第15話 空の自由

  シミュレートモードとは、搭載武器の攻撃がアイシールドやヘルメットの映像を通してのみ見える模擬戦用のモードのことである。

 しかし、近接武器に関しては当たれば装甲は傷つくため基本は使用を禁止している。

 ちなみにスカイファイターは全長15m~20mほどあるが、スカイドレスは脚パーツやスラスターで多少大きく見えるとはいえせいぜい2m程度。大きさの違いで気おされてもおかしくないがステラは堂々と相手の前に飛んでいた。

「そういえばさっきステラとかって呼ばれてたな。あれか、最近そっちを賑わしている期待の1年ってやつだよな。まぁ、ファイターにどれだけ通用するか試してやろう」

「今のあなたじゃ追い付けないよ」

 戦闘開始と共にシデンは正面にいるステラに対し急速接近しつつ機関砲を放った。

 だが、細かい起動ならばドレスに軍配が上がる。

 華麗に避けつつファイターを避け背後を取った。

 ステラは腰の銃をとって狙いを定める。

「オートで標準が合わされる。なんだか気持ち悪いかも」

 パトフライヤーは全員が一定水準の戦闘や警備や防衛を行うためのスカイドレス。

 そのために本人の調子などに左右されないためにオート機能、アシスト機能がかなり充実していた。

 武器を取り出すのも武器を撃つのもアシスト。避けるのもアシストがついている。

 一応、データ収集ということでアシストをつけたまま動いていたステラだがいよいよ我慢の限界が来てしまった。

「だめだ。これじゃあやってらんない。ミライ、全部のアシスト切るね」

「いいけど空中でいきなり切ったら危ないよ」

 ミライの忠告を最後まで聞き終える前にステラはパトフライヤーの全アシスト、オート機能を解除した。

 そのバランサーやスラスターなどもアシストで制御していたため、解除した瞬間ステラは急降下を始めた。

「バランサー機能を50%アップ、スラスター出力をマニュアルでコントロール。重力制御装置再起動。浮力を高めて姿勢を維持」

 ステラは音声操作により急降下をなんとか防ぎ地上5メートルのところで全機能を復帰させ再び飛び上がった。

「あぶなかった……」

 さすがのステラも冷や汗をかき心臓がまだ驚いている。

「オートからマニュアルに切り替わる際に全機能がダウンして手動で戻さなくちゃいけないの」

「今度からミライの話はしっかりきくよ」

「お願いね」

 油断しているとシデンは上空高くからミサイルを放った。もちろんシミュレートモードのため実弾ではないがレーダー上では熱源としてとらえており、ミライ以外の視界からはヘルメットやアイシールド越しでミサイルが見えている。

「ミサイルはまずいか……」

 マッハ3のミサイル相手に試験機のスカイドレスでは分が悪い。

 そもそも警備用のために最高速はマッハ1.5とほかのスカイドレスよりもかなり低い。

 ちなみにソレイユのスカイドレス「サンシャイン」は直線においてギリギリマッハ5が出る。しかし、平均戦闘速度はマッハ3。実践レベルの4年のワンオフ機でやっとミサイルを回避できる。パトフライヤーでは逃げるのはおろか避けるのも難しい。

 さらに、スカイファイターやワンオフ機などのスカイドレスはフレアを搭載する。

 それは軍事的な防衛や偵察も兼ねてのこと。

 しかし、都市や町で戦うために作られているパトフライヤーはその必要はなくフレアは搭載されていない。よって通常よりもさらに対処が難しい。

「どうするのステラ。あんなの回避するなんてどうすればいいの」

 ステラはなるべくミサイルを引き付けるためにスラスターの出力を限界まで上げた。銃を右手に持ち好機をうかがう。

「近くても遠くてもだめ。でも、爆風の被害を受けないような距離」

 ステラは瞬時に後ろを振り向き銃を連射した。

 回転式の銃はいわゆるドレス用の大型リボルバータイプ。6発の弾丸を撃ちだす。

 なぜリボルバーなのか。

 それは、対機械兵器に対して一撃でコアを撃ち抜くための貫通力が必要だからだ。

「リボルバーなら壊せる!」

 三発でミサイルは破壊。

「チッ。でも、もう一発あるのさ!」

 すぐにもう一発撃つシデンであったが同様に破壊されミサイルではステラに対して決定打にならないことが証明された。

「ならドッグファイトと行こうじゃないの!」

 スカイファイターが急速接近。

 機関砲を放ちながらの強引な押切だ。

「空はもっと自由に使わないと」

 細かい機動力の高さで機関砲の射線から避け、逆に背後を取るとリボルバーを放つ。しかし、相手も巧妙によけていき勝負は五分五分。 

 さらに言えば背後をとってもパトフライヤーの加速ではそもそもスカイファイターに追いつけない。追いかけっこでは勝ち目はゼロ。

「速い相手にまったく対応ができない。追いつくことは不可能か。――いや、だったら」

 ステラは追いかけるのをやめてスカイファイターを待ち受けた。

「やってやろうじゃないの!」

 シデンはターンしてステラへと向かってきた。

 ステラはシデンの行動パターンからある作戦を思いついていた。

 機関砲を避けつつリボルバーを撃った。

「その程度なら簡単に避けられるさ!」

 機体を傾けほんの一瞬。ステラを視界をから離した瞬間だった。

 ステラは視界から完全に消えてしまった。

 それと同時にスカイファイターのアラート音が鳴り響く。

「ロックオンアラートだと!? どこにいるってんだ!!」

 すると、シデンは機体の違和感に気づく。

「加速が悪い。まるで重いものを乗せたかのように……。まさか!!」

 そのまさかだった。

 ステラはスカイファイターの背面の突起に手をかけいつでも攻撃できる体勢だった。警棒でもリボルバーでも。

「そこまで!」

 先輩のパイロットが言った。

「二人とも離れるんだ。今回お互いに攻撃を当てたわけではないが、ステラは攻撃できる状態を作り出したことから今回はステラの勝利とする」

「そんなぁ~~」

「シデンは突っ込み癖をやめたほうがいい。パターンが単純で意識しなくてもバレるから」

「ったく。勝ったからってアドバイスかよ」

「アドバイスというよりおすすめって感じかな。最高速でガンガン飛ばすのも楽しいけど、空は自由だから。もっといろんな飛び方すればきっともっと素敵に飛べるよ」

「……まぁ、考えとくわ」

 

 シデン含め3人のパイロットは先に帰っていった。

 先輩パイロットが降りてくるとそれはステラの知っている人物だった。

「ラニさん!」

「久しぶりだね。噂は聞いてるよ。かなり活躍してるんだって?」

「そ、そんなことないです」

「謙遜はいいさ。――シデンの飛び方がぎこちなさ過ぎてちょっかいだしたんだろう。あまりほめられたことではないな」

 事故はなかったとはいえ唐突に割って入るのは事故の原因となりえる。ラニはしっかりとステラを注意した。

「そうですよね……。ごめんなさい」

 ステラが反省したのを見ると次は笑顔で答える。

「でも、シデンのやつにとってはいい経験になったさ。なまじ強いもんだから癖をもったままのし上がってしまう。そうなると癖を直せなくなるからな。今回の敗北はあいつにとって意味のある敗北。ステラには感謝してるよ」

「い、いえ。衝動的でしたからお礼言われるようなものじゃ」

「次は君だけのオリジナルのドレスで共に飛べるのを願ってるよ」

「はいっ! その時はおねがいします!」

 ラニは軽く手を振りスカイファイターに乗り込んで去っていった。


「ステラ! さっきのってもしかしてラニさん!?」

「そうだけど。有名な人なの?」

「有名だよ。だって、レッド4年のエース。疾風のラニって言われてるんだよ」

「知らなかった……」

 ラニはスカイファイターで様々な実績を残している猛者だった。

 1学年にエースは1人。しかも、かなりの成績と実績を残したものだけがもらえる称号。ラニはいくつもの死線を乗り越えたうえでガイアなどの演習でも好成績をたたき出している。

「ねぇ、私たちってスカイドレスで人を喜ばせたり戦ったりするでしょ。でも、いまいち何のために誰と戦っているかは私は知らない」

「1年の間は実際に防衛することはないからね。でも、今のうちに力をみにつけておいたほうがいいよ。むしろ、何がやってくるかわからないからこそ私たちは戦ってるんだと思う。私たちは空の自由を守るんだよ」

「空の自由……。なんだかそれいいね。よし、私も頑張ろう」

「そういえば私に何か話があるんじゃなかったけ?」

「あ、すっかり忘れてた」

 その後、無事にミライを誘うことができた。

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