第19話 陸のチームワーク 

 ガイアドレスとは地上での戦闘を始め採掘や道を作ったり都市や町開発を行うために開発された汎用型のパワードスーツ。

 スカイドレスより歴史は古く地上戦用の車両タンクの応用として作られた。

 スカイドレスで使用されているグリーンストーンと言われる石を利用することでバランサーの性能を底上げしどんな悪路でも走りどんな角度の壁でも走行できる。それが天井だったとしても。

 しかし、現状の欠陥としては遮蔽物がない場合において攻撃を防ぐ手段が少ないということ。

 さらにモエのガイアドレスは白兵戦仕様の高機動型。高速移動にエネルギーを割くためにシールドへエネルギーを使用すると両方とも半端になりかねない。


 遮蔽物のない草原でモエは正体不明のスカイドレスと戦闘になった。

 急降下してきスカイドレスに実弾を打ち込むモエ。しかし、慣れない長距離武器でレーダーやアイシールドモニターの照準補正もないままでは当たらない。

「そんなんじゃあ目を瞑っても避けられちゃうよ~!」

 正体不明のスカイドレスの少女は挑発するように近くを飛んで再び空へと飛んだ。 

「ワイヤーで電気流すにも距離が遠い……。何とか誘導して降ろすしかない」

 モエは相手にキャノンを撃ちながら後方へと下がっていく。

 相手は避けながらも一定の距離と高度を保って追いかけてくる。

「私を完全に倒すことが目的ではないか。相手の武装がわからない以上町を背にするわけにはいかない。でも、あの範囲からは出なくては」

 空薬莢いくつも草原に落ち草をつぶしながら走行していく。

 進行方向に体を向け長距離キャノンをリロード。C級武器ゆえに一撃で相手を戦闘不能にする力はないが直撃すればダメージを入れることはできる。

 しかし、見た目に似合わず砲身の耐久度が低く連続使用すると砲身が熱で変形してしまう。

 モエはキャノンを近くに投げ腰のハンドガンに射程を伸ばすアタッチメントを付けスモークを焚いた。通常のスモークゆえにジャミング効果はないが相手のジャミング攻撃が有効のためわざわざ相手にかける必要はない。

「判断が早いね。私たち空と違ってどこへでも行けるわけじゃないから限られた条件下で選択がうまい。それにしてもスモークを焚いてわざわざ視界不良にするなんて。ジャミングでレーダーが使えないのにどうするつもりだろう」

 少女が距離を保ち状況を観察してるとスモークの中から銃撃が放たれた。

「――ッ!!」

 その精度は先ほどまでとは違いかなり正確だった。

「へぇ~やるじゃん!」

 広がるスモークの中を移動しどこから撃つかばれないように対策しつつモエは射撃した。

「どんどん狙いが正確に……。まるで毎回レーダー見ながら修正駆けてるみたいに。そろそろスモークは消える。シルエット見えたらこっちからせめてやる!」

 不運なことにこの地域は穏やかな風が吹く場所。

 スモークの効果は長くはもたない。

 モエのシルエットを確認したと同時に少女は一気に突っ込んできた。

「命までは取らないよ!」

 シルエットに対してナイフで切りかかった。

 しかし、切ったはずなのに手ごたえがない。

「違う! これは!」

 切ったはずのシルエットはダミーだった。風船のようにはじける奥から一瞬だけ光が見えた。

「ここは私の距離、逃がさない!!」

 光ったものはモエの刀のようなロングソード。

 スカイドレスの腕の装甲を狙いモエは突きを放った。

「長物かっ!?」

 間一髪で回避し浮上しようとすると別方向から砲撃が飛んできた。

「位置が割れたか! いつのまにかジャミングの範囲の外におびき出されてたというわけね。さっきのハンドガンもあの子だけジャミングの外にいたから正確な射撃ができたんだ」

 そういってるまに攻撃は激しくなる。

「浮上した時だけに狙われるということはある程度視野に限界があるということ。低空で戦うしかないか」

 少女は低空に下がっていった。

「あちゃー。もうこっちから狙えないからそっちで頑張って。でも、一か所にとどめてくれた変則射撃で当てられるかも」

「ありがとうロロ。位置情報は常に送ってるからそれを参考にして」

「あい。――ララァ、ユリカはいつくるの? ユリカくれば火力で押し切れるけど」

「ユリカのドレスは遅いからもうちょっと待ってあげて」

「こっちの道酷いんだけどぉ! 私のドレス重いから砂利道キツいんだって!」

 重火器を大量に所持しているミクルのガイアドレスは悪路を走行する際にほかのガイアドレスよりも慎重にならなければならない。

 一度倒れてしまえば重さゆえに立ち上がるのに時間がかかる。


「あなたの所属は? 来た方向から察するに青空学校の人じゃないんでしょ」

「それはバレてるんだね。まぁ、もうちょいそこは濁しておこうかなぁ」

「含みのある言い方。私そういうのあまり好きじゃない。捕まえて吐かせるよ」

「低空だからってぼくを捉えられるとでも? 小さくてかわいいけど結構クールなところがギャップ萌えだね。でも、捕まえるならもっと実力上げてきた方がいいよ」

「ガイアの戦い方見せてあげる!」

 脚に装備してあるスモーク弾を二発発射。

 空はスモークで覆われる。

「モエのやつ一人で終わらせる気じゃん。私、寝てていい?」

「言い分けないでしょロロ!」

「ですよね~。攻撃の機会をじーっとまってますよ~」


 ロロとララァが話している間に戦況は変化していく。

「視界不良でもレーダーに異常はない」

 少女はシールドを張った状態で様子をうかがった。

「攻撃もしてこない。もうすぐ霧が晴れるというのにいったい何を……?」

 霧が晴れると同じ位置にモエは立っていた。

「結局なにもしてこなかったね」

「むしろそっちが動かなくて助かった。上に行けばスナイパーで地上戦は私に分がある。だからだろうけどそれでも動かなったことが私にとっての幸運」

「どういうことかな? まぁいいや。そろそろ行かなきゃだから終わらせるね!」

 その場を動いた瞬間、警告音と共に草原の草に隠された銃が放たれた。

「罠か!」

 回避するとまた警告音と共に銃撃。さらに同じことが繰り返される。

「どういうこと!?」

「さっきの間に私の仲間が罠を仕掛けた」

「にしてもこの武器の量は一人分の物じゃない! それにあなたは銃をほとんどもってないはず!」

「仲間に人間武器庫と言われるほどに無理やり武器を装備しまくった馬鹿がいるの。ここに配置される武器は全部その分。あなたはすでに罠の結界の中にいる。動きは手に取るようにわかる」

「……正直、なめてたよ。地上戦力が空中戦力に勝てるわけがないって。でも、チームワークは地上のほうが格上だ。海の子たちもそう。だけどね、スカイドレスはドレスの中でも最新のもの。人類の期待と希望を現実にした科学と不可思議の到達地点! 予想は常に超える!!」

 少女のスラスターの音が高まる。まるでエネルギーをチャージするように。

「この三式X型スラスターはまだ試作用。出力の高さゆえにエネルギー消費が激しく汎用とは言い難いX型スラスターをバージョンアップさせたもの。その真骨頂は安定と……爆発力!」

 モエはロングソード持って構えていた。近づいてくれば瞬時に斬れるように。

 場合によってはソードを落としてハンドガンで撃つことも考えていた。

 隙などない。今までの動きを見ていて相手が強者だとは理解していた。

 動きを。

「えっ……?」

 瞬きをしたかもわからない。

 そんなふうに思えるほど一瞬の出来事だった。

 予想を大きく超える速さ少女は接近しモエの目の前へ。

 その背後では罠のセンサーがほぼ同時に反応し標的のいない中銃撃と爆発が起きていた。

「これがスカイドレスの力。それとマスターの技量ね。――ぼくは七星航空防衛学校のノア。青高と違って戦闘だけに特化したマスターの学校だよ」

 その話を聞きララァが通信を入れた。

「ノアって今日のサマフェスで模擬戦を披露するあのノアさん!?」

「あ、君が指揮官かな。そうだよ。といっても敬語は使わなくていいよ。私も君たちと同じ1年だから」

 七星航空防衛学校はメカニックやサポート科がない正真正銘のマスターのみの学校。ここを卒業したものはもれなく軍まで一直線。

 同じ学年同士なら青空航空科学高等学校よりも平均的な戦力は上。

 中堅レベルでさえ第一航空隊の各学年トップ10でやっと相手が務まるほど。

 それに提供されるドレスも性能が高く本人たちの技量も相まってとんでもない戦闘力を誇る。

「とんでもない相手と戦ってたんだ私たち……。モエ、もう戦闘態勢解除して。みんなも。今の私たちで相手できるレベルじゃないよ」

 モエは釈然としない中、ノアをにらみつけるようにじーっと見た末にソードを納めた。

「モエちゃん、君には才能がある。だから、単独でも強くなれると思う。でも、チームワークを一番大切にしてね。それはいずれ何よりも強い力になるから」

 そういうとノアは都市に向かって飛んで行った。

 ノアはその背中を見つめ小さくぼやいた。

「勝ち逃げされた……。まただよ」

 

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