第46話 目指す空

 調査報告が終わりしばらくしたころ。

 日差しの暑さも落ち着きひんやりとした風と穏やかで安定した気候が平和な気分にさせる日々が続いていた。

 しかし、マスター科1年は戦争や空軍などの映像を見せられていた。

 

 青空航空科学高等学校では様々な分野で活躍する生徒を育成している。

 サポートかなら通信機の扱いやオペレート技術から民間のどこでも通用する会話術まで様々なことを学ぶ。

 メカニック科なら工業系全般で通用する。

 マスター科も様々な乗り物の運転技術を覚えるために例えマスターとして花開かなくてもつぶしが効く。

 では、本来の目的とは何なのか。

 それはもちろん空軍や治安維持局、警備局などへの配属である。

 3年目になると民間で働くか軍や治安維持局に入るか決めなければならない。

 さらに軍に入ることを選ぶと成績優秀で精神的にも安定しているものは早い生徒で3年の決めた段階で軍人としての権利を得ることができる。

 逆に言えば戦争があった場合に参加する義務が発生するということ。

 無人兵器が増えた時代ではあるがそれはあくまで偵察や陽動などの特定の作戦に限られる。

 いざ戦うとなれば人間同士がぶつかり合うこととなる。


 難しい戦争の話や軍の話を終えたステラたちは食堂で食事をとっていた。

 ミチは頭がパンクしたようでテーブルに突っ伏しぐったりしている。

「なんであんなに難しい話ばかり詰め込むの……」

「まぁ、私たちも入学して半年以上経つからね。そろそろ意識をしていきなさいってことじゃない?」

「ステラは案外平気なんだね。そりゃ、この学校に来たからには軍人になる可能性も考えてはいるけどいきなりあんな過酷な映像見せられたら困っちゃうよ」

「確かにね。以前の大戦の映像はちょっと辛かったね」

 ステラとミチが話しているとカコとミライもやってきた。

「ミチはぐったりしてるねぇ~。どんな授業だったの?」

 カコは興味津々だった。

「面白くないよ。戦争とか軍のお話」

「あーそっち系ね。わたしんとこ明日受ける予定だったはず」

「サポート科は明後日だったかな」

 1年ではあるものの今のうちから少しずつそれぞれの進路を決めていくことなる。

 それは、この学校が通常の授業に捉われず生徒を様々な場所へと遠征させたり体験させたりと全員が足並みを揃えて授業をこなせるわけではないためである。

 軍に入ることを選んだなら生徒によっては軍の体験プログラムを受けたりもする。

 ステラがすでに調査部隊として任務を受けているのがその例だ。


 ミチが何気ない質問をした。

「そういえばステラっていつも私たちと食べてるけどミソラやウララたちとは食べないの?」

「う~ん、たまに食べるけどみんなやりたいことあるみたいだから。でも、リリーカからはよくデザートもらうよ。チョコとかマカロンとか」

「高級なやつだよね。リリーカは最初のシミュレーション以降ステラのこと大好きだからね~」

 ミチはリリーカとステラの出会いを知っているからこそ半年と言えどリリーカの変わりっぷりには驚いた。

「ミライもだいぶ変わったでしょ。最初はすっごくオドオドして敬語だったのに今では堂々とサポートしてるもんね」

 カコとミライは初めての食堂で偶然出会った仲だ。

 カコは今と変わらず陽気でメカオタクだが当時のミライは右も左もわからない迷子みたいでカコに強引に連れてこられたような存在だった。今となってはステラのサポートや先輩のサポートまでこなす1年のサポート科においてもトップクラスの存在感がある。

「強引にカコに引っ張られたのがいまや懐かしいよ」

「今もひっぱりまわしてるけどね」

「言われてみればそうだね」

 これこそ何気ない日常。

 誰もが笑い誰もが過去を懐かしみ未来へゆっくり歩を進める。

 ステラはそんな何気なく掛け替えのない日常大好きだった。

 だからこそ、授業で見た映像も含めステラは決めたことがあった。

「私、空軍に入るよ」

「えっ!?」

 3人は一斉に驚いた。

 それもそのはず。ステラは技術提供をしたくないからとSoraシステムの詳しい説明をせずにワンオフ機を開発した。それは戦いのセンスはあるが戦いには消極的なのだと一同思っていたからだ。

 空が大好きなステラは飛ぶことが上手ではあるがどこか戦いとは別の空で活躍するものだと漠然と思っていたのだ。

「い、いいの? 軍に入ったら自由に空飛べなくなるかもしれないんだよ」

 ミチは心配そうに聞いた。

「そうかもしれないね。でも、雲一つない青空や自然とほころぶ笑顔を守れるなら、どんな空だって飛んでみせるよ。みんなが空を飛べるように私が守るの。だけど、私は簡単には止まらない。さらに上へ。星空の向こう側へ行って見せる。そのためなら軍に入るのも案外悪くないでしょ」

 これを聞いた大人は15歳の少女の夢物語とバカにするかもしれない。

 若いうちは大きな夢を掲げたがる。ステラも同じだと思うだろう。

 だが、3人はわかっている。

 ステラが本気であることを。

 人よりも多くの戦いを経験し、人よりも多く空へ飛び、人よりも空が大好きなステラはそれを本気で叶える信念が、覚悟があると。

 自分自身の幸せを叶えながらあとへ続くものの道を作る。

 過去を変え今を乗り越え未来へ行く。

 ステラというのは純粋ゆえに実は誰よりも欲張りなのだ。

「なら、私はステラのサポートしちゃおっかな。スカイドレスは指定したサポートつけることできるの。ステラに選ばれるようなサポートになってあげる」

「なら私はステラのドレスを修理するよ。何かと隠したいこともありそうだしね。私の実力はマコト先生も太鼓判を押すほどだよっ。今のうちにサインでも書いておこうか? なんてね」

「私はステラの行く先を見てみたい。でも、まだちゃんと戦うのは怖い……。だから、もっと上手くドレスを扱えるようになってまずはステラに追いつけるように頑張るよ!」

 軍に入ることな簡単に決められることなどではない。

 第三や第二の生徒たちは次第に実力の壁を感じ民間へと行くことが多い。

 第一の中にこれだけの信頼できる友人がいるステラは幸運と言える。

 だが、その幸運以上にステラには人を惹きつける魅力がある。みな、不思議なステラの魅力に惹かれやってくる。ソレイユもラニも、ミチもリリーカも、カコもミライも。それにノアやスイもだ。

「軍人になることを決めてしまえばそれぞれ専用のプログラムが当てられる。そうなれば今みたいに一緒にいる時間はなくなる。それでも大丈夫なの?」

 3人は目を見合わせ小さく笑いステラのほうに向きなおり言った。

「私は教室一緒だしなんなら調査だって手伝えるかもだし」

「私はサポートするでしょ」

「修理もいるよねっ」

 たった半年、それだけでも少女たちの絆は深いものだった。

 競い合い助け合うからこそ、一般的な日常を過ごす者よりもその関係性はより親密になる。人は一人では生きていくことはできない。この場所では負けないように成績を維持したり訓練をするが、ゆえに背中を安心して預けられる仲間を自然と求める。

 一度決まってしまえばそれは強固なものとなる。

 この4人には時間さえも超える絆があった。

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