夏期休暇

第32話 ブルースカイ

 たった一人の1年校舎。

 次の日もステラは一人でオムライスを食べていた。

 すると、黒く長い髪をなびかせ凛とした女性が食堂にはいってきた。ステラの姿を見つけると、ヒールの音を鳴らしながら近づいてきた。

「ここ、座ってもいい?」

 ステラの前の椅子を指差していった。

 なんだかよくわからないステラはオムライスを口に含んでいたのでとりあえず首を縦に二回振った。

「君がステラだね」

「は、はい」

「私は校長のニエーバだ」

「こ、校長先生!?」

 ステラは即座に立ち上がるがまだ筋肉の回復が追い付いてなかったために前日同様また倒れかけてしまいニエーバに支えられた。

「無理をするな。座ってなさい」

「す、すみません……」

 ニエーバはステラの雰囲気を見て懐疑的だった。こんな少女が入学して4ヶ月でスカイドレスの扱いをトップレベルで習得していき、自身の命を懸けてまで都市を救おうとした人間には見えなかったのだ。

「君の活躍は聞いている。学校も都市も君のおかげで守られた。本当にありがとう」

「い、いえ。できることをしただけですから」

「謙虚な子だな。今回の活躍を見込んで君にはいくつか頼みたいことと、その功績称えてしてあげたいことがある」

「なんでしょう?」

「まずはリカの今後について君の意見を聞かせてほしい。彼女が行動を起こすきっかけは我々学校サイドにもある。ミケルマンほど屈折していない彼女を通常通りテロ容疑で処理するのは少し引っ掛かるものがあってだな。参考程度に君の意見も聞かせてほしい」

 リカがなぜ今回の事件を起こしたかミライのレポートで確認はしていた。

 やっちゃいけないことをした人間を情で許してしまえばルールや法ないも同然。しかし、殺意のない訴えに対してそう簡単に罰を与えて処分して片付けていいものかとステラは疑問だった。

 ミケルマンもキッカケは理解できるが最終的には力に溺れた。その結果として口封じで殺されるというのはある意味自業自得。

 だが、リカはどうだ。

 姉が事故死、父は暗殺。母すでにいない。

 彼女には希望がなかった。

 例え処分が済んで普通の日常に戻れたとして彼女に何が待っているのか。何に頼り生きていけばいいのか?

 人は言うだろう。

 生きていれば出会いがありいずれ希望は見えると。

 だが、愛した肉親が死んだというのにそんな言葉をかけるのは無責任だ。

 ステラはリカに希望を与えたい。

 罪を償い生きる理由を作ってあげたかった。

「……その、私はリカを学校に戻してもいいと思うんです」

「あれだけのことをしたのにか?」

「父親の行動とリカの行動は分けるべきです。肉親だからと言って二人が同じことをしたいとは思わないでしょう。少なくとも二人の場合は見ている方向が違った。目指す目的が違ったと思うんです」

「では、なにも処分はくださないと?」

「いえ、罪は償わなければなりません。本人が納得するかわかりませんが、リカの才能を人々の安全や技術向上に力を貸すというのはどうでしょう? たった一人であそこまでやってのけた不屈の精神と才能はおそらく今後現れるかどうか」

「ほう。確かに改竄前の記録を見返すと実技では意図的に目立たないようにしていたしほかの技術は目を見張るものがあった」

「何にしてもただ処分するのはあの子のためにも学校にとっても不利益だと思います」

「いいだろう。君の意見を参考にする」

 ニエーバは軽くメモをして次の話に移った。

「次に頼みたいことは君には調査部隊に入ってほしい」

 調査部隊とは学校と軍の者たちがフロントでの治安や自然環境の調査、さらには空島への接触。オーロラベールの調査といったことする部隊である。

「それ際して君だけのオリジナルのドレスを早めに作りたい。すでに話しは聞いているだろう。本来ならばもっと時間をかけるが私としてはこの夏期休暇中に作り上げて君に渡したい。どうだろう?」

「い、いいんですか!?」

「調査をするなら専用があった方がいい。何時間も乗るからな」

「わ、私自分のドレスで飛ぶのが夢だったんです! まさかこんなに早く叶うなんてとっても嬉しいです!」

 興奮気味に早口で言ってしまったことに気づいてしまいステラは恥ずかしそうに静かになった。

「君のそういうまっすぐなところを気に入っている。だからこそ君には早くドレス託したかった。計画は明日から始める。いいかな?」

「はい!」


 次の日のことである。

 ミーティングルームでステラのスカイドレスを作る計画を行っていた。

 いつぞやの白い軍服の女性はモニターに写し出された情報をまとめる。

「では、ステラのワンオフ機の特徴は飛行時間と高度、エネルギー効率とする。カラーは青、調査部隊の一員ということで夜間や霧での飛行を想定しアイシールドやセンサー機能も念入りに調整していく。で、名前は何にする?」

「あっ、これって自分で決めていいんですかる?」

「あたりまえだ。ファイターと違って量産じゃないからな」

「なら……ブルースカイ。ブルースカイがいいです!」

「青空か。ステラらしい。では、ステラのブルースカイ開発計画を本日から開始する!」

 ブルースカイ。

 それが、ステラのドレスだ。

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