第25話 助けを呼ぶ声

 浮上して空から事態を確認すると規則性はなく至るところで騒動が起きている。

「リカこれを……? いや、今はこれを止めないと!」

 スターライトはかつて別の生徒が使用していたスカイドレス。前回使用したのは大地陸行科学高等学校との緊急模擬戦の時だ。

 ワンオフ機は個人に合わせた調整をしてるために本来であればほかの人が着ると違和感が発生しうまく扱えないのだが前回以上にステラの動きに合うように調整が加えられており、ステラは自由に扱えていた。

「なぜかわからないけど前よりも動きやすい。これなら自由に飛べる!」

 全身で空を感じるとステラは覚悟を決めて急降下。

 まだ誰も駆けつけてないところへとむかった。

 遠隔操作状態のベーシックスカイドレスがいくつと暴走している。人が着ていない状態で動くこの状態をコンパクトモードと呼ぶ。

 このコンパクトモードでは基本的に誰かが遠隔操作をしなければ動くことはない。指定した場所に向かわせるのが主な使い方だが、外部から完全な遠隔操作で操り救出活動などもできるがエネルギー効率の悪さから使うものはあまりおらず、特にベーシックスカイドレスはその機能が搭載されていると人も少ない。

「大して強くはないけど、人がいるからやりづらい……」

 スターライトには専用武装がいくつか積まれていたが避難がまったく進んでないために今使えば被害がでてしまう。

 その時、ステラへ通信が入る。

「助けに来たよ!」

 その声の主はオレンジ色の装甲を輝かせ正面からやってきた。

 押し合ってるコンパクトモードのベーシックスカイドレスを高速でぶんどっていき人がいない場所へ叩きつけ無理やり停止させた。

「か、かなりパワフルですね」

「力ならサンシャインの抵抗できるのはそうはいないからね。それよりこの状況ってさっきの爆発となにか関連があるの?」

「まだ詳しいことはわかってないです。でも、少し気になる生徒を見つけたんです。そちらに送りますね」

 ソレイユはアイシールドモニターに写し出されたリカの生徒情報を見て言った。

「この父親のブルトンって爆破武器の製造やシステム製作で有名な人だよ。ちょっとおかしな人で追放されたって聞いてたけど」

「その、娘のリカさんも同じように爆破物作れるんですか?」

「どうだろう。例え作れたとしても学校にいる限りはメカニックか教師以外は材料の注文さえできないし、チェック厳しいからなぁ。もしあしてこの子が?」

 ステラは自信の見解をソレイユに話した。

 爆破の件は置いといて、ベーシックスカイドレスに不調を起こさせた原因として姉の死を理由にあげた。

「試験機テストの事故死……。これ知ってる。私が一年の時だよ。ギャラリーが見ている中のテストだった。メカニックが整備したあとに過敏に反応しすぎるから教師が修正プログラムをいれる予定だったんだけどそれを忘れちゃってて。浮上は成功したけどスラスターやバランサーがあまりにも過敏に動くから振り回されて墜落したの」

 人が死んだということでかなり大事にはなったがそれでも半年たてば話題上がることさえなかった。

「リカって子は第三航空隊から一年以内に第一まで上がってきてるんだね。それにシステムやプログラム作りも成績がいい。優秀なのにあまり名が通ってないのは裏で活動するためなのかな」

「第一整備隊に友達が言ってたんですけど、スカイドレスに仕込まれたプログラムはかなり高度なものらしく、マスターとメカニックの視点がないと今回の騒動は起こしづらいと」

「仕込む時間や誰が何をチェックするか。使われるタイミングや整備のタイミングまで把握した上での行動って訳ね」

 しかし、ステラは一つだけ引っ掛かる点があった。

「でも、爆破と不調はどうも別な気がするんです」

「どうして?」

「これだけ高度なプログラムをわざわざ仕込んで不調を起こしてるのにわざわざ爆破するなんて意味がないと思うんです。だったら最初から爆破すればいいのに回りくどいんです」

「言われてみれば確かにね。二重構造にする必要性はない」

「仮にリカの目的がこの学校の事故を風化させる隠蔽体質に対してのメッセージを事故で伝えてたのなら最初から誰か事故で殺してるはずです。リカにはそこまでの度胸はない。優しい人だけども不器用なんだと思います」

「……わかった。そっちほうで情報を伝えてくる。私の仲間だったら信用できるでしょ。ステラは事が動くまでみんなを守って!」

「わかりました!」

 ソレイユが仲間たちのほうへ向かう間、ステラは様々な場所で救助活動を行った。

 制御が効かなくなったドレスたちは少しずつ上級生の活躍により抑えられたがそれに紛れて爆破がいくつか起きている。

 どちらかがどちらかに乗して事を大きくしてるか、もしくはサマーフェスティバルを両者とも狙ってきたのかステラにはわからなかったが、犯人は二人以上はいると判断していた。


「あれぇ~、すっごいノイズ入るなぁ」

 ミライを都市に送り届けているハルコは通信にノイズが異常入ることに気づいた。

「どうしたんですか?」

「なにか通信が入ってるんだけどノイズだらけで聞こえないの。みんなが一斉に通信してるのかなぁ」

 ミライは何かいやな予感がした。

「ハルコさん! 急ぎでいけますか!」

「いけるよー! ならこうやって抱えないとねっ。飛ばすよー!」

 ミライの体に腕を回しハルコはスラスター出力を一気にあげた。

「ステラ、無茶はしないでね……」


 その頃、1年の航空隊で使用されていたベーシックスカイドレスはすでに制圧されていた。

「ステラが行っちゃったと思ったらすでに先輩たちが来てたのわかってたんだね。本当に抜け目ないよ。2対1だと不利だから先輩に現場を引き継がせるんだから」

 ウララはぐったりと疲れつつもステラの判断力に感服していた。

「もう、私はなにもしない。つかれた……」

 ヤマネは普段あまりしない高速移動を強制にやらされ動きたくない様子。

「二人ともいかないとまた被害受けるよ」

 ミチに引っ張られしぶしぶ動く二人。

 三人とも今回の被害に合っているそれぞれ痣が出来ていた。

「こんなときに何も出来ないなんて……。ステラさん、あなたにまかせますわ」

 

 少しずつドレスの異常が収まり始めたことを上空から確認するステラ。そこにラニがやってきた。

「ステラか?」

「はいっ。あ、ラニさんですね」

「そうだ。この状況は何があった?」

 ラニを信頼できる人間と思いステラは経緯話した。

「――その子を抑えれば全部止まるのか?」

「私としては爆発を起こしている人間は別にいると思ってます。ドレスは抑えられても爆弾の場所が……」

「まだいくつあるかわからないわけか。よし、地上の仲間に連絡して捜索隊を作るように呼び掛ける。ステラもあまり無茶するなよ」

「はい!」

 ラニはスカイファイターで飛んでいき一度学校へと向かった。

 すると、ステラの背後に一機のドレスが現れた。

「あなたは……」

 そこにいたのはリカの姿だった。

「これを起こしたのはもしかして」

「私。私がドレスに異常を起こしたの」

「なんでこんなを」

「姉の死が原因だよ。別にみんなに覚えてほしいなんてわがままじゃない。せめて、一人の生徒が失くなったことを学校がみんなに伝えてほしかった」

 リカの姉が死んだとき、それを見ていたギャラリーだけがそれを知っていた。

 他言無用の事故として処理されその話をすることはタブーであるような雰囲気がその時にはあった。

 今となってはソレイユのように現場にいた生徒がたまに思い出す程度。

「先生のミスで起きた事故なのに、先生はそれを公に発表しなかった。記録としては残っている。だけど、ほとんどの生徒は知らない。お姉ちゃんが操作を間違えて落下した程度にしか思ってない」

「これは、その復讐?」

「復讐……。まぁ、そうかもね。でも、重要なのはそこじゃない。事故が多発して隠蔽が出来なくなり隠す体制がなくなればいいと思った! でも、学校は変わらなかった。まるで無事故でいままやってきたような面構えで今もあの日の事故を置き去りにしている」

「でも、なんで私の前に出てきたの? 私はあなたを捕まえるよ」

「違うんだ。違うんだよ。……私も、操られてるから」

 リカは攻撃するような素振りを一切見せずに腰の銃を抜きステラへはなった。

 あまりの速さにエナジーシールドが無ければやられていたとステラはかなり焦っていた。

「殺したくはないけど、もうどうにも出来ない!」

 リカの表情からドレスを意図して動かしてる訳じゃないことは理解できた。そうなればステラがやることは一つ。

「もう少しだけがんばってください。決して褒められることではないですが。たった一人で戦ってきたあなたの不屈の精神をもう少し燃やしてください。空に来てくれたのなら――絶対に助けます!!」

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る