企業戦争

第47話 いつでもどこでも駆けつけます! 1

 中央連邦国はフロントの国の中でも大国が協力したものであり他国も容易に手を出すことはできない。そのため、中央連邦国に戦争を吹っかけてくる国はそうそう現れることはないが、企業間での争いは絶えない。

 ドレスを開発する企業もあればその武器を作る企業もある。

 パワードスーツを作る企業もあれば戦艦やタンク、ファイターの武器を作る企業もある。

 民事に対しての極度の介入は行わないために空軍は専門の小さなチームを、あとは警備局や治安維持局にまかせている。

 この企業間の争いが大きくなった際にはこういわれる。

 企業戦争と。

 

 今日はサマーフェスティバルでお披露目したパトフライヤーが警備局が正式に都市へ導入する日であり式典が開かれる。

 一部区間を歩行者天国として使用し屋台などが立ち並んでいる。空軍や治安維持局のファイターやドレスのグッズやバッジなども売っており辺りはにぎわっていた。

 ステラはそんな賑わった都市にやってきたのだが、前回散々都市の人たちに話しかけられていたのを忘れていたためここでもみんながステラのことを見つけては声をかけた。

「英雄の嬢ちゃん応援してるぞ!」

「私も来年青空めざしますねっ!」

「握手してください!」

 ステラは完全に人だかりに埋もれてしまい抜け出すのが困難だった。

「み、みなさんパトフライヤーの式典みましょうよー」

 すると、ミチがなんとか人だかりからステラを救出し近くの老舗のカフェへと逃げ込んだ。

「いらっしゃい。あら、ミチちゃんじゃないか」

 そこはダンディなおじさんが一人で経営しているカフェで静かな空間だった。

 回転灯の回る音とレコードから流れてくるような味のあるノイズ交じりの音楽。

 コーヒーの深みのある香りがお店いっぱいに充満していた。

 おじさんは通りが見える窓際の席へと二人を案内しメニューを置いていった。

「ここは隠れ家的なお店なの。この窓はこっちからは外が見えるけど、外からは誰もいない席に見えるの」

「こんな場所があったなんて知らなかった」

 この都市では青空学校の生徒や空軍、さらにアーティストやアイドルなども見つかりやすいためにこういった隠れられるお店が意外にも繁盛するのだ。

 ステラは紅茶、ミチはミルクティーを飲みつつ軽食を取りながら話していると外ではステージイベントが始まったようで人はみんなその方向へ流れた。

「そういえばステラってあれでベーシックスカイドレス止めたんでしょ」

「うん。試作機乗ってたから感覚はすぐに掴めたからね」

 一度目は試作機でスカイファイターとの戦い。

 二度目はサマーフェスティバルでの戦いだった。

「そういえばなんであの時暴走したベーシックスカイドレスをドームまでもっていったの?」

「爆発規模がわからないからどうしようかと思ったんだけど、ドームって全部が開いてなくて頂点部分だけがまるく開いてたから観客に飛ぶことも少なそうだしほかのマスターもいたから手助けしてもらおうかなって」

「じゃあ、結構賭けだったわけだ」

「今思うと危ないよね……」


 式典が始まり先ほどの人たちが別のところへ移ったのを確認して二人も移動することにした。

「あ、でもそのままだとまたバレちゃうよね。ちょっとまってて」

 ミチはおじさんと話すとステラを店の奥へ案内した。

「入っていいの?」

「言ったでしょ。ここは隠れ家的なお店だって。でも、隠れ家から出るとこ見られたバレちゃうでしょ。そのためにここがあるの!」

 店の奥ある大きなカーテンを開けるとそこにはたくさんの洋服が並んであった。

「す、すごい……。えっ、なんでこんなにあるの?」

「変装のためだよ。おじさんの奥さんが隠れ家的なお店にするなら出るときもバレないようにって配慮してくれたの」

 綺麗な服や可愛い服がたくさんかけられてありステラは目が泳いでいた。

「そういえばステラの私服姿って見たことないなぁ。可愛いからどれ着ても似合うよ」

「うぅ~。ど、どれを着ればいいかわからないよ~」

「なら、私が選んであげる。――じゃあ、これとこれで。帽子は……いや、ステラの青い髪は見せたいしなぁー。う~ん迷っちゃう」

 ミチが選んでる間ステラは近くに飾ってあった写真の数々を眺めていた。

 そこには有名なアーティストやアクロバット飛行チーム。ドレスを使ったエキサイトスポーツの選手。それに青空学校の生徒も載っている。

 そこでステラは不思議な写真を見つけた。

「もしかしてラニ先輩かな?」

 三年前の写真にラニや店主のおじさんと奥さんらしき人物が載っていた。それに青い髪の女子生徒も一緒に映っている。

「この人って助けてくれた人だ」

「ステラー。どうしたの?」

 ミチはステラの見ている写真を見た。

「うわっ、この人ステラにそっくりだね! ステラってお姉さんいたの?」

「いや、いない。私はお母さんと二人暮らしだから」

「にしてもそっくりだね。目の色も髪の色もそのまんまだよ。身長はステラはよりも高いみたいだね」

「私もこれら伸びるもん!」

「可愛いからそのままでもいいのに。あ、服決めたからこっちきて」

 ドレッシングルームで着替えるステラだったが全部着替えたところでカーテンから顔だけを出してミチに言った。

「ね、ねぇ。ほかのにしない……?」

「えっ、嫌だった?」

「ううん。服は可愛いしお洒落だけど私にはちょっと豪華というか可愛すぎるというか……」

「あー、そういうことね。だったらまずは勇気の一歩を踏み出して!」

 ミチは強引にカーテンを開きステラの姿を見た。

「い……いいじゃん!! 似合ってるよ!」

 白のニットトップスに腰が絞られた青のキャミワンピ。茶色のブーツにキャスケットを被っている。それに伊達メガネもつけていた。

「派手過ぎずステラの色が出てていいよ! やっぱ私センスある~」

 まだ恥ずかしそうにするステラだったがそれをよそにミチもドレッシングルームに入り着替え始めた。

「ステラはその辺に座って待っててね」

 ミチはすぐに出てきた。

 グレンチェックのセットアップで揃え、大きめのジャケットに短めのラップスカート。ステラのお揃いの形をしたキャスケットを被ってでてきた。

「じゃじゃーん! セットアップの服着てみたかったんだぁ~。やっぱチェックってかわいいよね」

 すると、ミチはステラの手をひっぱり店の外へと向かった。

「青空学校の一年ミチとステラ宛に服送っててください」

「わかったよ。楽しんでね」

「はーい!」

 店の外に出ると案外気づかれないもので青い髪が珍しいため一瞬ステラのほうを見るがそのまま通り過ぎていく。

「気づかれないもんだね」

「だってみんなステラがそんな自信なさげな雰囲気だなんて思わないもん」

 ステラはまだ服に慣れておらずおどおどとしており伊達メガネの効果もあって誰もステラだとは思っていなかった。世間のイメージは勇敢に戦う青い髪の少女といったところで普段のステラならいざ知らず今のステラではまったくイメージとは違うのだ。

「べ、別に普段も自身たっぷりって感じじゃないと思うけどなぁ」

「私から見れば自信というよりも純粋さなんだけどね。物事に対して臆せずしっかりと向き合い望んだ結果をしっかり得ていく。そんな純粋に向き合う精神がみんなにとっては強い人物として映るんだよ」

「田舎育ちで無知なだけだよ。だから、なんでも全力でやる。その先がわからないから。でも、さすがにキューブを空に運んだ時は心臓がおかしくなりそうだったけどね」

 ステラはシミュレーションでもシミュレートモードでもペイント戦でも実弾でも相手に銃口を向けることを躊躇しない。ステラはそのことに対し「死を知らないだけ」と答えた。

 だが、死線を越えたステラの精神はより強固なものとなり、模擬戦においても躊躇ない戦いや飛行技術を見せる。

 危険の先にこそ成長が待っている。それを肌で実感した。

 ステラの精神は常に高みへ、果てのない空へと行こうとしているが肉体はそれに追いついていない。でも、空を目指すステラの気持ちは抑えられない。ゆえにステラはどれだけ危険でもどれだけ過酷でも言われたことをすべてこなし、言われた以上の結果をたたき出す。

 誰もがステラの背中を見ている。

 トップのミソラでさえも、精神面においてはステラに負けを認めている。

「ステラが空が好きでさらに上の空まで行こうとしてるのに、こうやって一緒に遊んでくれるのがとっても嬉しいんだよね」

「私もまだ子どもなんだから遊びたいよ。それに、私は果てのない希望の空をみんなに見せたいと思っているけど、みんなが私に見せてくれる景色もみたいから」

「だったらいっぱい楽しいとこ連れて行って見せてあげないとね」

 

 まずはパトフライヤーの展示や式典を見るために会場へと向かった。

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