第20話 熱狂の裏で

 エース、それは各学年に一人しか選ばれない最強の称号。

 条件が厳しいためにエースのいない学年があるほどだ。


「さぁ、ではこれより! エースのマスターによる模擬戦を行います!」

 都市の中央にあるドームではエースによるサバイバル形式の模擬戦が繰り広げられていた。

 ドーム全体にシミュレートモードのように攻撃のエフェクトを再現する装置があり、観客は裸眼でもスカイドレスの迫力あるバトルが見れる。

「今回は青空航空科学高等学校から4人のエースが迫力ある戦いを見せてくれます!」

 ドームの屋根が開くとそこから4機のスカイドレスが降りてきた。

「3年のキリア! 4年のソレイユ! 5年のマックス! そして、6年のクローム!」

 1年と2年はエース不在。1年はサマーフェスティバルまでの期間が短いため仕方なく、2年はかつて最速でエースになった少女がいたがそれ以降2年のエースは現れていない。

「さらに今日は特別ゲスト! 七星航空防衛学校からの刺客! ノア!!」

 現れたのはモエと交戦していたノアだった。

「うわぁ、今年七星来るって忘れてたぁ……」

 ソレイユは始まる前からげんなりしていた。

 すると、その様子がきになったキリアが声をかけた。

「先輩、あの人強いんですか? 見た感じ1年っぽい雰囲気ですけど」

「七星ってのはかなり強いマスターが集まった学校なの。同じ1年同士だったらたぶんトップ生徒以外は勝てないよ」

「そんなにですか!? 恐ろしい子……」


 一方で都市内ではパトフライヤーの先行試作公開が始まっていた。一つは女性が着ておりもう一つはスタンバイ状態になっている。

 以前、ステラがミライと共にデータ回収をしてからデザインが多少変更され、白ベースに紺色のラインと黄色のラインが装甲に入っている。アイシールドは顔全体を覆うタイプのフェイスシールドに。パトランプは肩に変更。

 オートとマニュアル変更時のラグを抑えレーダーを町に配置されている物から熱源や車両を探知するCタイプと従来のNタイプ同時搭載。

 武器をリボルバーと警棒、さらに腕に半透明の物理シールドを搭載。

 手錠型の武器は飾りのようにも見えるが対ドレス、対テロパワードスーツ用の拘束具でありながらも手にはめてメリケンサックのようにも使える優れものだ。

 治安情報管理局の職員が紺色の制服の下にボディスーツを着てパトフライヤーを身に纏っている。

「こちらが新型汎用警備スカイドレスのパトフライヤー。警備局の設立と共に配備予定です。最高速度はマッハ1.7。平均戦闘スピードはマッハ0.8。しかし、町中で使用する際には過度な衝撃を起こさないために基本はマッハ0.1~マッハ0.3程度で使用されます。それでも通常の車両であれば簡単に、レース車両でさえも追いつけることができます」

 休憩中のステラはその様子をカコとミライと共に眺めていた。

「私が来た時よりもかっこいいね」

「あれがほぼ完成形だからね」

「お偉いさんは試作機のロマンを知らないからなぁ。私だったら試作機もしっかりデザインするけどね」

「なら、私のドレスをカコに頼めば最初からかっこよく仕上げてくれるんだね」

「もちろんもちろん!」

「だったらカコに頼みたいな」

「こんなタイミングでそんな重大なお申し出をされるなんて思ってもみなかったよ! その時が来たら任せてよ!」

 すると、ミチが慌てて3人のもとへやってきた。

「ステラ! ちょっときて!」

 

 ミチは理由を話しながら説明した。

「第三航空隊で使ってドレスが急に不調を起こしてさ。第三のメカニックの子がいたから見てもらったんだけど理由がいまいちわからなかったの。それでまた近くにいた2年の第一航空隊の人に調べてもらって何とかことは落ち着いたんだけど。またしばらくして不調になってさ。暴走し始めたの!」

 暴走と聞くと記憶に新しいものは初めて訓練の時だ。

 リリーカの着ていたドレスが不調を起こしスラスターの暴走に制御負荷。結局その件の詳しいことは生徒たちは知らないまま風化していった。

「そういえばつい1か月まえも2年の人がベーシックスカイドレスで模擬戦を行おうとしたら不調を起こしたって」

 ミライはそのサポートにつくために現場にいたが、その時はバランサーがおかしくなりそのまま砂場に落ちたという。当のマスターは打撲で済んだがその話はステラたちにとっては初耳だった。 

「それなら私もある。ベーシックタイプは1年と2年が基本整備してるんだけど、チェックを終えたはずのドレスがアイシールドモニターが光ってて中覗いてみたら何かデータを処理してたの。それも教師に報告を上げたけど音沙汰ないや」

 それぞれの周りで起きたベーシックドレスの不調や事故。

 不審なことにどれもが隠ぺいするように風化していること。

「なにか嫌な予感がするね」

 

 現場に到着するとマスターの制御下から外れた状態で動くベーシックスカイドレスの姿があった。

「あれを止めてほしいの!」

 よくみるとドレスを指さしたミチの腕にはあざができていた。

 近くには倒れた状態のドレス。

 ステラはすぐに察した。ミチがあのドレスを止めようと試みたことを。

「私に任せて」

 ステラの目の色が変わる。地上でのふわぁっとした雰囲気から空で戦うモードに変わったのだ。

 すると、ミライがステラを止めた。

「どうして?」

「さっきみんなで話したでしょ。ベーシックスカイドレスの不調。ミチ、あのドレス何かおかしな点はなかった? ミチだってマスターだよ。そんな簡単にあきらめてないはず」

「……その、普段より動かしにくかった気はしたの。でも、自分の実力不足の可能性もあって言い出せなくて……」

「カコ、あのドレスをチェックしてみてくれぐれも中止して」

「おっけ~」

 カコがベーシックスカイドレスのステータスを確認しているとあることに気づいた。

「ん? 本来のスペックよりも大幅に下がってる。パワーもスピードも全部半分の性能しか出せないよこれ」

 ミライは最悪の状況を考えた。

「もしかしたらすべてのベーシックドレスになんらかしらの不調が発生してるのかもしれない……」

「だったら私は何を着ればいいの?」

「……」

 現場にあるスカイドレスはどれも不調の可能性がある。以前、ステラが借りたOBのワンオフ機を借りるにも申請したうえで格納庫まで戻らなくてはならない。

 そこでステラは提案した。

「さっきの借りられないかな?」

「さっきのって……もしかしてパトフライヤー!?」

「うん。試作機なら私来たことあるしあれってベーシックと一緒で汎用タイプでしょ。私のボディサイズに合うよね」

「そうだけども……」

「あれを引き付けてさっきの場所まで行く」

 そういうとステラは暴走状態のベーシックスカイドレスに石をいくつか投げつけ敵認識するようにした。

「オートで動いてるならこれでくるはず!」

 ステラの思惑通り追いかけてきた。

 人ごみをかき分け一気に先ほどの会場まで戻る。

 その後ろをミチとミライが追いかけた。

 警備局のお偉いさんが話しているステージに上がり込みステラはスタンバイ状態のパトフライヤーを着た。

「ちょっと! 勝手に着たらだめですよ!」

「ごめんなさい。でも、あれを止めなくちゃいけないから」

 暴走して追いかけてくるベーシックスカイドレスを指さした。

 動揺する司会の女性のマイクをミライが横取りしてまるでショーが始まるように言った。

「ぜひ、ご来場のみなさんにはパトフライヤーの性能を見てもらうためにちょうどいい相手が現れました! あれをテロ組織が使うパワードスーツに見立ててシミュレーションしてみましょう!」

 ミライがそういうと会場の人たちは落ち着きむしろ目のまえで模擬戦が見れることに喜んだ。

「こちらの空のように透き通った青い髪の少女ステラはパトフライヤーの試験機を操りスカイファイターとの模擬戦で勝利を収めている生徒です。1年でありながらも他校の生徒を圧倒し先輩さえも倒してしまう腕前と、パトフライヤーの性能が加われば鬼に金棒というものです!」

「パトフライヤー、スタートアップ!」

 被害を出さずに暴走したベーシックスカイドレスを止めることができるのか。

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