第14話 パトフライヤー

 サマーフェスティバルのためにVⅡ型ベーシックスカイドレスを二機とVⅠを三機借りた。人が熱気球のような吊り篭で人を乗せることに決まった。

「よくこれだけのドレスを借りれましたわね」

「2年からは専用のスカイドレスを持ってるから案外使わないみたい」

「そうですのね。そういえばメカニックとサポートも必要なのではなくて?」

「あっ、確かに」

 今までサポートやメカニックなしで飛んでいたステラだったが、安全確保のためにはサポートとメカニックは必要不可欠。

「カコとミライに声かけてみるか」


 第一整備隊のカコへ声をかけてみると。

「いいよいいよ! どうせ本番では私必要ないからね」

「ありがとう。今度お礼するね」

「だったらフライトデータ取らせてよ。ワンオフできたら私がいじらせてほしいの!」

「カコならむしろ私からお願いしたいくらいだよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないの~。――じゃ、整備の方はまかせといて。また連絡ちょうだい」


 カコを無事に誘うことが出来たステラは、その足で第二通信隊の教室へとやってきた。

「あれ、どこにもいない」

 教室の扉から覗いていると一人の生徒がやってきた。

「あっ! もしかしてステラさんですか!?」

「う、うん。そうだけど」

「わぁ! こんなとこで会えるなんて光栄です! 私、カナトっていいますっ。あっ、握手してください!」

 勢いのままカナトと握手をした。

 どうやらこの前のミコトとの戦いもありだいぶ知名度が上がっていたようだ。

 ほかにも何人かやってきて握手を求められた。

「あの、ミライってどこにいる?」

「ミライちゃんなら第一に昇格しましたよ!」

「えっ、いつのまに」

「この間、上級生のサポートをすることがあってその時にすっごく成績がよかったから第一の子とと入れ替わったんですよ」

 非情だが生徒の能力がリアルタイムで反映され周りの評価、生徒の評価、本人の意思、それが揃えばいつでも昇格することができる。

 下剋上、この学校では日常的にそんなことが起きているのだ。

 航空隊もステラが認識していない間にトップ10以外は目まぐるしく入れ替わっている。

 第一通信隊の教室を覗くと頭を抱えタブレットとをじーっと見ているミライの姿があった。

 サポート科の役目は情報の整理と収集、実践時のナビ、ドレスの状況をメカニックに伝えること。それに多様なデータ収集がある。未熟なマスターをサポートする場合には戦略を一から考えなければならない。

 マスター、メカニック、サポートの中で常に忙しいのはサポート科と言えるだろう。

「ミライ、こっちきて」

「ステラ! ちょうどいいとこにきた! ステラにしか頼めないことがあるの!」


 半ば強引に連れてこられたのは試作機開発機がおかれているβ格納庫だった。

 奥のほうには布で隠されたドレスらしきものがあった。

「ステラってマスター科でかなりの腕前だよね」

「自分じゃどうかなわからないけど一応5番目らしい」

「ならきっと大丈夫。――これを操縦してほしいの」

 布を取るとそこにはグレーのスカイドレスがあった。

「見たことないけどなんだか量産型っぽいね」

「量産を想定されたドレスだよ。警備会社が使うためのもので青空学校を卒業した生徒が軍や管理局以外にいけるように今のうちにテストしてるみたい」

 海原や大地も同様だが、青空航空科学高等学校の6年制を修了した者の選択肢はそこまで多くはない。

 一つは青空航空防衛軍への所属。

 二つ目は治安情報管理局

 三つ目は青空航空科学学校の教師や関係者。

 四つ目にアクロバット飛行チームやフライトレースチームなどの業界。

 その中で新しく追加しようとしているのが町や都市に密着した警備会社の設立だ。

 今は治安管理局がそれを担っているが範囲が広すぎて対応が追い付いていない。

 ならば、各地に配置することで隅々までカバーしようと警備局を作ろうと考えられていた。

 スカイファイターも同様だ。

「これは先行試作機のスカイドレスのパトフライヤー。ヘッドの耳部分が光って警告するんだって」

「ふ~ん」

 ステラはミライの話を聞きつつすでにパトフライヤーを身に纏いシステムを起動させていた。

 アイシールドが普段使うものより大きくマイクが右耳のカバーからぐいっと伸びている。

 Vスラスターはひとつのためワンオフ機などには速さの上では敵わないが二つのモードが搭載されており一つはオフェンスモード。一時的に加速力を上げて瞬時に相手を制圧するモード。

 二つ目はディフェンスモード。相手の攻撃に対して自動的にエナジーシールドを展開し攻撃を防ぐ。さらに大量のエネルギーを消費すれば自身の周りにあるものを守れるほど大きなシールドの展開ができる。

「武器は三式回転式銃と警棒。レーダーはNタイプ。Vスラスターは一応パトフライヤーオリジナルだけどベースとなったのはベーシックスカイドレスの物。だから互換性があるの」

 三式は三世代めということであり三世代は現行のものである。

 Nタイプとはナビゲートがマークした相手をレーダー上に映し出すタイプの物だ。 

 名前を聞いてもいまいちわからないステラはとりあえず動かし感覚を確かめる。

 すると、普段使っているものと比べ違和感を感じた。

「ん? なんか軽い気がする」

「たぶんアシストが聞いてるからだと思う。今回は切っちゃっていいよ」

 モード切替や着脱などの操作をする場合は手首にある小さなパネルを操作するか音声認識、もしくはアイシールドの映像に対し目の動きで操作をする。物によっては脳波コントロールできるものもあるがまだ量産はされていない。


 試験飛行を行うために格納庫の外に出た。すると、上空にはスカイファイターが三機が模擬戦を行っているのがみえる。少し離れたとこに監視役のスカイファイターが飛んでいる。

「せっかくステラに飛んでもらおうと思ったのにあれじゃあ危ないなぁ」

「いいよ。あれってたぶん1年でしょ。動きが雑だし。やること済ませて戻ってくるよ」

「ステラ……?」

 ステラはいつもよりも若干冷たい声色で空へと飛んだ。それがミライに対してではないことはわかる。しかし、その理由はミライにはまだわからなかった。

 ミライはヘッドマイクを装着しタブレットでドレスの状態を確認しつつ指示を送った。

「最高速と加速力、それに旋回と減速、あとは武器を使ってみて」

「うん。じゃあ、あれより上にいくね」

 あれとは3機のスカイファイターのことだ。加速しつつ模擬戦を横切るとスカイファイターのパイロットから通信が入った。

「おい! あぶねぇだろう女!」

 乱暴な言い方が耳元で響く。

 しかし、ステラは非常に冷静に答えた。

「大丈夫。そんな雑な動きじゃぶつからないから」

「いったなお前! 機動力あるからって調子乗んなよ」

 スカイドレスのマスターとスカイファイターのパイロットは犬猿の仲。

 何がとは言わないがなぜか昔からの流れで争うことが多い。

「はいはいちょっと待てって。マスターが少し乱暴に出てきたがシデンも口が悪いぞ」

「そうは言ってもこちとら模擬戦中ですよ。あとから出てきたやつに邪魔されちゃやる気も削がれるってもんです」

「まぁ、わからんでもないが……。わかった、こうしよう。お互いに謝るのが不服だろうからここは正々堂々実力の差で決着をつけるてのはどうだ?」

 ミライは慌てて通信に割り込んだ。

「ちょっとまってください! いまその子が着てるのは試作型なんです! 傷つけるわけには」

「ならシミュレートモードにしよう。それくらいは搭載されてるだろう」

「基本モードなのでありますけども……」

「それとも君は友達のことが信用できないかい?」

「う……。そういう言い方はずるいですよ。いいです。うちのステラは強いですよ!」

 ステラという言葉に先輩パイロットが少し反応した。

 ステラもパイロットの声にどこか聞き覚えがあった。

「シデンとステラで一対一のシミュレートモードによるバトルを開始する。周りの物を使うのは一切なし。この空域のみで戦ってくれ」

 スカイドレス対スカイファイター。

 1年同士の戦いが始まろうとしていた。

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