第33話 Soraシステム

 ブルースカイの開発計画夏期休暇の役一ヶ月で行われる。ステラは計画書を眺めつつ日課になりつつある食堂でオムライスを食べていると食堂のおばちゃんは弁当を運び食堂を出ようとしていた。

「どこに運ぶんですか?」

「メカニック科の女の子だよ。えーっと、確かカコって子だね」

「カコ!?」

 メカニック科第一整備隊カコ。

 思い返せばミチの送ってくれたビデオにはカコの姿はなかった。

 どうやら夏期休暇は家へ帰らず部屋で延々と開発をしているという。


 おばちゃんに弁当をもらいステラが届けることにした。

 部屋の前の行くと自動で扉が開いた。

「鍵かけてないんだ。不用心だなぁ」

 部屋は服で散らかっており着替えてはいるが洗濯には出してないことが伺える。

 奥の個人用整備室に入ると疲れはてて寝ているカコの姿があった。

「カ、カコ大丈夫!?」

「……え、あー寝てたのか。おばちゃん、弁当その辺に――」

 カコは体を起こし眠気眼を擦りながらステラの方を見た。

「ってステラ!? えっ! だ、大丈夫なの!?」

「それはこっちの台詞だよ。こんなところで寝てたら体に悪いよ」

「つい集中しちゃってね」

 すると、カコの腹の虫が鳴き始めた。

「まずはお弁当食べたら?」

「そうだねっ」

 余程お腹が空いていたのかそこそこ量のある弁当をものの数分で平らげてしまった。

「食べた食べた~」

「気持ちいいくらいの食べっぷりだね。で、何作ってたの?」

「自然界のエネルギーをスカイドレスの予備エネルギーとして利用するシステムの開発をね。例えば雷を避雷針のように浴びることでそれをスカイドレスのエネルギーに変換するの」

「変換……。それって雷じゃなくてもいいんだよね?」

「うん。吸収する装置さえあればなんでも行けるよ」

「私のやりたいことできちゃったかも!!」


 ステラは早速それをブルースカイ計画のメカニックに連絡した。

「――どうでしょうかイノさん」

「う~ん。スラスターになら変換できるかもしれない。スラスターで吸収して変換したのちスラスターから出すの。だから少し大きめのスラスターになるけどいいかな?」

「はいっ!」

「おっけー。じゃあ、また何かあったら教えて。開発状況はそっちのデバイスでみれるようにしといたから」

「ありがとうございます!」

 メカニックへの要望。

 それは、ステラが考案した新システムを前提としたブルースカイの開発だった。

「自分だけのドレスに自分だけのシステムか。まったくステラには驚かされるね。しかも、システムの考案も開発も自分でやるんだもんね」

「どうせならやってみたいなって。それに自分で作れば技術提供の必要がなくなるから」

 ステラはあくまで空を自由に飛ぶスカイドレスを作りたかった。その技術はカコが目を見張るほど。

 ステラのシステムは太陽エネルギーを利用してスカイドレスに約一機分の予備エネルギーを溜めるもの。

 しかし、溜めるまでの間はスラスターが吸収と放出を同時に行うために本来の性能を発揮できない。

 そのかわり、予備エネルギーを全て溜めることでいつでも利用することができる。単純に二機分のエネルギーを使い飛行時間を伸ばしたり、二機分のエネルギーを同時に利用することで高速飛行も可能となる。

「で、なんて名前をつけるの?」

「決まってるよ。Soraシステム。空こそが私にとっての勝利の鍵であり何の柵もなしに羽ばたける場所。だから、Soraシステム」

 

 ブルースカイの開発が進む中、着実にSoraシステムの開発も進んでいた。カコの手を借りつつも根本的な部分においてはトライ&エラーを繰り返しつつもステラが作り上げていった。

 ベーシックスカイドレスに試作段階の吸収板と予備エネルギータンクを後付けしてシステムの動作チェックを行った。

「Soraシステムスタンバイ」

 女性の音声でSoraシステムは待機モードに入った。

 ベーシックスカイドレスのVⅠ型スラスターでは正確なチェックは難しいが、それでもSoraシステムを利用することで想定されている航続距離を更新し加速力も大幅に高まった。

「技術提供したくないって言ってたけどブルースカイの開発は空軍のメカニックがやってるんでしょ? その辺はどうなの」

「ブルースカイは私のSoraシステムがを組み込むことを前提の設計だから大丈夫。それに、何を吸収するかってのを詳しいこと伝えてないの。理論上太陽エネルギーを吸収できるパーツを組み込んでもらってるけど相手には熱エネルギーと伝えてる」

「案外策士だねぇ。えっ、でも私は知っちゃってるけどいいの?」

「カコはいいの。友達だから」

「嬉しいねぇ」

 Soraシステムのほぼ完成していた。

 あとはブルースカイの完成を待つだけ。

 ステラが自分だけのスカイドレスで空を飛ぶのもあと少しだ。

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