第40話 赤い少女と青い少女 1

 放課後、ステラはワンオフ機がおかれてある格納庫でブルースカイの調整を行ってい。

「エネルギー効率を高めるならこっちだけど悪天候での使用だとむしろ効率が悪くなるか。モードを切り替える機能を搭載するか……。悩みどころだなぁ」

 新たな課題に頭を悩ませているとミソラが格納庫へ入ってきた。

「ブルースカイの調整してるの?」

「あっ、ミソラ。そうなの。やりたいこととできることとやるべきことがうまくかみ合わなくてね」

「空を自由自在に飛びたいなんてすごく普通のように聞こえて一番の難題だよ。ま

だ人類は空を支配できないんだから」

「別に支配する必要はないよ。共に歩めばいい。空はいつもそこにあるんだから」

「空想的だね」

「そうかな? そうだ、ミソラは何をしに来たの?」

「ワンオフ機があるのは自分だけじゃないんだよ」

 ミソラはブルースカイの隣にあるスカイドレスのカバーを外した。

 すると、そこには赤い装甲のスカイドレスがあった。

「もしかして!?」

「そう、私だけのドレス。レッドガール。と言ってもまだ試作段階だからいうならばプロトレッドガールってとこね」

 ミソラ専用スカイドレスレッドガールは超高機動型ドレスである。

 ミソラは近接戦闘が得意でありそのレベルはライカを越えることもある。さらにライカ以上に高速戦闘が得意であり銃の扱いも得意であるために条件がそろうと上の学年でも軍人相手でも対等以上の戦闘を行える。

 そして、その才能を発揮するために作られたのがレッドガール。

 ステラは功績から早めに仕上げたがミソラは寒い季節を迎えるまでに完成することを最初から約束されていた。ブルースカイとはまったく別チームで動いているため特に進行に支障はなかった。

 しかし、ブルースカイは急ピッチのためにまだ粗削りな部分が多い反面、レッドガールはしっかりと考え抜かれたすえの開発のため今の段階で完成度いうならばブルースカイに匹敵する。

「私が目指すのは第三世代スカイドレスのトップ。私が使うことですべての場面で大きな活躍ができることを目的としてるの」

 それだけ壮大なテーマを一年のうちに実現化しようと開発チームが動くのはやはりミソラの成績と才能ゆえだ。

「装備はまだナイフが二本だけだけどね。基本的に専用武器を扱うことでデータの蓄積をして私とこのレッドガールは毎回成長していく。共にね」

「共に成長する……。まだ私はそこまでいっていないかも」

「でも、カコから聞いたよ。独自で組んだシステムを入れてるんでしょ。それも共に成長する一つの形だよ」

「そうだといいなぁ」

 ミソラはプロトレッドガールの設定を弄りステラへ提案した。

「ねぇ、ちょっと外行かない? 今日はいい天気だし綺麗な夕日が見えるはずだよ」

「えっ、でも飛行許可取ってないし」

「いいのいいの。私の飛行テストに無理やり付き添わされたとて言っといて」

 ミソラが手早くドレスを着ていく。

 赤い装甲にミソラの赤い赤い髪。それに深紅の瞳。

 すべてが美しく整っている。

 ステラはそんなミソラの姿に目を奪われていた。

「どうしたのステラ? 早くブルースカイ着たら」

「う、うん」

 ブルースカイを身に纏い格納庫のシャッターを開け空へと飛び立った。

 空はまばらな雲に夕焼け空が綺麗に都市を彩る。

 二人は自然豊かな郊外へと飛んだ。


 山に帰っていく動物たちに草原を歩く動物。

 小鳥たちがどこかへ飛び去り川は穏やかに流れる。

「私、夕日が好きなんだ」

 ミソラは言った。

「小さい頃ね、同い年の友達がいてその子が夕暮れの公園でブランコに座ってる姿がとっても綺麗で印象的だったの。同い年なのにその子に憧れてた」

「その子は今どこに?」

「お別れしちゃったの。どこか遠くに。夜中に生物か機械か、人型で赤く目を光らせた何かが攻めてきてさ。私や家族は逃げ延びたけどほとんどの人は亡くなったり行方不明になったり……。その子もねいなくなったの」

 その事件の概要をステラは学校のデータベースで閲覧したことがあった。

 レッドアイ事件。

 栄えていた町を襲った人型で赤い目の物体が闇にまぎれ人々を襲ったと。

 目的は判明していないが町長が何か隠していたという噂だけが今もささやかれている。しかし、町長自身も瓦礫につぶされなくなっており真実は闇に葬られた。

「そんなあの子への憧れを今も持ってるから。赤い少女、レッドガールの名をこのドレスにつけたの」

「いい名前だね」

「ありがとう。ステラのブルースカイもとっても素敵だよ。ステラに似合ってる」

 青い少女と赤い少女は広大な自然の空で美しい夕日に照らされ風を感じた。

「この空の向こうにあの日憧れたあの子がまだいるかもしれない。トップになれば名が広がって見つけてくれるかもしれない。トップを目指す理由の中でも一番揺るぎない理由だよ」

「素敵な理由。でも、私もやるからにはトップを目指すから追い抜かれないようにね」

「望むところだよ。じゃないと張り合いがないからね」

 スポットライトのように二人を照らす夕日は少しずつ明日へ行くために山の向こうへ顔を隠す。

 またどこかの誰かにスポットライトを当てるために。

 広大なこの星では一人一人が主役になれる可能性がある。

 ステラもミソラもそのライトを浴び、目的を果たしみんなに成長した姿を見せていく。それが次の世代の目標になりまた繰り返す。

 今はあの光を誰かに譲ろう。

 だが、いずれあの光の中心で輝くのは自分だと。

 私が先だといわんばかりの自身に満ち溢れた二人の表情は、希望に満ち溢れており純粋なものだった。

「じゃあ、そろそろ戻ろうか」

 ミソラがそういった瞬間だった。

 山の向こうに未確認飛行反応が検知された。

「ステラ、未確認飛行反応だ。どうする。武装は少ないけど確認だけしてみる?」

「そうだね。何もなければそれでいいし手に負えない出来事ならばすぐに下がろう。その前にちょっとまってね」

 ステラはミライへと現状報告を行った。何かあればミライが報告してくれる。何もなければミライには無断飛行をしてしまったことを黙認してほしいためだ。

「よし、いくよ」

 ミソラが先行し山の向こうへと向かった。


 そのころ、ミライはほかのサポート科の生徒と部屋で話をしていた。

「でさぁ、ミライったらすぐに順位上げてくるから先輩からはちょっとビビられててさ。ほんとおもしろいよ」

「第一いきなり来た時は驚いたもんね」

 ミライはデバイスを確認しステラからのメッセージを受けった。

「あれ、ミライどこ行くの?」

「ちょっと出てくる。すぐ戻ってくるから」

「はーい」

 メッセージ内容は郊外の山で未確認飛行反応を探知しそれを確認するということと時間があればサポートしてほしいと書いてあった。

「タブレットからサポートするしかないか」

 寮の屋上にこっそりと上がり沈み行く夕日に照らされながらタブレットを開きサポートの準備を始めた。


 山の向こうに行くとふもとには小さな町がありそこから未確認飛行反応が出ている。

 すると、ステラが望遠でアイシールドモニターを見ていると不審なものを発見した。

「ねぇ、ミソラ。小屋の近くにいるあれってパワードスーツじゃない? しかも、2メートルはある。飛行装置がタイプ。きっとさっきのだよ」

 ミソラも同じく望遠でそのパワードスーツを見るとちょうどこちら側へと振り返った。

 その目は赤く光っていた。

「あの目……あいつなの……? 私の町を襲ったのは……」

 ミソラは動揺していた。

 かつて町を襲った存在に酷似している相手がすぐそこにいたのだ。

 少しするとミライがステラに通信を入れた。

「ステラ聞こえてる? ミソラのドレスがサポートとリンクされてないんだけど」

「ミライ、ちょっとまずいかもしれない。戦闘サポートできる状態にしてて」

「えっ? どういうこと」

 ステラは一旦ミライの通信を切りミソラに近づいた。

 呼吸が荒くなり手に力が入ってる事がうかがえる。

「ミソラ、だめだよ。気持ちはわかるけどいまここで手を出したら二度目はないかもしれない。警戒されたら終わりだよ」

「……大丈夫」

 そういうとミソラは少しずつ冷静さを取り戻していった。

 しかし、まだ様子はおかしい。

「ミソラ?」

「大丈夫、逃がす前にやっちゃえばいいから」

 スラスターが音を鳴らす。

 速度を上げて攻め込むつもりだ。

「ナイフしかないのにどうするの」

「これは私のプライドの問題だ。友達をあんなやつに奪われて、学校で一年のトップになってドレスも手に入った。ここで逃がすなんて私にはできない。いまこそやるときなんだ」

 ステラにはミソラを止める言葉が思いつかず黙ってしまった。

 ミソラはスラスターの出力を上げてふもとへと飛んで行った。

「ミライ、戦闘に入る。サポートをお願い」

 まだわからないこごとだらけのミライだったがステラの声色で状況を察した。

「わかった。サポートを開始するよ」

 ステラの目的はミソラを止めてすぐに学校へ帰還すること。

 そのために一時的に交戦し隙を伺うことだ。

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