第36話 再び空へ

 ステラはベーシックスカイドレスを着たリリーカとミチによる二対一の模擬戦を行うことになった。

 ダミーナイフの接触判定、センサータイプのロングレンジハンドガンより着弾判定が出た時点で負けという扱いになる。

「あまり高度は上げずに戦って上げる!」

「いいましたわね! 私もただ休んでいたわけではないということを見せて上げますわ!」 

「私は結構がっつり休んでたけどアシストするよ!」

 突撃するリリーカの後ろからハンドガンでアシストするミチ。射線上にリリーカがいるのにも関わらずミチは躊躇なく撃つ。

 実弾ではないという安心感もあるが狙いは正確でクルミに匹敵する。

 下ではウララがミチのセンスに驚いていた。

「リリーカの突撃でハンドガンを視認しにくくしながらも回避先に撃つことでリリーカとの接触を回避できないようにしてるね。中々やるじゃん」

「ロングレンジとはいえハンドガンであそこまで狙えるならもうちょい私が仕込んだらウララを倒すいいスナイパーになるかもね」

「うっさい! もぉー! 次は絶対に勝つから!」

 そんな二人を他所に空ではステラが華麗にリリーカの攻撃を回避し踏み台にしてミチのほうへと飛んでった。

「こ、こっちくるの!?」

「射撃がうまいのは残しておくときついからね!」

 ステラは警戒はしていたがこの一撃でミチを落とせるだろうと考えていた。

 しかし。

「なぜリリーカが突撃したのか? なぜ射撃を私に任せたのか? それは、お互いの弱点を補うためだよ!!」

 ミチは腰の後ろに隠してたハンドガンを取り出した。

「えっ、一人一丁のはず……まさか!」

 リリーカのどこにもハンドガンは装備されていなかった。ミチはリリーカからハンドガンを預かり隠し持っていた。

「そうか。射線上にかぶっている時に渡したんだ」

「正解! 二丁で連射スピードは約二倍!」

 突っ込んできたステラに対してハンドガンを撃った。ステラは上へ回避しするとリリーカが動きを予測しており急速接近。

「ぶちこみますわよ!!」

「予測されてる!? だったらっ!」

 攻める側というのは気持ちに若干の余裕がある。予測通りに相手が動けば尚更。特にこの戦いでは一撃当てれば落とした判定になる。より余裕が出てしまうものだ。

 ゆえに、普段なら対応できるでも判断を鈍らせる。

「守るより攻めろだ!!」

 ステラは守る側が攻める側より精神的に苦しい立場であることを感覚で理解していた。

「くっ……! ステラさんならそうすると容易に想像出来たはずなのに、動きがワンテンポ遅れて――」

「取ったっ!!」

 リリーカの装甲にステラのナイフが接触した。

 二人の違いは技量もあるが、精神的にステラのほうが上にたっていた。

 たくさんの戦闘経験と死線を乗り越えたステラと成長速度の早く経験を吸収しやすいリリーカでは、死線を乗り越えた分ステラのほうがここぞという場面で底力を見せる。

「でも、相手はもう一人いますわよ」

 リリーカは自身のナイフをミチへと投げた。

「この距離から投げたところで――」

「ここにいるよ!」

「えっ!?」

 ナイフを下のミチへ投げても届くまでに時間があるとステラは思っていた。しかし、ミチはすでにナイフをキャッチしステラの後ろに回っていた。

 リリーカは自身がステラに一撃を与えられないということをわかっていた。だからこそ、ミチにナイフを託した。

 そして、ミチもまたステラを倒すのに正面からではだめだとわかっていた。リリーカがもしもだめだったときに停止状態のステラを一撃加えられるように急接近した。

「ブルースカイじゃなきゃ負けてたよ」

 ステラは呟いた。

 勝利への確信。

 ステラはブルースカイの真骨頂であるSoraシステムを発動した。

「速いッ!?」

 通常のエネルギーと太陽エネルギー同時に使用することで加速力はベーシックスカイドレスとは比べ物にならないほどにあがる。

 そして、空中戦闘での一対一においてスピードが相手を圧倒的に凌駕しているということは、勝利したも同然。

 ステラはターンを決め即座にミチの背後を取りナイフを当てた。

 ブルースカイの初模擬戦。

 完璧な勝利を納めた。


 地上へ戻りステラはみんなに言った。

「お帰りなさい」

 すると、ミチはステラのでこをコツンと叩き言った。

「それはこっちの台詞だよ。ずーっと寝てて心配したんだからね。だから、私にも言わせて。ステラ、おかえりなさい」

 みんなはステラのことを本気で心配していた。同じ一年として仲間としてライバルとしてパートナーとして。

 ステラは心のそこから感謝の気持ちを込めて言う。

「みんな、ただいま!」

 マスター科一年第一航空隊ステラ。

 再び、空へ飛ぶ。

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