第38話 真似ること学ぶこと

 始まってもライカはソードを肩に担ぎ余裕な表情でミチを待っている。

「冷静に。自分のペースを乱されるな」

 ミチはマシンガンを構える、

 ライカに接近しながら売った。

「距離を詰めながら射撃とはクルミあたりがしそうな手だな!」

「さんざんみたからね!」

 ライカは容易く避けるがミチもその動きを予測して移動先に撃っていた。

「やるじゃんか」

 ソードで銃撃を弾き急速接近。

 ミチはマシンガンを直しつつナイフを取り出す素振りを見せた。

(私に格闘戦を挑むつもり? いいねぇ。その気構え最高じゃん!)

 ライカは意気揚々と射程にいれたミチを狙うが、ミチはソードが当たる範囲のギリギリ外に飛び出し即座にマシンガンへ切り替え連射した。

「うぉ!? 粋な真似しやがる! まんまと誘われたってわけかよ!」

 回避しつつも間に合わない弾丸をエナジーシールドで防ぎつつさらに接近しソードで攻撃を仕掛けてきた。

「それを狙ってたよ!」

 退きたくなるこの場面。

 しかし、ミチは退くどころかスラスター出力を上げ突撃してきた。

 リリーカのような特攻は見事に成功。

「なにっ! ――くそっ、気圧された!」

 ミチのナイフがライカへヒット。

 エナジーシールドによりガードされるがエネルギーは着実に減らしている。

 もう少し削れば機動力を落とすことも出来る。

「想像以上だ。だが、一度見たら次は決まんないぞ」

 スラスター出力をあげ高速戦闘をしかけてきた。

 ライカの得意とする戦闘方法の一つである。

 急速接近したライカの猛攻は激しく一瞬の隙も無いほどに攻め立てる。

 同じ長さのソードならまだしもミチが使うのはナイフ。三倍以上の長さのあるソード相手ではこの高速の格闘戦は避けるので手一杯。もちろんマシンガンを出すタイミングなどない。

 下剋上戦においてのポイントとして同じドレスゆえに一度相手のペースに入ると抜受けだすことが難しいという点がある。

「くっ……。速いのに正確で力強い。完全にペースをつかまれた」

「さぁ、反撃してこい!」

 ライカのエネルギーは余裕とは言わずともまだある程度残量はある。

 ミチが反撃に出たならばそれをシールドで受け止めカウンターで仕留めるのが目的。


 その様子をステラはじーっと眺めていた。

 はたから見ればミチは完全に押されている。ライカ自身も今は自分が優勢であることを確信しいているはずだ。ギリギリで攻撃を交わすミチに余裕はなく、反撃に出なければ後がないという状況に追い込まれている思っているはず。むしろ、自身でその状況を作り出していると考えているだろう。

 しかし、それは違った。

「私の言った意味、理解してるみたいだね」

 ミチはあえてライカにペースを握らせていたのだ。

 そして、これはミチの真骨頂でもある戦い方。

「もし、確信している出来事が無残に崩れ去った時、人はどうなると思う?」

「こんな時に問いかけることかよ! 自分のことを考えな!」

「答えはこれだ!」

 突きの瞬間を狙い一気に接近。刃を返すまえに手首の装甲を傷つけつつさらにたいあたり。原始的だが空中戦において一時的にでもバランスが崩れてしまえばそれを修正するためにバランサーに機能を取られ本人も体制を維持しようとする。無意識に。

「実は早打ちもできるんだよねっ!」

 マシンガンを腰から即座に取り狙いを定めずに連射。さすがにあまり命中しなかったがわずかにダメージを入れることに成功。何より意表を二度も突いたという精神的な優位性を獲得している。精神的な状態でいえばすでにミチはライカよりも上にいる。

「また誘われたっ!? なんだこいつ、いちいちスタイルが変わりやがる。このフェイントはまるでヤマネみたいじゃねーか。――待てよ、ステラの言ってたことはこういうことなのか」

 ステラは言葉の意味、それはミチの圧倒的なトレース能力による第一航空隊トップたちの戦闘スタイルを真似しているということだ。

「クルミにリリーカにヤマネか……。こうみるとトップ連中はみんな癖があるやつばかりだ。ウララやミソラはないのか?」

「ミソラはデータが少ないのとウララは案外癖がない。特攻気味ではあるけど大地学校との模擬戦以降かなり変わってる。だからまだ真似するには早い」

「いやいや、確かに見事なもんだ。……でもなぁ。所詮は真似事。私のトレースができなかったのはなんでだ?」

 ミチは痛いところを突かれた。

 なぜミチがライカを真似できなかったか、動きを把握できなかったか。

 それは卓越した格闘戦技術だ。

 真似をするときに重要なのは癖や得意な戦法を理解すること。

 ヤマネはフェイント、クルミはスナイプ、リリーカは特攻。

 そもそも射撃に自信があったミチはクルミのような長距離射撃はまだまだだがそれでも中距離ならば高精度で当てられる。

 リリーカの特攻は意識さえすれば相手の動きの隙。ソードなら大振りや引く動作、銃ならリロードのタイミングに合わせればいい。

 フェイントも相手に勘違いをさせる動きの簡略化が成功すれば決まる。

 しかし、ライカは違った。

 数々の戦いでほとんど近接武器で戦ってきたライカには一年ながらも二、三年も驚くほどの格闘戦技術を会得している。

 ゆえに真似できなかった。

 子どもが大人の真似をしても失敗するのと同じで、ミチの格闘戦技術ではライカを真似しても付け焼刃にすらならなかった。

「私がソードしか持たないことをミチは舐めてると言ってたな。それは違うぞ。私は考えるのがあまり得意じゃないから、武器を一択にして迷いを捨ててる。私がソードしか持たないという時は本気で戦う意思があるときだ」

「なぜ私にそこまで……」

「あんたは第二のトップでくすぶってるような人間じゃだめだ。早いとこ第一に上がってより高みに行く存在。私はそう思っている。だが、あんたは優しさと臆病から第一に対して下剋上戦を挑まなかった。だから、ちょっかいを出した」

「ライカ……。そんな風に思ってくれてたのに少しでも嫌な奴って思った自分が悲しいな」

「勘違いすんな。別に私はいい奴じゃない。なんなら今からあんたをどれだけ無様に倒そうか考えているとこだ」

 ステラはそんな強気な発言をするライカに対して小さく笑いつぶやいた。

「ライカは素直じゃないな」

 

 ライカの熱い思いとステラが見つけてくれた才能を無駄にしたくはない。

 ミチの表情は自身にあふれていた。

「すぐに仕留めるよ!」

「こっからは生ぬるくないぞ!」

 二人の高速戦闘が始まった。

「真似事で私に勝てると思うなよ!!」

「真似て学んでるんだ! 自分自身の力だけでは到達できない場所みんなが連れて行ってくれる。そして、これをうまく組み合わせればそれはオリジナルになる!!!」

 純粋な格闘戦では圧されていたミチだったが、真似した力を応用しさらにテクニカルな戦法をとる。

 徐々に真似が卓越していきオリジナルへと変化していく。

 バトルいよいよ終盤を迎える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る