの?」

「最初は研究区の学校を志望してたからね」

 研究区にもいくつかの学校がある。

 スカイドレスの次ぐ新規パワードスーツやマシンを開発する工学系。

 マスターやパイロットの医療や補助を現場や後方で行う救護衛生を行う支援系。

 機械ではなく生物的アプローチで様々な問題に立ち向かう生物学系などがある。

「まぁ、今ではマスターやってるんだけどね。青高からでも支援はできるからいいけど」

 元々ヤマネは支援を担当したかったがその際に受けたスカイドレスの適正テストで高得点をたたき出したために青空学校から招待を受けてマスター科へと変更した。

「生物系もやってみたかったけどマスター科しながらっては難しいからそっちはあきらめたよ。でも、悲観することでもない。新しくやりたいこともあるからね」

 そんなヤマネを意外そうな表情でミチは見ていた。

「なんだか気が抜けた感じだと思ってたけど結構しっかり考えてるんだね」

「それなりにね。この世界は不明な点が多すぎる。私はそれを知りたいだけなんだ」

 青空学校のマスターは基本はスカイドレスを扱う職業に就くことがほとんどだが、成績や成果によっては防衛庁や保安庁などで科学技術庁などで職につくこともある。

「世界が変化するスピードは早い。噂では宇宙とも交信してるって話もある。こっちはやっと宇宙に出れたというのにね。見えぬ明日への不安を払拭するために私は勉強してる」

「あら、宇宙と交信してるのは事実よ」

 現れたのは白衣に金髪のショートカット、ステラたちとさほど変わらぬ年齢の見た目をしている少女だった。白衣の下は学校の制服を着ている。

「私はここで生物学を専攻しているミーニャよ。みんなはマスター科なんでしょ。あまり私たちとはかかわりがないように見えて実は怪我した時には私たちが最後の砦になることもあるんだよ」

 三人はその言葉の意味が分かっていなかった。

 ミーニャは自由時間中の三人を誘い研究室を見学させた。


 生物学第三研究室、別名「リボーン」

 ここでは肉体の再生や治癒能力の向上などを研究している。

 そのためには様々な生物の特性や遺伝子情報を集め、その特性をどう人間にフィードバックできるかを日々研究している。

「例えばトカゲなんかは尻尾を切られても再生するでしょ。その再生力を応用したり、ペニクラゲの若返りのライフサイクルの応用、さらにココドリの声帯とかね」

 まだ人体実験の段階まで来ていないが近い将来実現するとと研究者たちは言っている。

「翼とかならほしいかなぁ」

 ステラは研究室にいる鳥かごの鳥を眺めながら言った。

「翼か……。中々難しいね。すでに人類は空を飛ぶ技術を編み出しちゃったから、肉体一つで空を飛ぶ理由があまりないね」

「でも、ロマンはありますよね。翼を出し入れ出来たらきっとみんな自由に空を飛びます」

「人がそれだけ簡単に移動ができたから工学のやつらは仕事がなくなっちゃうよ。今だって義足や義手に対して私たちは再生させることで必要をなくそうとしてるしね」

 研究区は国のため以上に人類ために研究開発を行っている。

 アプローチの方法は違うがお互いの専門分野で同じ課題にぶち当たることは多々ある。基本的には競争関係なのだ。

 生物の能力を応用するということから、ステラはバイオジニアスの男を思い出した。

「あの、バイオジニアスのこと知ってますか」

「昔のとこのまえのどっち?」

「このまえのです」

「あー、あれね。正直驚いてるよ。企業間での競争はよく聞くけどまさかデモに便乗して何か仕掛けてくるとはね。正直、ここみたいな研究施設を襲った方がよっぽど効率いいのに。人を襲うために尻尾だすなんてね。あまりにもざるすぎるわ」

 ステラはその言葉に妙に納得してしまった。

 あれだけの力がありながら一度も逃げようとしなかったあの男には今思えば不審な点がある。エトワールと勘違いしたということがあまり考えづらかったのだ。

 確かにステラとエトワールは違うが、そもそも身長が違う。髪の長さも違う。

 制服でもないしそれにミチを連れていた。

 何かが引っかかるのだ。

「まぁ、君たちマスター科は企業間の競争に関わることがあるかもしれないね。時代の主役は君たちだ。有人飛行を行える方法でスカイドレスほどコスパがいいものは存在しない。君たちはいずれ宇宙までも制覇できるさ」

「宇宙……」

「この空の上だよ。まぁ、それよりも先にこの地球の裏側に行かないとね」

「リバースですか」

「うん。あっちはファンタジーさ。交流する機会が楽しみだよ」

 

 その時、施設のアラートが鳴り響いた。

「これは警備アラート!? そんなまさか!」

 ミーニャは慌てて原因を探るとすぐ答えがわかった。

「研究区西エリアにアンノウンか!」

「西エリアって」

「ここだよ」

 ステラたちのいる付近に未確認の多脚式無人兵器が現れた。

 

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FLY HIGH~空を駆ける少女たち~ RuNext @RuNext

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