第16話 それぞれの空

 スカイドレス。

 それは、特殊な力を発する石。ブルーストーンを内部に組み込み浮力を高め、スカイファイターで紡がれたスラスター技術を応用し人類の単独飛行を成功させたパワードスーツである。

 ふとももや腹部、顔などのものによって露出する肉体の部位は変わるが、装甲で守られてない箇所も見えないシールドを展開しており、簡単に攻撃が通らない設計になっている。

 全身を覆わずとも高速飛行、単独飛行、汎用性を維持できることからたくさんのワンオフ機の開発が可能となっている。


 というスカイドレスの知識面をカコから教えてもらっていたがステラはすでによくわかっていなかった。

「ってちゃんと聞いてる?」

「あ、うん。……うん」

「ほんと地上だとぽやぁ~っとしてるよね。空の凛々しさはどこへいっちゃうのやら」

  すると、第二航空隊のミチが昼食にやってきた。

「二人とも久しぶり。といっても1週間ぶりとかかな」

「おひさ~。最近はみんなサマフェスの準備で会えないもんねぇ」

「第二もぼちぼち忙しくてね。ってなんでステラは頭抱えてるの?」

「あー、スカイドレスの知識を叩きこんでたの。感覚的に理解はしてるみたいだけど文字を見ながら把握するは苦手みたい」

「それでよくあれだけ上の順位とれたね……」 

「ご飯を食べてからにしよう。私頼んでくる」

 ステラは一人で注文しに行った。

 その姿を眺めたあと、ミチはカコのほうに振り返り少し神妙な表情で小声で言った。

「最近、空軍の人が職員室に来てて作業ついでに聞き耳立ててたらどうやらステラの話をしてたみたいなの」

「軍がステラの話を? 確かに異常なほどに活躍してるけど軍が話題に出すほどかな」

「入れ替りで二人来てさ。一人はステラの成績や実績データを貰ってて、もう一人はステラが作ってる何かを探してた」

「ステラが作ってるもの……」

「心当たりない?」

「システムの作り方を教えたんたけど、そうしたら夜な夜な作業してるってリリーカに聞いたの。もしかしたらそのことかな」

 二人が話しているとオムライスとお菓子をもって戻ってきた。

「おばちゃんからチョコもらっちゃった」

「ステラは人あたりいいからねぇ。この前のミコト先輩ですら最近はステラに興味持ってるからね」

「ドリルの件だっけ? ステラから聞いたよ。わたあめ作るために戦ったって」

「そっちだって試作機のテストにステラを使ったんでしょ」

「ま、まぁそうだけど。みんなステラに引き寄せられてるんだね。なんだか不思議だよ」

 等の本人はそんなこといざ知らず美味しそうにオムライスを食べていた。


 サマーフェスティバルへの最終チェックが各学年各隊で行われていた。青空学校の広大な敷地の各地でスカイドレスやスカイファイターが飛び交う。

 調理室では屋台用の料理の匂いが充満している。

 ステラたちも広場で最終チェックを行っていた。

「いい感じですわ。VⅠ型はもう少し離れてくださいます? クルミはもう少し高度を安定させないも乗ってる方が寄ってしまいますわ」

 意外にもリリーカが現場での指揮をうまく執りつつミライと共にチェックを行っている。

「このVⅠ型浮力が弱いね。ブルーストーンを入れ換えようか。そっちのはバランサーの調整加えるからそのままでね」

「カコさん、こっちもみれます?」

「すぐ行くよ、って、あー! そこ勝手に動かさないの! 私がやるから休んでていいよ!」

 カコも一人でメカニックを担当してるためかなり忙しなく動いていた。

 ステラとミソラは人を乗せたかごを持ってもすぐに調整し安定感を保っている。

 ドレスを脱いだ二人はベンチで休んでいた。

「私、田舎町の出だからこんな風にみんなで作業するの初めて。賑やかで楽しいね」

「ステラは成績だけでここに入ったんだよね。でも、遠くになるけど晴天学校や天空学校ならもっと楽にお金もかからなかったでしょ」

「えっ?」

「あ、もしかしてほかにもスカイドレスを扱う学校があるって知らなかった感じ?」

「田舎だったし初めてスカイドレスを知ったのがスカイハイの下でソレイユに会ったときだから」

「スカイハイ。理想の空島ね」

「私だけのドレスでスカイハイに行ってみたいの」

 スカイハイは誰もが望む理想の町と言われると同時に内情が把握されてないため陰謀的な話も噂される島。

 ステラはそんなことなどは知らず、単純に空に浮かぶ島の美しさに魅せられたのだ。

「ステラは何を目指してるの?」

「目指す?」

「うん。空を飛んだ先に何を目指すのか。何をみているのか。何を手にいれたいのか」

 マスターとして、空を飛ぶものとして何を目指すか。

 人々に空に到達してほしい。空を見て希望をもってほしいというのがステラの思い。

 それに加え、ステラは微かな記憶で見た空を思い出した。

「いつかみた星がいっぱい輝く空。私はそこまで行ってみたいかな。どこまで続くからわからないけど、空の果てがあるならそこまで行ってみたい」

「宇宙ってこと?」

「宇宙……。いいかもね。宇宙行こうよ」

「やっと軌道エレベータで宇宙ステーションと繋がったばかりだよ。でも、夢は大きく持たないとね。成し遂げられるといいね」

「きっとやってみるよ。私が出来なければ次の世代にやってもらう」

 ここに集まる少女たちにはそれぞれに空がある。

 マスターは縦横無尽に空を飛び。

 メカニックは自分らが開発したものが空を飛ぶのを見守り。

 サポートはマスターやメカニックに最高のパフォーマンスを出していもらうために空を見る。

 青い空に雲空、夕方の空に星空、様々な空を駆ける少女たちの秘める思いは違えど見る先は同じ。

 サマーフェスティバルに向けて少女たちは心を一つにみんなで最高の空を完成させるために夜中まで調整を加えた。

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