第12話 私だけのオリジナル

 今朝まで降っていた雨は完全に止み、太陽が雲から顔を出し始め外は湿気と暑さが悶々としているお昼頃。

 訓練をしながらサマーフェスティバルの準備を進める多忙な時期にステラは教師に呼び出された。

「おー来たか」

 そこにいたのはメカニック科の教師とサポート科の教師。それにマチルダだった。

「まぁ、そこに座りなよ」

 メカニック科の教師であるマコトは青色のつなぎに帽子を深くかぶりガムを噛みながら座るように指示した。

「今日はステラの成績と実績を評価して人足先にワンオフ機の話し合いだ」

「ワンオフって……えっ? あの、自分だけのドレスってことですか?」

「当たり前だろう。それ以外に何がある。いつまでも借り物のドレスじゃあ味気ないだろう。自分だけの最高のドレスで踊りたいだろう」

 ステラは嬉しさのあまり言葉を失ってしまった。

「あの、えっと、な、何から手をつけましょう!」

「まぁ、慌てるなって。そこまで喜んでもらえるとこっちまで嬉しくなってくるな」

 マチルダも普段のステラからは想像もできないような動揺と嬉しさが伝わってクスクスと小さく笑っていた。

「まずはこのデータを見ろ」

 モニターにはステラが今までドレスを扱ってきたさいのデータが表示された。

「ステラはドレス本来の想定されたエネルギー限界よりも多く滞空してることがある。それに想定された機動力よりも大幅に自由に動き回る。そこから考えたのがステラには尖った特徴を持ったドレスよりなるべくなにも考えず自由に飛べる方がいいんじゃないかって」

「……」

「あー、だめだったか?」

「最高です……」

「なんて?」

「それ最高です!! そうしましょうよ!!」

 ステラにとって大事なのは空を自由に飛び回ること。スターライトもベーシックドレスもエネルギー残量を気にしながら常に飛んでいたため素直に空を楽しむとこができていなかった。

「じゃあ、それで進めていこう。色は何が――」

「青がいいです!」

「即答だな。でも、確かにステラと言えば青のイメージがある。よし、それで用意しよう。また新しく要望があったらスマートギアに連絡をくれ」


 ウキウキ気分で部屋を出るとミソラが外で待っていた。

「ふふ、ステラにしては感情だだ漏れで嬉しそうね」

「あ、いや! まぁ、確かに嬉しいことがあったけど。ミソラも呼ばれたの?」

「うん。もしかしたらワンオフ機の話しかな」

「もしそうだったら色はどんなのにするの?」

「秘密。実際に空で見せてあげる」

 ミソラは部屋のなかに入っていった。


 ベーシックドレスを借りにウララとリリーカと共に格納庫に行くと何やら揉め事が発生していた。

「だーかーらー! これは先に私たちが手を付けたんだから私たちが使うの!」

「あんた1年の癖に生意気だね。どうせ盛り上げるのは上の学年なんだから今年ぐらい大人しくしててくれる?」

 どうやらカコと3年のマスター科の生徒とであるものを奪い合ってるらしい。

「どうしたのカコ?」

「あー、いいところにきた。聞いてよステラぁ。私が先生に許可とってこのドリルを借りに来たのに先輩がさぁ」

 すると、先輩が言った。

「第一整備なんだから作ればいいじゃない」

「こちとら課題の方の製作もあって忙しいの! それに既存のものでこと足りるならわざわざ作らないし!」

 お互いに一歩引かずにドリルを取り合っている。

 ドリルというのも工具ではなくドレスの近接武器兼採掘用のものだ。

「だったら、1年と3年で勝負すればいいじゃありませんの?」

 リリーカの提案にみんながピタリと止まった。

「古来より力があるものが土地や物、場合によっては人さえと所有してきました。さすがに野蛮ではありますが、お互いに使いたいという熱い気持ちがあるならば、決闘という形で白黒つければいいですわ!」

「1年にしては面白いこというね。その話に乗るわ!」

 ルールは1対1のベーシックスカイドレスによるペイント戦。

 相手のドレスを汚すことができたら勝利だ。

 問題なのは1年のマスターが3人いる状態で誰を出すか。

「私! と言いたいところですが以前の模擬戦で肩を怪我してしまいまして……。完治までなるべく動かすなと言われましたので今回はお二人に譲ってあげますわ!」

「あー、3年相手か……」

 ウララの実力はたしかなものだが模擬戦での活躍不足と見事に罠にはめられたこと、クルミに完全敗北していることがまだ気になりあまり前向きではなかった。

「私行くよ。相手のドレスを汚せばいいんでしょ?」

「そうですわ」

「ならやりようはある」

 すると、カコがベーシックドレスのプログラムを弄っていた。

「ステラ用に動きをあわせるね」

「私用?」

「うん。ステラは縦横無尽に空を駆けるでしょ。だから、エネルギー効率を良くしたの。でも、最高速は相手より下がるし加速も瞬間的には速いけど三秒もあれば相手に詰められるから気をつけて。でも、ステラだけのオリジナル仕様だからきっと使いやすいよ」

「私だけのオリジナル……。いいねそれ。がんばるよ」


 学校のグラウンド。

 どこから情報が伝わったのかギャラリーがすでに集まっていた。

 VⅠベーシックを身に纏った二人がグラウンドの中央で5メートルほど感覚を開けて立っていた。

「私は3年のミコト。あなたのことは知ってる。青い閃光のステラでしょ?」

「私そんな異名ついてたんですか……」

「異名ってのは一人歩きするものよ。まぁいいや。ルールはペイント弾での戦闘。初期武器はハンドガン一丁のみ。武器は二分ごとにグラウンド中央に1つだけ配置される。負けた方がドリルを譲ることとペイントの掃除ね」

「いいですよ」

「じゃあ、開始ね!」

 急接近するミコトに対してステラは真上へ浮上した。

 下からハンドガンで狙うが縦横無尽に動くステラに狙いが定まらない。

「チッ、よく動く!」

 ステラは今までよりも直感的に動くドレスに驚いた。

「これなら……楽しく飛べる!」

 ハンドガンを手に取り戦闘体勢へ。

「私が勝つ!」

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