第50話 いつでもどこでも駆けつけます! 4

 すでに外の武装車両の件で駆けつけていた警備局だったがアカネはバイオジニアスと男のことをいった。

「バレているとはな。まさか武装車両そっちのけでやってくるとは思わなかった」

「今日は式典なんだからそれなりに装備があるに決まってるでしょ。電気系統ダウンさせてさっさと止めたわ」

 男は話をしながら懐に手を突っ込んだ。

「何だそうとしてるの?」

「ちっ、これもバレたか。……まぁ、いいんだけどな!!」

 男は注射器を取り出し自身の腕にそれを刺した。

「超人薬の類か!」

 アカネは慌ててリボルバーで男の腕を撃つ。

 注射したほうの腕だけを撃ち抜き腕が吹き飛ぶが男は不敵な笑みを浮かべていた。

「我々は頂点に立つ生物を作るんだ! 簡単にやられるわけないだろう!」

「狂った天才集団め……」

 男の腕はゆっくりだが確実に再生され始めていた。

 形はいびつで通常の皮膚の色とはかけ離れたグレーで鉱物のように表面はごつごつとしている。

「まだ人間では安定はしないか……。だが、お前らを殺すくらいならわけもない!」

「させない!」

 アカネはすかさずステラの前に出て警棒で男の攻撃を防いだがその威力は想像を超えており軽く押されてしまう。それに真後ろにステラがいるためスラスターで押し切ることもできない。

「どうした? 守りながら戦うのはつらいか?」

「そんなわけないでしょ。背中に背負うもんがあるからもっと頑張らなくちゃって底力が出るわけ。自分を認めるために他を犠牲にしてあんたらにはわからないでしょうけどね!」

「ふん! 理解する気もない!」

 男は薬が馴染んできたのかさらに力を強めた。

 このままでは押し切られるとき、男の硬質化した左腕が破壊された。

「こっちを忘れてもらっちゃ困るなぁ~。私は自分のドレス持ってきてるんだよ!」

 七星から自身のドレスでやってきたノアはコンパクトモードで呼び出しドレスを着ていたのだ。

「ナイス! これでどう!」

 警棒をヒートモードに切り替え男の右手を焼いていく。

「くそっ! こっちの皮膚はまだ変化していない!」

 男が怯んだとこでアカネが蹴り、ノアがワイヤーで捉え後ろの壁へと叩きつけた。

「早くワイヤーを外して! 持っていかれるから!」

「えっ? っておわわ!!!」

 壁に激突させたはずなのに男はまだ立ち上がり人間と思えないパワーでワイヤーを引っ張る。

「なにこのパワー!?」

「前よりもパワーが上がって……。君! 名前は?」

「ノアです! 七星のノア!」

「ノアね。私はアカネよ。ノア、そのまま引っ張られないように止めておいて。拮抗している状態なら相手も動けない。今のうちにダメージを与えて疲弊をさせる!」

 ノアが耐え、アカネがリボルバーを撃ちまくった。

「アカネさん! これ使って!」

 C級の低威力の小型マシンガンを投げた。

「仰々しいものもってるね」

「マスターのたしなみですよ。C級武器ですけどね」

 アカネは容赦なくマシンガンをぶっ放す。

「ステラ! リボルバーのリロードをお願い! そっちの子は腰の照明弾を取って空に撃って!」

 手際のいい指示二人は動き、場をアカネが支配していく。

「アカネさん、引っ張る力が弱まってきました」

「ならもうちょいね。マガジン投げて」

「これが最後です!」

「いいよ。すぐ仲間来るから」

 いくつかの場所で武装車両による占拠があったために仲間のパトフライヤーは照明弾を頼りに駆けつけてきた。

「一号機、どういう状況?」

「バイオジニアスの男が自分に薬物を投与した。弱ってきてるから拘束する」

「了解」

 拘束ネットの準備を行い一号機アカネの指示でネットを射出。アカネは銃撃を止めネットは男を拘束し微量の電撃で体を痺れさせ動きを完全に止めた。


 ステラは事態の経緯を話した。

「エトワールに間違われたか。まぁ、青い髪だし無理もないかもね」

「その、エトワールさんはどういう人だったんですか?」

「まっすぐな子だよ。才能を余すところなく発揮してすべての依頼や任務を受けてほとんどを成功させてる。でも、本人が目指すものもしっかりとこなす。あれだけすごい人は見たことない」

「その過程でバイオジニアスとも関わったんですか」

「うん。薬物投与によって凶暴化した動物を全部倒して研究所を潰したの。かなりのお金が動いていたらしくてその一部には連邦の関係者も資金援助していたらしい。いつか再開されると思ってたけど、もう再開してるなんてね」

 エトワールが潰した数々の計画の中の一つがバイトジニアスの計画だった。生物の強化や回復力を高め肉体欠損を治すという名目だったが、どこかでおかしくなら最強の人類を作り出すという方向へ向かってしまった。

「でも、バイオジニアスは今も薬を一般販売してますよね。大丈夫なんですか?」

「今市販で売ってるのバイオジニアスファミリア、元々はバイオジニアスの子会社だったけどバイオジニアスがやらかした影響もあり今はファミリアがトップになってる」

 今回の武装車両の占拠事件は兼ねてから予想されていた事態だという。車両や武器の開発依頼一部の企業が独占するためにそれに反発した企業や個人の工場がパトフライヤーの式典で暴れまわり、メッセージを伝えようとした。

 しかし、警備局に加え治安維持局も来ていたために迅速な対応によりすぐに収まった。

 占拠の範囲は通りやブロックごとだがその範囲の広さから違和感を抱いたアカネは何かをカモフラージュしていると考え人通りの多い地域をメインで担当。その際にステラたちを見つけた。

 ステラの首もとの締め付けられた跡を見て、アカネは言った。

「いつでもどこでも駆けつけますってのがパトフライヤーのキャッチコピーなんだけどさ。もうちょっと早く駆けつけられればステラに怖い思いさせずに済んだのにね」

 例え人命は守っても襲われた人の精神的苦痛は変わらない。アカネにとっては命を救うのは当然であり、もっと早く駆けつけ被害者を出したくないというのが本音だった。

「私は大丈夫です。それにそんなに悲観することはないですよ。これからどんどんマスターも増えていきます。メカニックもサポートも。今はまだ完璧じゃなくても次の世代のために繋ぐ準備はできますから」

「……1年なのに案外大人だね。やっぱり君にも才能があるんだよ。これからたくさん辛いこともあると思うけど頑張ってね」

 アカネはそういうとステラたちに手を振り現場を後にした。

 

 その後、ステラは学校のメンタルチェックを受け精神的な以上はないかを確認した。

 頭に装置を付けて心を落ち着かせいくつかの質問に答える。

「問題はなさそうね。それ、外していいよ」

 メガネに黒髪の白衣着た女性はステラに言った。この女性の名はマホ。精神鑑定や精神の異常を発見したり、生徒たちのカウンセリングを行っている。

「ステラちゃんの活躍は耳に入ってるよ。何かと事件に巻き込まれて大変だね」

「はい。でも、人よりも多く経験積めてるは良いことなので、怪我をせずにきり抜けられたことを喜びつつ、次に活かせればなって」

「以前、そんな風に言ってた子がいたなぁ。その子もいろんな時間に巻き込まれてね。よくここに来てたよ」

「やっぱり辛くてですか?」

「いや、休みに来てただけだよ。疲労がたまるとここと離れの医務室でズル休みしてたから。成績優秀で言われたことをこなすから教師も目を瞑ってたみたいだけどね」

 マホは名前こそ出さなかったがおそらくそれはエトワールで間違いないと感じていた。

「今後、私もここに来る機会が増えるかもしれません」

「それは歓迎するけどどうしてだい?」

「直感です」

 その返事にマホは意表を突かれたように固まるがすぐに小さく笑い言った。

「そうだね。だったら、ベッド空けておくよ」

「はい。では、今日失礼します」

 マホは軽く手を振りステラを見送った。

「あの子が到達する日もそう遠くはないか」

 マホは呟いた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る