第44話 海原のダブルエース

 強大なイカと鳥に武装したパワードスーツはそれぞれ別の目的、別の場所から現れたとミライは推測した。イカは元々の品種がこの海域付近で生息するものでフロントの技術を使ったパワードスーツとリバースの鳥が協力しているとは考えられない。

 現に光るものを優先的に襲う習性を理解しいてたらならば光を反射しやすい銀色の装甲などにはしない。

 海軍のスイが全体の指揮をとり細かいサポートをミライがすることになった。

 

 ラニはパワードスーツと巨大怪鳥を分けるために両者に向かって機銃を放つ。

「その大きさならちょっとくらい当たっても構わないよな!」

 巨大怪鳥はパワードスーツよりも早く機銃を察知しパワードスーツを身代わりにするよう蹴って高度を上げていく。

 パワードスーツはエナジーシールドを展開し防ぐがすぐにミソラが追撃し戦闘を開始する。

 ラニは速度を上げ怪鳥の背後を取る。

「久しぶりのドッグファイトだ。楽しませてくれよ」

 今、ラニが乗っているスカイファイターは全長18メートル、全幅11メートル。大して怪鳥の大きさはミライの情報では翼を広げた全幅が5~7メートル程度、全長も同様に5メートル程度だという。

 これだけの体格差と科学技術により高速での空中戦が行えるスカイファイターに立ち向かえるなど本来ならスカイドレスくらいなものだが、この怪鳥は最高速はそこまで速くないが圧倒的機動力でラニの機銃を避けていく。

 ラニもシミュレーションも実践も高成績高成果を収め空軍への加入が決定している身であるがそれでも一筋縄ではいかないほどに怪鳥は賢く能力が高い。

「油断しているとやられないにしても足元を救われるな。ミライ、こいつの攻撃手段は?」

「自身の羽根を対象に飛ばします。パワードスーツを傷つけるほどの硬い羽根なのでもらいすぎるとスカイファイターと言えどどれだけ持つかはわかりません」

「身を削っての攻撃か。ずいぶん原始的な攻撃をしやがる」

 下手に怪鳥とスカイファイターの距離を広げるとターゲットを変えてしまう可能性がある。しかし、怪鳥の機動力はスカイファイターを凌駕しており肉眼で視認した状態での戦闘では怪鳥のほうが分がある。

「どうしたもんか。殺したらどっかの団体がうるさく言ってきそうだしなぁ……」

「翼を狙うのはどうでしょう?」

「それしかないよな」


 一方、ミソラは銀色のパワードスーツと激しい戦闘を繰り広げていた。

「装甲は硬いがこのレッドナイフなら壊すのはそう難しくない!」

 スカイドレスが作られた経緯の一つに対パワードスーツが想定されている。

 それは格闘戦においての機動力、生産コスト、武装の汎用性、出撃の容易さなどが上げられる。ドレスの機動力は基本的にガイアならタンク、アクアならシップ、スカイならファイターをベースに人型用に再構成されたもという位置づけがある。

 対してパワードスーツは他国が開発した最強の歩兵というテーマで作られたもの。

 基礎戦闘力はドレスに劣る。

 しかし、技術力が上がり軍事企業より提供された様々な兵器や新システムを搭載したものが登場し近年スカイファイターがパワードスーツに落とされたという事件も起きた。

「子ども、これは遊びじゃないんだぞ」

 ミソラに声をかけたのはパワードスーツの男だった。

「敵が通信いれてくるなんてめずらしい。対話でもするつもり?」

「我々は巨大生物の捕獲に来ただけだ。貴様らと交戦するつもりはない」

「とか言いつつもしっかりとこっちの仲間をロックオンしてたのは誰?」

「けん制のつもりだったさ。撃つつもりなどなかった」

「あとからなら何とでもいえる。もし、戦闘意思がないというのなら青空と海原にそちらの事情を伝えたうえで戻ってくることね」

「なら、仕方がない」

 男はミソラへライフルを向ける。

 7mm弾を搭載した貫通力に優れた武器だ。

「ミライ、あいつの武器を解析して。メーカーが分かれば相手をたどれるかも」

「まかせて!」

 ミソラは左腕につけている小型ガトリングで相手をけん制しつつ高速移動で翻弄し狙いを定まらないように動いていく。

「これは追いつけないな。だが、速ければ速いほど動きというのは単純になる。それは人の思考が追いつかないからだ。ゆえに、動きを予測して当てることも可能!」

 まったく撃つそぶりを見せなかった男は突如ミソラがいる位置よりも前を狙い射撃した。その予測射撃は恐ろしく正確でミソラが減速しようと加速しようとその位置で当たるように調整されていた。

 エナジーシールドで何とか攻撃は防いだがその威力は高くエネルギーをごっそりと持っていかれた。

「ただの弾丸じゃない。エネルギーの消耗が激しすぎる。こうなれば特定もたやすい」

「わかったよ! ロニアック製のSiGmu7、7mm弾にもいくつかあってそれはエネルギーを消耗させる特殊弾。銀色のパワードスーツはナクモエレクトロニクス製の物でROOK V3。機動力は高くないけど長距離飛行と豊富な武器を装備できるタイプみたい」

「ロニアック社製の物を使うってどこの国? 中央連邦国は使わないでしょ」

 すると、ラニが言った。

「ミストラルっていうリバース境界付近の国が使ってる武器だ。対リバース、対ドレス用、対パワードスーツ用と今から戦争を始めるんじゃないかってくらい準備してる国だ」


 ステラたちのいる中央連邦国はその名の通りいくつかの国が結合したもの、中央とつくのはフロントにおいて多くの大国が結合したことから中央と名付けられた。もう一つの理由として世界をフロントとリバースで二分した際にフロントの中心がちょうど中央国連邦の領土内になることからも中央と呼ばれている。


「あの、こっちで解析したそのパワードスーツ中身ないみたい」

 ステラの発言に全員が驚いた。 

「なんでわかるの?」

 ミライが聞いた。

「まだ未完成なんだけどSoraシステムにAIを搭載しようと思ってつけた解析機能があるの。熱源や生物反応が対象の中にあるかどうかを判断するものなの。大きすぎる建物には使えないし数もまだ詳しくはわからないけどそのスーツの中に人がいないのはわかる」

「へぇ~、空の戦士にも優れたのはいるじゃない」

 スイは感心していた。

 しかし、油断しいている場合ではなかった。

「みんな、小型の飛行物体が接近中。形はファイタータイプ。数は3、この小ささは無人機だ」

 黒色のボディをした小型のファイター機が現れた。小さな機銃を装備した偵察奇襲用無人機だ。格闘戦も行える優れもので戦力の乏しい町ならこれ一つで落とせるほど。

「次から次へと!」

 位置的に近かったラニが最初に襲われた。

「ステラ、あっちの援護に行って」

 スイはそういうが一人で巨大なイカを相手できるのかと心配なステラはそれを素直に受けることができなかった。

「心配しないで。こっちにも援軍が来たから」

 

 すでに海原学校、海軍の海域に入っていたことから援軍要請を発信し一人が誰よりも早く駆け付けた。

「ahoy! 海原の1年エースのお通りだよ!」

 海中から飛び出すように現れたのはアクアドレスを纏った少女だった。

 金色の長い髪に緑色の美しい目をしていた。

 独特な挨拶と共に海中から現れると空中で腕に着けた二門砲弾を巨大イカに撃ち放った。

「スイ先輩久しぶり~! まーた無断で実家帰ってたんですかぁ? 怒られますよっ」

「余計なお世話だ。マーレは相変わらずだな。それにマーレが来たってことはフルスもいるんだろう」

「いますよっ。もうすぐ撃ってくるんで気を付けたほうが――」

 マーレが言っている最中に遠方から高速な弾丸が飛んできた。それは巨大ないかに当たり風穴を開ける。

「Hello、こちら海原水平科学高等学校の1年フルス。これより援護します」

「あはは……。あいつレールガン使いやがったな。あとで被帽回収するの私だろうな……」

 レールガンとは普段使われる火薬による実弾とは近い電気の力で撃ちだす超高速の弾である。海原学校と海軍の所有物であり陸軍や大地学校にも陸戦使用で配備されている。空軍や青空学校、七星学校などはビーム兵器があるために現在はまだ配備されていない。

 あまりの威力にステラたちは驚きを隠せなかった。

 そんな状況にご満悦なスイは言った。

「だから、こっちはまかせてファイターを援護してあげて」

「は、はい!」

 戦力は整った。 

 反撃返しだ。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る