第39話 雨上がり

 激しい戦闘が続く中、雨粒が落ちてきた。

「雨……」

 ステラが呟くとアキラから通信が入った。

「どうやら今から天候が悪くなるらしい。もし激しくなっても決着が付かなければ止めに入らなくちゃいけない。準備しといて」

「はいっ」

 雨の中での戦いはまだ実践を行った一年はいない。シミュレーションでみんなこなしてはいるが本物とは感覚は異なる。


 二人も雨に気づき一度動きを止めた。

「ミチ、私たち一年が下剋上戦するときのルールには雨天以外というものがある。ようはこのまま雨が降れば決着はつかないってことだ。言いたいことはわかるな?」

「そろそろ決めようってことでしょ。いいよ、やってやる!」

 ミチは左手にナイフを逆手持ちしマシンガンを右手に持った。

 マシンガンを放ちけん制していく、乱れ撃ちのため弾はすぐになくなりリロードを頻繁に行わなければならない。しかし、これだけ乱れ撃ちされるとライカも簡単には近づくことはできない。

 攻撃において相手の意思が見えないというのは時に強烈な武器になる。

 ライカの場合はそれが見事に当てはまった。

 体に狙うならその弾を弾けばいい、顔を狙うならその弾を弾けばいい。

 最小限の動きで避けたっていい。

 でも、意思がなく乱れ舞う弾には法則がない。

 シールドを展開しながら突っ込むことも考えたがそれを誘う戦法の可能性もある。そうなればミチの思うがままになってしまう。

 そして、ミチはそれを誘っていた。

 ミチは理解しいてた。今の自分では決定的な攻撃をライカにあてることはできないと。だからこそ相手が来ることを待っていた。あくまで自分からは攻めない。それはライカのフィールドに自ら突っ込むことだからだ。決着をつけたいという気持ちはああるがミチはあくまで冷静だった。

 

 小雨が降り始めベーシックスカイドレスは自動的にレインモードへ変更。

 アイシールドに付着する水滴を完全に除去しながら視界をクリアに保つことができる。

 この一瞬、ベーシックスカイドレスの機能が一時的にレインモードへと移行しようとした瞬間、ライカは全操作をマニュアルに切り替えていたためにこのシステム遅延が発生せず一気にスラスター出力を上げてミチへと近づいた。

「ストレートに突っ込んでくるなんてただの的だよ!」

 ミチがマシンガンの狙いを定めようとするがレインモードへの移行のため遅延が発生しロックオン機能が一時的に使用できなかった。

「ならマニュアルで!」

 狙いを定めトリガーを引く。

 ライカはエナジーシールドで受けつつもソードで突きをお見舞いした。

 この行動を待っていたミチはソードの範囲のギリギリ外で避けようとしたがソードはまるで伸びるように近づき顔の横を通り過ぎスラスターを傷つけた。

「ワイヤーで攻撃範囲を伸ばしたのさ」

 手首の下あたりからソードの手元にワイヤーがつけらており伸縮を自由に行える。さらにワイヤーを緩めたかたくすることもできるため突きの勢いを残したままワイヤーを伸ばし攻撃を可能とした。

 さらに、緩めながら巻き取る際に小さなが力を加えることでさらにスラスターと装甲を傷つけながら手元へと戻っていった。

「この一瞬で一気にやられた……。でも!!」

 巻き取った瞬間を狙いライカへ近づきながらマシンガンを向けた。

「この距離ならシールドを張るしかないでしょ!」

 シールドを張り弾を受ければエネルギー切れを起こす。

 それで決着がつく。

 はずだった……。

「弾が出ない!?」

「撃ちすぎだよ!」

 そのすきに手元に戻ったソードでマシンガンを切り落とす。

 ミチはすぐにナイフを構えるがこの時点でミチは精神的にライカに負けていた。

 なぜならば、この近距離ならナイフで即座に攻撃をしたほうが勝機が高い。それに加え雨でいつ終わるかわからない状況。攻めの姿勢を見せられなかったミチはこの時点で敗北が決まっていた。

 ナイフは足で簡単に落とされ、首もとにソードを突き付けられた。

 その瞬間、空が光り怒号を鳴らす。

「そこまで! 武器を全部落とされたミチの負けだ」

「……はい」

 ミチに下剋上戦は最後の最後でライカに打ち負かされた。


 下剋上戦を終えシャワーを浴び終わったライカの元へステラがやってきた。

「どうだった?」

「なにがだ」

「ミチの実力だよ」

「認めたくはないがあれはかなり才能があるな。経験と基礎的な能力を上げれば化けるぞ」

 ステラはその言葉にご満悦な様子だった。

「なんだ、私が褒めるのがおかしいか?」

「いや、ライカは口調は荒いけど審美眼がしっかりしてるはわかってるよ。私が笑ったのはミチの実力を発揮させ自信をつけさせるために少しだけ手を抜いたの見てたからだよ」

 ライカは図星だった。

 そもそも戦いの始まりはライカがふっかけたいちゃもんからだ。その時点でステラはミチに何かを感じていると理解していた。なぜならライカは強い奴に対して高圧的な態度をとるからだ。

 弱いものは守り強いものは歯向かう。それがライカのスタイル。

 ステラやミソラたちのように認めたものになるとようやく心をしっかり開くのだ。

「ステラにはお見通しか。――ステラ、あんたはどこへ行きたいんだ?」

「ものすごく抽象的だね。目的ってことかな」

「まぁ、そんな感じだ」

「そんなの決まってるよ。どこまで続く空の果てまで行く。それにみんなに空の凄さや希望を伝えたい」

「子どもみたいこと言うな」

「子どもも大人も想いは同じだよ」

 ステラはどんなふうに言われようと自身の信念を貫く。

 誰よりも強い信念。

 ゆえに無敗なのだ。

「ミチのことだが、落ち込んでたか?」

「思ったよりも大丈夫だったよ。ライカにあそこまで戦えたことが自信につながったみたい。まんまと思い通りなったね」

「悪い言い方をするんじゃないよ。……私、あいつを特別推薦してやりたい。協力してくれるか?」

「断る理由はないよ」

「……さっきから思ったが友人が負けて、特別推薦してやろうってのに意外と冷めてるんだな」

「信頼してらからね。きっと自分の力でも這い上がれるし私たちが引っ張てもいいかなって」

「信頼ねぇ~。信頼しすぎて騙されんなよ」

「気を付けるよ」

 その後、第一航空隊のトップと第二航空隊の生徒、それにマチルダなどの教師陣の推薦により第一航空隊に特別枠で36人目としてミチが加わった。

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