第22話 爆弾と不調

「なにあれ……。私あんなことしてないのに……」

 都市の人が少ない路地で少女がつぶやいた。

 あれとはドームで起きた爆発のことである。

「今バレたらあれも私のせいにされる……」

 怯え切ったその少女はゴミ箱の横で座り込み体を震わせていた。

「……でも、やるしかないよね。お姉ちゃんのためだから……」

 少女は怯えていたいがその瞳は死んでいなかった。

 不屈の精神がその少女には宿っていた。


 

 無事にベーシックスカイドレスの爆発を処理し屋上においてきた生徒を回収したのちパトフライヤーの披露ステージまでやってきた。

 結局目の前で戦わずに飛んで行ったことを懸念していたステラだったが戻ってきたと同時に拍手喝采。

 警備局局長のイヴはステラを褒めたたえた。

「これが青空航空科学高等学校の生徒の活躍です! しかも彼女は1年です。これだけ優秀な生徒が成長し、いずれは我々警備局へ来ることもあります。皆さんの安全は担保されたも同じ。まだ誰も実践を行っていないパトフライヤーで活躍した第一航空隊ステラに今一度拍手を!」

 わけもわからず拍手を受け指示されるがままに手を振った。

 パトフライヤーを脱いで裏に行くとミライの姿があった。

「ミライ、てっきり怒られるかと思ったけどなんか感謝された」

「私の機転に感謝してね」

 ステラが飛んで行ってしまったときに即座に会場のモニターを利用しレース用に使用するカメラでステラを追ったのだ。

 そのため一部始終がすべて映し出されていた。

「音声はこっちで拾ってないけど通信データは処理した?」

「消す前に一応私のデバイスに送って削除しといた。新型なのにいきなり爆発の話してたらまずいと思って」

「仕事が早くて助かるよ。さぁ、一旦空中散歩に戻ろう。ミソラたちがいまやってるはずだから」

 二人が戻ると何事もないように空中散歩は再開していた。

 ステラがいない分ほかのペアが連続で飛んでいた。

「あ、おかえり。道にでも迷った?」

 ミソラはクーラーのまえで涼みながら言った。

「ごめん、いろいろと巻き込まれちゃって。すぐに交代するよ」

「リリーカならそっちでスタンバってるよ」

 ステラはリリーカにも謝罪してすぐに準備した。

 

 爆発事件は現状一部の生徒にのみ知られた状態でサマーフェスティバルは進んでいった。

 カコは二人が警備局のステージに行った後、第一と第二のベーシックスカイドレスを確認したがステータスに以上はなかった。

 厳重注意ということで第一整備隊の暇そうな生徒を呼んできて周回するごとにステータスチェックとマスターへの動作確認を徹底していた。

 第二通信隊からミチが友人を呼んでおりミライがいない間カバーをして貰っていた。

「何事ですの? ステラさんが遅れてくるなんてめずらしいですわね」

「あまりにも人が多すぎて前に進めなくてさ」

「想像を絶する人の数ですからそれも仕方ありませんわ」


 空中散歩前半部を終わらせ全体休憩に入るとカコとミライがやってきた。

「ねぇ、ステラ。カコに爆発の映像見せてたら不審なことに気づいたっていうの」

「不審なこと?」

「これこれ。爆発がちょっとだけおかしいんだよ」

 カコはタブレットで映像をスローで見せてくる。

 何度か繰り返すうちにステラもその異変に気付いた。

「一度収束してる?」

 ステラが爆発から逃げるためにスラスター出力を上げて急降下した瞬間に爆発が起き始めた。その際にスラスターのエネルギーがわずかにベーシックスカイドレスのほうに吸収されるように爆発していることがわかる。 

 ドレスそのものも一度内側にめり込んだのちに一気にはじけている。

「かなりコマ送りしないと見えないけど、その一瞬でこれだけ収束するってことはもっと威力のあるものだったら爆発規模はドームで抑えられてたかどうか」

 カコの言葉は恐ろしいものだった。

 それがもし人がたくさんいる場所で爆発してたなら確実に人が死ぬ。

 それを意図的に組み込んだ人間がどこかにいるというのに、まだ手掛かりは何もつかめていない。

「でも、サポートしてる兼ね合いで武器をたくさん見てきたけど収束する爆弾なんかあるの?」

「手に入るかは置いといて一つある。小型極小特異点爆弾」

「特異点?」

「特異点ってのは既存の理論や法則が通用しないって思ってくれればいいよ。それを意図的に作り出し爆破させる。大昔はそんな兵器で争ってたらしい。でも、現代では作るのがかなり難しくてどの研究機関も半ばあきらめかけてるってやつ」

「歴史の授業で聞いた気がする。特異点戦争。私たちの文明が発展する大昔に起きた宇宙規模の戦いで使われた武器でしょ」

「宇宙……」

 空の上にある宇宙。

 そんな場所まで到達していた旧人類にステラはどこか憧れを抱きつつも、愚かな兵器によって宇宙で散ったことを内心で悲しんだ。

「まぁ、憶測だけどね。もっと賢い人たちが作った特殊な爆弾だろうから今の話は忘れて」


 3人は一番信頼できるのは誰かと考えてみた。

「マチルダ先生は?」

「第一の担任か。確かに責任も強くて信頼できるけど少し頼りづらい気もするね。リリーカのドレスが不調を起こした時に見てたけど動揺してたのが見て取れた」

 ミライはギャラリーとしてあの場に居合わせ状況を見ていた。

「ミライって謎の36人目の話してたよね」

「えっ? あー、人数確認の時にね」

「その子の顔って覚えてる?」

「う~ん、顔を見れば思い出すと思う。左目の横に白っぽい何かがあった気がする」

「じゃあ、ミライはデータベースから生徒情報を当たってみて」

「わかった。何かあったら連絡して」

 ミライに36人目を探してもらっている間にステラはカコに相談をした。

「なんでベーシックスカイドレスだけが不調になると思う?」

「たぶんだけど管理体制が甘いからじゃないかな。ステラやミチがベーシックスカイドレス借りるときに申請書だしたすぐ貸出できたでしょ。しかもベーシックスカイドレスの格納庫は関係者ならだれでも入れる。細工しやすいんだよ」

 2年目から順番に作成されるワンオフ機は2年生のドレスなら2年のみ、3年生のドレスなら3年のみが入れる。

 しかし、ベーシックスカイドレスは授業や模擬戦、もしくはちょっとした作業で使うことがあるために学校関係者はみんな入れるようになっている。

「でも、そのベーシックドレスがどのタイミングでどこで誰が使うかなんてわからないよね」

「まぁ確かに。個人が借りるなら当日でもいいし授業で借りるのも朝まとめて申請してるみたいだから正確に把握することは難しい」

「だったら犯人は特定の対象を狙ってるわけじゃない。不調を起こすことそれ自体が目的になってるわけだからそれをして得する人間が犯人ってことだよね」

 すべてのベーシックスカイドレスが意図的による同一犯の犯行ならばステラの説は信ぴょう性を増す。

 特に、リリーカのスカイドレスが不調を起こした際の出来事が一番予測できないのだ。あの時は第一航空隊の上位が先行で訓練をするものだった。

 その時は誰が乗るかなどマチルダがその場で決めていたために誰も把握することができない。そして、ほかの件も誰が乗るなど予測は難しい。

 だが、もし不調を起こすという結果だけが欲しいのならばベーシックスカイドレスに細工をするだけであとは待てばいい。タイミングを狙うのではなくあとは誰かが使うのを待つだけなのだ。

「でも、なんのためにそんなことを……」

「わからない。でも、私たちがドレスの事故を把握できないほど早く風化する学校の体質に関係してる気はする」

 その時、別の場所で小さな爆発が起きた。


 現場はレースのスタート地点。

 どうやらスタート地点道路中央に置かれた空中に映像を映し出す機械が爆発をしたようだ。規模は小さいもののレース直前で人が歩道に移動していなかったらけが人が大量に出たとこだろう。

 レースは一時延期でチェックが行われた。

 この誰もが楽しむイベントを邪魔する影が少しずつステラたちにも迫っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る