第28話 誰よりも高い空へ

 都市はタワーの頂点にあるキューブから放たれる小さなキューブの大群により各地で小規模の爆発が起きていた。

 武装したスカイドレスでマスターたちが応戦している。

「ルナ! そっちに防衛戦を! サポート科の力が借りれないからってみんな根を上げなあでね! 受信範囲を狭くして妨害を抑えて!」

 ソレイユやルナたちもつき次と現れるキューブに対応している。

 スカイファイターも到着し上空のキューブを破壊していく。

「通信が出来ないと厳しいな……。俺らは複座からのサポートがあるからいいがマスターは大丈夫なのか?」

「彼女たちもサポートがないときの戦略は作ってるはずだよ」

「それもそうだな。俺らは少しでも下への被害が少なくなるようにやらなきゃだ」

「――ねぇ、ラニ! あれってステラちゃんじゃない?」

 スカイタワーへと向かう青い髪の少女が一人。

「なんであんなとこに? しかも、スカイタワーに向かってんのか。それにあのドレスって」

「スターライトだよ!」

「一緒じゃないか……」

「ラニ! 前からキューブが来てる!」

「チッ、余所見してる場合じゃない! ステラのあの表情、きっと何かを確信している。キューブがステラに行かないよう援護しながら都市を防衛する!」


 キューブは対象に近づいてから爆発までに時間差がある。その爆発規模は小規模なものだが人間程度なら殺すのは簡単。

 大きなキューブが爆発するまで無限にキューブを発する。ミケルマンは5分程度と言っていたがそれが本当かなどステラに知る術はない。

 だが、やることは一つ。

 都市に被害が出ない場所までキューブを運ぶことだ。

「いっぱい来た……。でも、やるしかない!」

 向かってきた大量のキューブをビームで次々と破壊していく。近づくキューブはビームソードで切る。

 なるべく近づかせず地上へも向かわせない。

 しかし、エネルギーは有限だ。まだエネルギーがなくなる心配はないがこのままずっと続けていれば時間も足りないしキューブを運ぶエネルギーがなくなりかねない。

 その時、スカイファイターチームがステラに近づくキューブを次々と破壊していく。

 コックピットにはラニの姿があった。

「ラニさん!」

 ラニはスカイタワーを指差した。

「私に行けっていうの? ……わかりました! あとはまかせます!」

 マスターとパイロットが協力し次々とキューブを対処していくため被害は最小限に抑えられているが、本体がスカイタワーにあるかぎりは無限に現れる。 

 ステラが間に合わなければ全てがなくなってしまう。


 地上では都市の端のほうにまでキューブが現れ始めていた。

 まだマスターが間に合っておらずこのままでは死傷者が大量に発生する。その時だった。

「みなさん退いてください! うちの人間武器がどうにかします! ユリカやっちゃえ!」

「フルバーストォ!!!」

 大量のキューブは破壊され怪我人を出さずに人々を守ることに成功した。

 ララァたちが都市までやってきていたのだ。

「みんな、ここからは通信が使えない。地上は人で溢れ返ってるから高速戦闘も難しい。人の命が守れるなら建物を盾にしたっていいから、全力で倒して全力で生きて返るよ!」

「了解!!」

 全員別方向へと進み各地で救助と防衛に当たった。


「校長! 都市でリバースの兵器が猛威を振るっています! このままでは危険です!」

 マチルダが校長室で声をあらげた。

 女校長のニエーバは表情を変えずに漆黒の瞳をマチルダに向けていた言った。

「緊急防衛プロトコルを発令する。すべてのスカイドレスとスカイファイターを虹色鉱石を用い学校と軍に戻し、バリアを張り爆発を防ぐ」

「それでは都市はどうなるんですか!」

「リバースの兵器が起動している。まだこれだけの被害ですんでいるのは所有者の意思で操作が出来ないからだ。ならば残された時間を使い未来へ残すべきものを選定せねば並んだろう」

「……わ、わかりました」

 マチルダは不服そうな表情を浮かべたがニエーバに指示にしたがい校長室を出た。

 ニエーバは黒く長い髪の毛先をくるりといじり自身の選択が正解か否かを心の中で問いかけた。


「数が多すぎる……!」

 スカイタワーに向かうステラだがキューブの数は上に行けば行くほど増えていく。

 それもそのはずだ。上で生成して地上へと降りてくる。下ではバラバラになって人々を襲うが近づけば近づくほど大量のキューブはステラだけを狙いやってくる。

「ラニさんにも協力してもらってるのにこんなんじゃ不甲斐なさすぎる……」

 しかし、運はまだステラを見離してはいなかった。決死の覚悟で立ち向かうステラを援護するスカイドレスが現れた。

「ステラちゃん助けに来たよ!」

 現れたのは七星防衛学校のノア。

 それにソレイユを除いた三年から六年のエースがステラを援護するために集まっていた。

「事情は知らないけど君のこと気になるから応援しちゃうよ! 僕らにまかせてやっちゃいなっ!」

「ありがとうございます!!」

 スカイタワーのてっぺんまであともう少し、集中力を高め最小限の動きでキューブを交わし上へと進む。

 一番上まで到着すると大きなキューブの回りには小さなキューブが円描くよう守っていた。

「あれじゃあ近づけない……。このまま破壊するか? いや、それじゃあ意味がない。せっかくここまで来たのに……」

「諦めるにはまだ早いよ!」

「えっ?」

 突如、空から現れたのは三機の黒いスカイドレス。一人はガイアドレスとの戦いで助けてくれた人だ。

「私たちは軌道エレベーター防衛チームスター・ロード。君が進むべき道を切り開くよ!」

 三機のスカイドレスはキューブを破壊しステラのアシストをした。

「で、どうするの? 君の作戦を聞かせてよ」

「簡単なことです。都市からあのキューブを離して爆発させればいい。――だったら!!」

 ステラはスラスター出力を全開まで高めてキューブへと突っ込んだ。

「まさか!」

「キューブをさらに高く!!」

「無茶だ! 例え都市に被害はなくても君は爆発から逃げられない!」

 すでにステラに声は届いていなかった。

「エトワール! スターライトの高度限界はとこまでなの! あんたが詳しいでしょ!」

「……13000メートル。でも、そこまで全速力で上がったなら逃げるだけのエネルギーは……」

「だったらなんで止めないの!? ステラはあんたの――」

 

 キューブを空高く運んだことで地上のキューブたちはいなくなった。

 空を見上げるとそこにはキューブを持ったステラの姿。誰もが理解した。あの青い髪の少女がたった一人で何かをしようとしていると。


 ――かなりの高度まで上がったところでステラは背筋を這いよる寂しさと恐怖に苛まれていた。

 覚悟を決めてここまで来たのに、覚悟を決めて空へ飛んだのに、大好きな空にいるのに、体を支配しようとしているのは悲しく辛い感情ばかり。

「死にたくない……」

 たった一言、絞り出すような声でそれだけを呟いた。

 空の色が透き通った青色から深みのある濃い青色へと変化したときに周りを見ると、広がる光景はステラがまだ見たことのない空だった。

「すごい……!」

 水平線が丸みを帯び、自分達のいる星が丸いことがわかる。

 空と宇宙の狭間だ。

「いま、私は誰よりも高い場所にいる……。ここは……ここは、死に場所じゃない!!!」

 残り時間はもうわずか。

 ステラはキューブを蹴り上げ、残り少ないエネルギーを使い全速力で爆破の範囲から逃げた。

 エネルギーの残量と進めると想定される距離と爆発の想定範囲を計算するとスターライトでは逃げることも防御することも間に合わないと答えが出る。

 それでも、大好きな憧れの空にいるのなら、最後まで希望を捨てずに全力を尽くすことに決めた。

 悪あがきかも知れない。

 無駄なことかもしれない。

 でも、ステラは空に希望を託した。

 

 キューブは、程なくして爆発した。

 空間を捻るように収束し限界まで小さくなると一気に爆発。

 その爆風は瞬く間に広がる。

「くっ……。間に合わない! ――ごめん、お母さん……」

 諦めかけた最後の瞬間。

 一機のスカイドレスが飛んできた。

「諦めないでステラ!!」

 どこか聞いた声。

 でも、どこで聞いたかはわからない。

 その人物はステラの前で盾となり、エナジーシールドを展開し爆風を防いでいた。

「あなたは以前にも……」

「君を助けるのは二回目だね。ほんと無茶する子だよ」 

 爆風は地上からでも見えるほど広範囲で衝撃は都市全体にわたった。

 

 爆風が収まりシールドを解除すると女性はステラのほうを見た。

 風になびく青色の髪。ブラックアイシールドで目は見えない。

「どう? この景色」

「すっごく綺麗です……。でも、まだ上がある。手の届かない星たちの空がある……。まだこんなとこで止まってちゃ行けませんね」

「君があの星を目指すなら、いずれ私たちの道は交わるはず。ステラ、私はさらに高い空で待ってるから」

「絶対に行きます……!」

 そういうと、ステラは安堵から疲労が一気に体を襲い気を失った。

 すぐにそれを支え一言呟いた。

「血は争えないか……」

 二人の青い髪の少女は空と宇宙の狭間でさらなる空を目指した。

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