第17話 サマーフェスティバル直前

 サマーフェスティバルは2日間だけ行われる都市や周辺の町を巻き込んだ大きなお祭り。青空航空科学高等学校と青空航空防衛軍の信頼があってこその開催規模である。

 さらに、町の人たちや他校の生徒も無料送迎付きで都市までやってくることができる。

 新型スカイドレスや新型スカイファイターのお披露目に青空航空科学高等学校と交流のある大地陸行科学高等学校と海原水平科学高等学校の紹介と最新ドレス紹介もある。

 朝から都市は人だかり。一足先に開いた屋台などはすでに長蛇の列。

 都市の飲食店が嫉妬するほどの人気だ。

「こちらでは青空航空科学高等学校と青空航空防衛軍の紹介映像を流しております。ぜひご覧ください」

 OBや今の生徒、さらに軍で活躍するもと生徒たちが華麗に飛び颯爽と駆ける映像が流れていた。

「かごの最終チェックとドレスのチェック、タブレットに表示させた項目全部クリアしたら教えて!」

「カコ、今日はなるべく近くにいてもらっていい?」

「いいけど、どうしたの」

「いろんな無線が飛びまくってて地上同士だとたまにラグが発生するの。情報伝達に支障が出るとまずいから」

「さすが通信隊だね。いいよ」

 1年第一航空隊は空中散歩で貸し切った都市で準備を始めていた。

 トップ10はそれぞれ二人ずつVⅡ型を身に着けチェックを行う。

「ミソラとクルミ、ウララとヤマネ、ステラとリリーカ、次は――」

 ミライがマスターの組み合わせ発表しているとウララが割って入った。

「ちょっとまってよ! 私とステラじゃないの? ガイア相手に一緒に戦ったんだよ!」

「それはそうだけどそれ言ったらクルミやミソラもそうでしょ。それにリリーカも最後の方は参加した。それにリリーカのほうがみんなよりもステラと飛んだ経験が多いしステラのことを人一倍ライバル視してる。それは相手のことを理解してるともいえるから」

「私はライバルじゃないってわけ?」

「ウララは一歩退いてる感じがするの。ウララのデータを見たけど大地学校との戦い以降ちょっと成績下がり気味でしょ。逆にヤマネはひそかに成績が上がってる。リリーカもかなり成績が上がってるのに順位が上がらないのはヤマネの成績が上がって簡単に抜けなくなってるからなの」

 ヤマネはミライの後ろでピースしてウララを挑発していた。

「こんのぉ……。でも、仕方ないか。リリーカ、今回は譲るけど順位は譲らないからね」

「そこは実力で勝ち取ってみせますわ。それに、私よりも先にまずはヤマネさんやステラさんに抜かれることを警戒した方がいいですわよ」

 順位を争いつつも尊重しあう関係がしっかりと形成されていた。

「そうだ、第二が近くでドレスを近くで見ながら解説を受けられるブースト、第三がドレスを使った的当てゲームしてるから邪魔にならないようにね」

 そこら中で準備を整える生徒たち。

 都市はたくさんのバルーンなどの装飾により普段は違う姿を見せていた。


「こちらチームアップワン。都市上空での最終練習を行う」

「了解。別チームの練習が8分後に行われる。5分後滑走路に帰還せよ」

「了解」

 スカイファイターのアクロバット飛行チームが空で練習している中、スカイドレスは都市のビル群の隙間を縫うように練習をしていた。

 スカイドレスは人型ゆえに細かところでの繊細な飛行を、スカイファイターは大空での迫力ある飛行が好まれる。

 スカイファイターはカラースモークで会場を彩り、スカイドレスは巨大クラッカーや空でのバトントワリングやリボンで注目を引き付けるのだ。

 

「こちらモエ、現状は不審なところはない」

「こちらミクル、少し霧がかかってるけど昼前には晴れると思うよ」

「こちらユリカ、あまりにも平和すぎて寝ちゃいそう」

「ロロも暇してまーす」

「退屈なのはわかるけどしっかりと監視しててよね」

 大地陸抗科学高等学校1年のマスタートップ5がレースコースの安全確認を手伝っていた。チームの指揮はララァが取っており優れたチームワークで隙なく巡回しているがあまりにも暇すぎてみんなそろそろ飽き始めていた。

 すると、ララァの近くにオレンジ色のスカイドレスややってきた。

「確かララァだよね。君の先輩から話は聞いてるよ。これ、差し入れ」

「あっ、ソレイユさん! わざわざありがとうございます! ――その、ステラって今どうしてます?」

「気になるんだね。ステラは今回都市内でスカイドレスで人を運ぶ空中散歩ってのをするみたいだよ」

「ステラらしいですね。調子もいい感じですか?」

「怖いくらい調子いいよ。最近はペイント戦で3年に勝ってたしスカイファイターの1年相手にシミュレートモードで勝ったし、成績もいいからそろそろ順位が上がってもおかしくないかもね」

「さすがですね。うちのモエが聞いたら悔しがりますよ」

「モエってトップの子だっけ?」

「はい。控えめに言って天才です。冷徹に冷静に相手を倒す子で銃を向けられても岩が降ってきてもまったく動じない。だけど、地に足ついてないと不安になっちゃうんです。このまえ海原の海防艦に乗ったんですけどずっと私にくっついて怖がってたんです」

「ステラも地上にいると雰囲気変わるから似てるかもね。――ってもうこんな時間か。みんなに差し入れ届けて私は都市に戻るね。時間があったら見に来てよ」

 ソレイユは空へと飛んで行った。

「空に空の天才がいるってわけね」

 

「ねぇ、ステラ。第一航空隊って35人だよね」

「そうらしいけど。どうしたの?」

「さっき私とカコと教師を抜いて周辺にいた生徒たちを数えたら36人いたの」

「第二や第三の子が混じってたとか?」

「向こうはさっき点呼中でみんな揃ってたからたぶん違う。それに腕のマークが第一のものだった」

 航空隊は腕のワッペンが白い翼にそれぞれの隊番がローマ数字で描かれている。

「数え間違いかもしれないけど一応頭の片隅に入れといて」

 多くの人間が行き交う中、見間違いや数え間違いなんか起きてもおかしくない。教師でさえも間違うことはある。

 しかし、サポート科となるとそういった間違いを一番嫌う科だ。

 サポート科は正確なデータをマスターからメカニックへ、メカニックからマスターへと伝えることが大事。そのため軽率に間違いをするわけにはいかない。

 ミライはすでにプロ並みの責任感を持ち合わせており自身の数え間違えを未熟さということで受け入れつつも本気で間違えたとは認めたくないのが本音だ。

 ミライにサポートされた経験はないステラだがミライのプロ意識は察していた。

 このミライの数え間違いもしくは人数の不一致がこのあと起きることになる事態のきっかけだった。

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