第48話 いつでもどこでも駆けつけます! 2

 スカイシティに配備されるパトフライヤーは正式に全部で三機。

 駆けつける速さもあり三機あれば間に合うと判断されたらしい。

 警備車両もいくつか導入され、サポート用の通信設備や武装なども紹介された。

 治安維持局とはライバル的な扱いになるが壇上の上では笑顔で握手を交わしている。腹の内側ではお互いに一歩譲る気はないはずだ。

 二人は展示用のパトフライヤーと試作一号機を見ていた。

「ステラこれ着たんでしょ」

「うん。装甲は薄いけど動きやすくてオート機能もあるから初心者でも扱いやすいんだよ」

 すると、警備局の制服を着た女性がやってきて言った。

「オートバランサーね。それにオートロックオンにオートスラスター。本人の意思とは別に最善の動きをするように組まれたシステム、マルチオートシステム。私にとっては無粋だと思うけどね」

「あ、あのあなた?」

「私はパトフライヤーのマスターアカネだよ。青髪の英雄さん」

 アカネはステラの正体に気づいていた。

「大丈夫、周りに言いふらしたりしないから。私は君にお礼が言いたかったの。試作一号機のテストを行ったマスターがオート機能が強すぎて扱いづらいって指摘したおかげでオート機能はオンオフを誰でも自由に変えられるようになったの」

 試作一号機のパトフライヤーはオート機能を付けるかどうかの判断をするために、発進前にオート機能をオンオフして調整できるようにしていたが、ステラが着たあの時点で現場用にはオート機能標準装備を想定されていた。

 その理由としては民間人を巻き込まないために確実に相手を仕留めるためだ。

 パトフライヤーを着るマスターは青空学校のマスター科生徒が配属されるケースが多いが第二や第三のマスターがほとんど。

 空軍に入るマスターよりも多少能力は劣るがそれでも本来なら申し分はない。

 しかし、上層部にはそういったのは通用せず第一意外には信用は過度に置けないということでミスをなくすために本人の個性を殺すマルチオートシステムを搭載させた。

 だが、ステラが操作した際の違和感や戦闘中に切り替えるにはまだ不安定なことから、完全搭載ではなく任意になったのだ。

「君は感謝してるんだよ。私、オート苦手でさ。治安維持局のはオート少な目だったから着やすかったんだよね」

「元々治安維持局だったんですね」

「警備局の人員を増やすために一部治安維持局から警備局に移動になったの。と言ってもライバル関係だから引き抜かれた私は結構ふわふわした立ち位置なんだよね」

 今回、警備局設立には様々な経緯があり、警察のみでパワードスーツや高い科学技術をもった犯罪に対応ができないために、防衛庁管轄の治安維持局と中央連邦空軍、それに警察庁の協力により設立された。

 立場上、警備局は警察庁の管轄となるが都市や町の防衛などには積極的に協力する取り決めがあるために資金援助と人員の援助を行った。

 アカネのようにマスター科卒業後治安維持局で働き、今回警備局に移動させられたものはそう多くはない。

「あの、アカネさん。マスターのみなさん壇上に上がってますけど行かなくていいんですか?」

 ミチは壇上を指さした。

「やばっ! もうそんな時間か! 愚痴に突き合わせてごめんね。またいつか話そっ」

 アカネはヒールだというのに軽快走って向かった。


 会場をあとにして近くの露店で二人は食べ歩きをしながら巡っていた。

「この辺は学生が多い通りなんだよ。ゲームセンターやアパレルショップ、コスメブランドだけが入ったビルややエステなんかもあるよ」

「あ……えっと……」

 ステラは聞きなれない単語に口が半開きでよくわかっていない様子だった。

「ぶはっ! そんな間抜けな表情しないでよー。笑っちゃうでしょ。じゃあ、まずはゲームセンター行ってみようか」

「何をする場所なの?」

「えーっとね。レースしたり銃で撃ったりするの」

「……狩猟?」

「違う違う。デジタル画面の相手を撃つの。ほら、マスター科のシミュレーションみたいな感じ」

「あーそういうことか。なんだかおもしろそう」

「さっそくいくよー!」

 二人は四階建ての全てがゲームフロアになってるアメイジングステーションへと向かった。


 ミチはぐいぐいと奥へ進んでいくがステラはまるで捨てられた子猫のようにおびえたように体を縮ませ歩いていた。

「ミチ……まって……」

「なに? もっと大きい声で言わないと聞こえないよ!」

 周りにはたくさんのゲーム機がありこの付近のエリアは微妙に薄暗く学生もたくさんいるためにステラは動揺を隠せてなかった。

 一旦、窓際の休憩スペースへと移動し円形になった柔らかい椅子にステラは腰かけた。

「ゲ、ゲームセンター……。恐ろし場所……」

 田舎育ちで自然の中で生きてきたステラにとっては薄暗くものが密集しており薄暗いゲームセンターはスカイドレスで戦う以上に未知との遭遇だった。

「ほら、ピーチスカッシュだよ」

 ミチはステラのためにドリンクを買って渡した。隣に座り一緒に窓から見える通りを眺めている。

「まさかステラがここまでダウンするとは。普段ドレス着て飛んでる姿ばっかり見てたから何でも行けるとばかり思ってたよ。ごめんね」

 ステラは氷がたくさん入ったキンキンに冷えたピーチスカッシュを一口飲み。落ちついた。

「いいよ。たぶんみんな想像している以上に私のとこって田舎でさ。こういう普通のこともやったことないから動揺しちゃったよ」

「どのへんなの?」

「スカイハイの近くって言ったらわかるかな?」

「えっ!? あの周りってほとんど草原と森と山と川でしょ。町あったんだ……」

 浮遊島スカイハイの周辺はステラの住んでいた町以外はない。

 最低限の現代的な生活はできているが不便なのは変わりない。

 買い物は基本外部からやってきたときにまとめ買いをして生活関連の設備も一定期間に一度しか点検に来ない。

 狩猟などで食べ物を得る人やそれを売る人もいるくらいだ。

「でも、スカイハイが近いなら何か支援してくれてもいいのにね」

「スカイハイは中央連邦国領土内にあるけども浮遊島という都合上拒否権があるの。スカイハイは加盟を拒否した。だから、個人間のやり取りはいいとしてもスカイハイが公式に連邦国の町に支援や物資を送ることは禁止されてるの」

「ふ~ん、融通が利かないんだねぇ」

 

 ビルの窓から見えるはこの通りを歩く人々とこの場所よりも高いビルたち。

 自然公園や植物館、風車などもこの都市にはあるが、ここからではハイテク科学力によって生み出された硬く冷たい建物が並ぶ。

 しかし、人々はその中で温かく暮らすことができる。

 ステラは自然の中で育った。暑いさも寒さもすべてが伝わるそんな環境では手を取り合い助け合いみんなが過ごす。決して便利な暮らしではなかったがその温もりが恋しくなった瞬間だった。

「ここにはここの形があるんだもんね。慣れていかないと」

 恋しくはなるが決してここを卑下はしない。

 それぞれの場所に楽しみや美しさがある。

 それを知るためにステラは楽しむことを選んだ。

 ステラは立ち上がり言った。

「ミチ、おすすめのゲームを教えて!」

「おっ、やる気になった? 私に任せなさーい!」

 

 一方で不穏な影が動き始めていた。

「はい、あの青い髪はかつてのあいつです」

 男は誰かと連絡をしつつ物陰からステラを監視していた。

「ええ、わかりました。チャンスさえあればやります。――ヘリオスの復活のために……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る