第45話 時が満ちれば

 青空学校からステラ、ミソラ、ラニ。

 海軍からはスイ。

 海原学校からマーレとフルス。

 サポートにはミライが。

 海と空の共闘だ。


「次弾装填完了! いつでもいいよ」

「じゃあ、ババっとやっちゃってー!」

「こらっ! 勝手に決めるなマーレ。あんたもアンカー出して動きを止めるんだよ」

「え~。そんなことしたら私動けないじゃないですか~」

「フルスが弱らすからいいの。私たちは触手を避けて適宜攻撃するぞ」

 海の面々は手際よく場を支配していく。

 後方のフルスが超高速の弾丸を飛ばしイカを弱らせる中、最大望遠モニターは奇妙な映像を捉えた。

「マーレにスイ先輩。このイカ再生します。そちらからももっと撃ってください」

 最初に開けた風穴はすでに完全に元通り。跡形もない。

「少しずつこいつが大きくなった理由がわかってきたかもしれない。空がことを終えるまえに動きを封じる!」


 ステラはラニを追いかける無人機に向かってキャノン砲を放つが動きの素早さに翻弄されまったく当たる気配がない。

「ステラ、鳥を狙って。例え避けられてもラニさんから鳥を離すことができたら無人機はラニさんがなんとかできるから」

「わかった!」

 ロックオンをして怪鳥を狙うが突如怪鳥が動きそうな予感がしたステラはマニュアル照準に切り替え即座に自身の感に従い予測射撃を行う。

 すると、ステラが撃った方向に吸い込まれるように怪鳥は移動。胴体に着弾した。

「やばい! 胴体に当たっちゃった……」

 スカイファイターやガイアタンクでさえも大きなダメージを与えられるキャノン砲に直撃した怪鳥だったが表面の薄い光の膜が消滅しただけで怪鳥自身にはダメージはなかった。怪鳥はそのままどこかへ飛び去った。

「あれがリバースの生物……」

「ステラ、油断してる場合じゃないよ。ミソラが戦ってるパワードスーツがそっちに行った。イカを抑えに行く気だよ」

 ミライの通信よりも早くステラは察知しすでに銃口を向けていた。人が入っていないとなれば撃つことに躊躇はしない。

「この距離で外さない!」

 キャノン砲を再び発射。

 しかし、同時にパワードスーツもライフルを撃ってきた。だが、ライフルの弾を最小限の動きで交わしキャノン砲は相手に直撃。エナジーシールドで防御はされたがかなりのエネルギーは削れている。

 ミソラが追撃し怯んだのち、ミソラはステラにハンドガンを投げた。

「それ使って!」

「ありがとう!」

 ステラは無人機を追いかけた。

「援護します!」

「ナイスタイミング! 一気に仕掛けるぞ」

 ラニはフラップを下げ急減速。シールドを展開しつつ攻撃を受けるも背後に回る。

 ステラはスカイファイターのキャノピー部分へ移動。二人の集中砲火で攻め立てた

 無人機は次々と破壊され全機撃墜。

 残すはイカとパワードスーツのみ。二人は先にパワードスーツへと向かった。

 パワードスーツはすでにミソラのナイフの連撃によりかなりのダメージを負っていた。バチバチと音を鳴らし回路がむぎだしになっている部分もある。

「鳥と戦い終わった仲間が来るわ。あなたは終わりよ」

「ちっ、1年と言えど青空相手に油断するべきではなかった……」

「倒す前に聞きたい。あなた、黒いパワードスーツで赤く目が光るものって知ってる?」

「そんなの答えると思っているのか?」

「知ってるなら悪いようにはしない」

「……」

 

 ステラとラニからすればパワードスーツとミソラはお互いに攻撃することのできる距離でいながらも全く動かないように見えた。

「なにをしてるんでしょう?」

「通信じゃなくて普通に喋ってるから傍受できないな。とりあえずパワードスーツは捕縛するか」

 機銃を捕縛ネットに変更し近づく。

 すると、突如パワードスーツはミソラに閃光を放ちスカイファイターとステラにスモークを浴びせた。

「急にきやがった。ステラはミソラを!」

「はいっ!」

 ステラは急いでミソラの下へ向かった。

「大丈夫?」

「うん、ちょっと目がくらんだだけ。油断した」

「ミソラにしては珍しいね。何か話してたの?」

「うん。他愛もない話。子どもに負けるわけないとかそんなこと言ってたかな」

「なのに逃げたんだ。なんにせよミソラが無事でよかったよ」

 どこか違和感のあるミソラの反応に感づいていたステラだったが何があったかは聞かなかった。難しいことはわからないステラだがミソラにはミソラの考えがあり、それは決して他人を巻き込まないものだとなんとなく理解していた。


 ミソラは先ほどの閃光のこともあり一時島へ退避。

 ラニは今のうちに現状を自身の所属するレッドへと報告。

 ステラはイカのほうへと向かった。

「様子はどうですか?」

「だいぶ動きが鈍くなった。ここからは海のやつらでやるから大丈夫だよ」

 巨大イカは再生能力を持っているが再生をするたびに体力を消耗するようで今は海中に沈みこんでわずかに頭や触手が見えている程度だ。

 手伝おうとしたがステラのその行動に対しスイは首を振った。

 それは遠慮ではなく拒絶に近いものとステラは理解する。

 それと同時に海中にいるということはスカイドレスでは手助けはできない。水中を短時間のみ移動できるマルチタイプのスカイドレスも存在するがステラのは空専用のものであり海中には対応していない。

「わかりました。あとはお任せします」

「今回はありがとう。いつかお礼はするよ。あっ、島に置いてった武器は島の人たちに連絡してコンテナに入れてらもったから今すぐ送るよ」

 ウェポンコンテナからビームガンとビームソードを回収し空の面々は学校へと戻った。


 ステラは今回のことを調査部隊指揮官であるカナリアに伝えるため、少し離れにある空軍までやってきた。空ではスカイファイターのウェポンパックの空中換装訓練やスカイドレスの訓練も行っている。

 施設はまだクーラーが聞いており外の暑さを忘れさせてくれる。

 カナリアの部屋に入ると白い軍服を身に纏いパソコンを眺めているカナリアの姿があった。カナリアは入ってきたステラに一度見て再びパソコンの画面に目を戻し言った。

「ステラか。報告を上げろ」

 カナリアは空軍の軌道エレベーター防衛チーム「スター・ロード」を指揮する立場でもある。例え学校の生徒だとしてもその対応は軍人相手と差異はない。

「調査ルート上でマップに記載されていなかった島を見つけたため調査を行いました。そこで海軍の方と出会いお話をしたあとに巨大なイカが島周辺の海域に出現しました。対処するために海軍の方と協力したところ、銀色の武装した無人パワードスーツと全幅5メートル以上はある怪鳥を確認。駆けつけたブルー1年第一航空隊ミソラとレッド4年第一航空隊ラニと共に交戦。その後、ファイタータイプの小型無人機三機が現れました。すぐに海原水平科学高等学校から1年のマーレとフルスが参加し無事に事なきを得ました。小型無人機は回収。怪鳥はどこかへ飛び去りました。パワードスーツも同様にどこへと飛んでいきました。イカは海軍が調査するということになりました」

 一連の話を聞きカナリアはステラに問いかけた。

「なぜ島がマップに記載されていなかった?」

「のちにサポート科のミライに解析してら持ったところ特殊な電波によりレーダーなどからはあの島は確認が取れないことが分かりました。それと同時にルートナビなども不調を起こすそうです」

「……ではなぜ君はあそこへたどり着くことができた?」

「えっ」

 今思えばなぜステラがあそこにたどり着いたかは謎であった。

 本来、調査となればルートナビのアシスト機能によりルート通りに飛行する、しかし、ステラはそのアシストを無視して進んだ。その結果ルートナビとステラの飛行ルートは一致した。アシストが誤作動を起こしていたことは判明している。

 ただ、なぜステラがアシストを無視して本来のルートを通れたのか謎だったのだ。

「えーっと……」

「なんでもいい。何か空気が違ったとか直感が働いたとか」

「言うならばその両方ですかね」

「そうか」

 そんな曖昧な回答に対しカナリアは意外にも納得したそぶりを見せた。

 すると、扉をノックする音が聞こえ一人の青い髪をポニーテールにした女性が入ってきた。

「失礼しま……」

 失礼します。彼女はそう言おうとしたが途中で止まってしまった。

 なぜかステラの後姿をみて言葉に詰まった。

「えーっと……。出直します」

「いや、構わない。話せ」

「は、はい」

 女性はステラよりも少し前に立ち報告を上げた。

「軌道エレベーター周辺にステルスタイプのファイターを目撃したという報告がありました。捜査をしたところ無人のステルスタイプということがわかりました。大きさは全長10メートル、全幅7メートルと通常の物よりも小さく薄いものと判明」

「ステルスの偵察か。連邦を相手にするのはそう多くはない。チタスとギリアンの可能性がある。日輪の国に監視要請を出しておけ」

「日輪が動いてくれるでしょうか」

「あそこも世界平和のためなら動くさ。それに、戦えと言っているわけではない。監視しろ言っているだけだ。私たちもあそこを敵に回すわけにはいかない。断られたら素直に聞いておけ」

「はい!」

 青い髪の女性が踵を返し部屋を出ようとするとステラは呼び止めた。

「あの! 2度、私のことを助けてくれましたよね。そのお礼が言いたくて」

 女性は少しだけ顔を向け言った。

「ごめんなさい。あなたのことを私は知らないの。人違いじゃないかしら」

 そういうと女性はそのまま去っていった。

 少し落ち込むステラにカナリアは言った。

「時が来れば手に入るものもある。そう急ぎすぎるな」

「それはどういうことですか?」

「単純さ。物事には順序がある。君なら成長。あの子には覚悟だ。もっと成長したときに声をかけてみると良い」

 先ほどまでの軍人としてのカナリアではなく一人の少女を支える目をしていた。まるで教師のように親のように優しい目。

 それは落ち込んだステラの心を癒してくれた。

「そうですよね。もっと成長しないと!」

「本当に面白い子だ。今日はもういいぞ。気を付けて帰れよ」

「はいっ!」

 ステラは確信していた。

 あの女性が助けてくれた人だと。

 返事をもらえるように成長しようとより一層やる気を出した。

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