第10話 スカイドレスVSガイアドレス 3

 スナイパーに狙われないように高度を維持してウララが飛んでいると突如アラート音が鳴り始めた。

「ウララさん! 9時の方向!」

 急に飛んできた銃撃の嵐だったがナビゲートのおかげで間一髪で回避し。しかし、また少し移動して同様に銃撃の嵐が襲ってきた。

「もしかして二人行動で同時に撃ってるのか?」

 遠くから見ていたクルミから通信が入った。

「銃は2丁だったね。マシンガン一つであんなには撃てないよ」

「数撃てばあたるってやつ? そんな上手くいかないっての。クルミはまだスナイパー見つけられないの?」

「全然……。でも、低空で戦闘を行えばしびれを切らして降りてくると思うからいったん無視していいよ」

「りょーかい」


 クルミが岩陰から地上に降りると甲高い音が岩に反響し近づいてくるのがわかった。

「どこ!?」

 音が反響しすぎてうまくとらえることができない。さらにレーダーにも映らない。

 ライフルを収納しナイフを構えるが相手は周辺を動き回りこちらをかく乱している。

「位置は把握されてる。おそらくレーダーのかく乱か。まったく……、レーダーってあまり頼りにならないなぁ」

 ジャミング兵器の種類が多いためにこの世界においてはレーダー兵器を使うことが難しい。そのためスカイドレスやガイアドレスなどの有視界戦闘も行えるものが開発されたのだ。

「スモークを焚いて一旦身を潜めるか」

 その瞬間だった。

 甲高い音は後方から急速接近。後ろを振り向くが自身の出したスモークの影響で視界が悪くなりまだ視界情報が更新されてないために自身のスモークが逆に視界を奪った。

「これでまず一つ!」

 長いナイフのようなものでスラスターをにダメージを入れられ続く攻撃で脚部の浮力を制御する場所がやられた。

 動けなくなったクルミは恐るべき奇襲により一瞬で倒されてしまった。


「クルミの位置情報が消えた……。やられたのか」

 ステラは低空飛行しながら状況を把握していた。

 少し広くなったとこにでるとそこで一人のガイアドレスを見つけた。

 重厚なフォルムは最初の段階で見たもの中にいなかったためにスナイパーと思ったがその類の武器は身に着けてないように見えた。

「あら、移動中だったのにバレちゃったか」

 肩にはガトリング腰にレールガン。両手にはマシンガン。背中にはまだ二門の射撃できる武器があった。ガトリングと切り替えて使うのだろうとステラは理解した。

「見つかったからには倒さないとね!」

 ユリカはその場を動くことなくいきなり射撃してきた。

 異常なまでの武器量はまさしく人間武器庫。

 広場を自由自在に扱いうまく交わしていく。

(まったく動かないところを見ると機動力はあまりないのかな……。こっちは一人少ないけどスナイパーが降りてこなければいないのと同じ。ここは試してみるしかない!)

 ステラはユリカを中心に円を描くように避けていたがいきなり相手の方向へと向かっていった。2丁のハンドガンを構えている。

「銃弾の嵐が怖くないの!」

 ユリカはさらに肩のガトリングを放った。

 射線を意識しずらしながら進むことでたとえどれだけ武器があろうと相手が一人ならステラにはあまり効果はなかった。

 腰のレールガンが射撃体勢に入ってることを確認しハンドガンを2発撃ってスナイパーに狙われない位置まで浮上。

「くっ~、結構やるなぁー!」

 ガトリングからショットガンに変更しユリカは移動した。

 その速度は今まで見てきたドレスよりも鈍足なものだった。

「逃げられたら厄介だ。さっきウララを狙ったのもおそらくこの人だろう。ここで叩かないと!」

 追いかけようとすると甲高い音と共にモエががやってきた。

 長いナイフはまるで刀のような形をしておりこの現場にいる誰の武器よりも長い。

 ステラはすぐにハンドガンを向けるがモエのナイフの距離に入っており破壊されてしまった。

「冷静な把握能力に銃を向けられも動揺しない精神力。ララァが言ってた子か」

 モエは真っ白な髪をなびかせ表情一つ動かずアイシールドの下の目は見開くようにステラを捉えていた。

 普通はアイシールドに映る情報を処理するために目が少しは動くものだがモエは一切動かさない。情報を処理しながら目の前の相手だけを見つめている。

 武器をナイフに切り替えアンカーを放つタイミングを見極めるステラに対し怒涛の攻めを見せるモエ。

 仲間を逃がしさらに一人倒そうとしていた。

 その時、ウララから通信が入った。

「スナイパーが地上に降りた! これから攻撃する!」

 その直後にウララがいる方向から複数の爆発音が鳴り響く。

「ウララが罠に巻き込まれて戦闘不能になっちゃった」

 ミソラの通信はあまり聞きたくない内容だったが現実を受け止めるしかない。

 ウララがやられたことも良くないがそれよりもミソラが現在ウララのほうにいるために援護が望めないのはもっと最悪だった。

 逃げた一人が最大火力で攻撃をすればステラとミソラを同時に倒すことも可能だ。それに相手はまだ数の上で2人も多い。3人がステラとミソラをアンカーで動きを封じ仲間ごと最大火力で倒すことだってできる。

 なんとかして逃げたい一人追いかけたいと思っていたステラ。

 しかし、モエの攻撃があまりにも激しく行かせてくれない。


 まずい状況へと沈んでいく中、通信が入る。

「私が逃げた一人追いかけますわ!!!」

 ステラの上空を飛んでいくスカイドレスの姿。

 それにこの喋り方。

「リリーカ!?」

「5位の代わりに優秀な私が駆けつけてあげましたのよ! 存分に喜びなさい!!」

 リリーカの操るスカイドレスは機動力と防御に特化したドレス「アイアンマックス」。

 攻撃を受けながらも相手に一撃を与えるバスターナックルを装備していた。

「うわぁ! 追いかけてきた!」

 ユリカは逃げながら攻撃を仕掛けるがアイアンマックスの装甲が光るとすべてを周りに受け流していく。

「正義の鉄拳を受けなさい! バスタァァーナックルゥ!!!」

 リリーカの攻撃は思いっきりユリカの胴体に直撃そのまま数メートル飛ばされ何とか着地を成功させるがガイアドレスの機能が停止した。

「これが真の強者というものですわ!――もう一人いましたわ!」

 罠を仕掛けるミクルを発見。あからさまに罠にかけようとしているのがわかるがリリーカはお構いなしに突っ込む。 

「まだ左手がありますのよ!!」

 リリーカが迫ってきた瞬間に周りの岩が爆発し一斉に崩れてきた。

 さっきはこの罠によりウララは動けなくなってしまった。

 しかし。

「なんのこれしきぃ!!」

 装甲が再び光り始め岩をどかし一気にミクルへ。

 同様にバスターナックルを決めミクルを倒した。

「さぁ、次は誰ですの!」

 だが、ここまで全速力できたエネルギーと光る装甲にバスターナックルの連続使用の弊害でアイアンマックスはエネルギー切れを起こした。

 嵐のような一瞬の出来事だったがこれで戦況2対2だ。


 ミソラはスナイパーのもとへとやってきていた。

 ウララを犠牲は近くで瓦礫で動けない状態で拗ねていた。

「自分が一人やりたいからって……。せめて私助けてから行ってよね!!」

 ウララは瓦礫からを救い出せば実際のところはまだ戦闘は可能なのだがミソラがまだ一人も倒してないという理由から一人でスナイパーのところに向かったためウララは一人下半身が瓦礫に埋まった状態で暇を持て余している。

 ちなみに重力制御装置のおかげでエネルギーが続いている限りは瓦礫など密着せず肉眼で見えないほんの少しだけ浮いている状態となっている。

 しかし、どけるのにもパワー必要でスラスターの下の部分が一緒に埋まってしまい故障したため自力で抜け出せなくなっていた。

「スナイパーさん。私とやりましょう」

「あなた、ララァが言ってた通り魔か」

「知ってるの?」

「いきなり現れて駆動系斬られたって叫んでたよ」

「コンビネーションというやつよ」

「ふ~ん。なのに君一人だよね。もう一人は?」

「この戦いにはついてこれないのでおいてきたの」

 スナイパー少女の名はロロ。黄緑色の髪で装甲は周りの乾燥した土の色に合わせて変化している。

 お互いに軽く自己紹介を済ませるとロロはスナイパーを捨てた。

「この戦いが模擬戦だって理解してるんでしょ」

「はい。ララァという方倒した時点でなんとなく」

「倒したのステラって子でしょ」

 お互いにナイフを構え体勢を整える。

「まぁ、どっちでもいいや。僕は早く帰りたいからすぐに終わらせるよ」

「その意見には同感ね!」

 ミソラが一気に加速しロロを仕留めようとすると、ロロはナイフではなくアンカーを射出してきた。

 ミソラはギリギリで回避してアンカーを切断。ロロは捨てたライフルを即座に取り撃ったがシールドで防がれライフルを破壊された。

 たった数秒の出来事だった。

「やーめた! 僕は降参するよ」

 自らガイアドレスの機能を停止させ脱ぐと近くの岩の上に座った。

「君的にはこうされるのが一番いやでしょ?」

「……」

「だから実際に負けたけど少しだけいじわるしたの。ごめんね」

 普段のミソラは穏やかでマイペースな子だがスカイドレスを着ると好戦的で自分のやりたいことをやり、相手に力を認めさせようとする。

 ゆえにライフルを破壊した後に相手が驚くさまを見ようとしたのだが、ロロはやる気をなくし自ら敗北を認めた。

 全力のぶつけ合いで力を認めさせたかったミソラはこれをされるのが一番いやだった。

 一瞬怒りの表情を浮かべるもすぐに冷静になりミソラもスカイドレスを脱いでロロの隣に座り一息ついた。

「落ち着いた?」

「ええ」

「僕は楽に勝ちたいからスナイパーを選んだんだ。君とは真逆だよ」

「そうみたい」

 二人は戦いが終わるまでそこで話していた。


 最後に残ったのはステラとモエ。

 ステラはスモークを使い果たしハンドガンを壊れアンカーやナイフは使う隙がない。さらに、仲間たちが全員戦闘不能になったことで目の前の相手にだけ集中すればいいためにモエの動きはさらにキレを増していた。

「このままじゃ……」

 白兵戦ではあまりにも分が悪い。

 しかし、仕留めないことには戦いは終わらない。なんとか一撃を決めなければならない。エネルギーも徐々になくなっていきシールドに使う余裕はない。

 その時、ステラはある言葉を思い出した。

 以前、誰かがどこかで、優しく語りかけてくれた言葉を。


「ステラ、不安なことや困ったことがあったら空を見るんだ。青空はいつもそこにいる。どれだけ雲に覆われてもその上には青空があるんだ。そして、星空もね」

 

「空を……。空へ行くんだ!!!」

 スターライトのスラスター出力を全開にし空へと浮上した。

 眩しいほどの太陽に真っ白な雲。

 そして、どこまでも続く青空。

「私は空へ飛ぶ。空から希望を届けるんだ!」

 モエは岩を上りたかいところまでやってきたが刀では攻撃は届かない。

 片手にハンドガンを構えようとした時だった。

 ステラは全速力で急降下。モエが反応する暇もなく体当たりしそのままさらに上空へ。

「な、なにをする!」

 モエはたまらずステラのスラスターを切ろうとしたがステラは言った。

「こんな高いところで私のスラスターを切ったらどうなると思う?」

「……はっ!? まさかそれを狙って!」

 ステラはモエを掴んだ状態で高く高く大空へと飛んだ。

 お互いにダメージはない。

 しかし、この状態でもしスターライトのスラスターが壊れてしまえばモエは地上に着地する手段をもっていない。

「あなたが降参するまで私は空を飛び続ける! もし負けを認めるならすべての武装を解除して!」

 本当はステラにそんな余裕はない。

 エネルギーも長くはもたない。

 だが、唯一モエの高速移動を止める手段だった。

 ステラのエネルギーの状況など知らないモエは判断に迷っていた。

 確実に倒せるのにそうすれば自分もやられてしまう。

 その時、ステラのスカイドレスからアラート音が鳴る。

「高度限界か!?」

 モエは恐怖した。このまま二人同時に落ちてしまうかもしれないと。

 ガイアドレスを着てはじめてモエは死の恐怖を感じた。

 モエはおとなしく武器を捨てた。

「私の負けだ。おろしてくれ……」

「あー……」

「どうした?」

「ごめん、今の高度限界じゃなくてエネルギー切れ……」

「はぁ!? それじゃここから」

「下に参ります……」

 地上からは捉えられない位置から二人は落下し始めた。

「ど、どうしよう……」

 ステラが考えているとモエは涙目でステラに抱き着きどうにかしろ言わんばかりの目で見つめていた。

 すると、さらに上空から流れ星のごとくスカイドレスが現れた。

 黒い装甲に青い髪をした女性がそれを操っていた。

「スターライトのエネルギー効率はあまり良くないのに、よくここまで飛べたね」

「あなたは?」

「元青空学校の生徒だよ」

 どこか落ち着くような声色にステラは魅了されていた。

 

 無事に二人を地上に降ろすと挨拶もなしに飛んで行った。

 凄まじい速さで上空へと向かった。

 それと入れ替わりでソレイユたちが駆けつける。

 すべての事情を両陣営に話し文句もあったものの無事にことは収まった。

「ステラ……」

 モエが手を差し伸べてきた。

「握手を。また手合わせを。それに普通に話してみたい」

「うん。また会おうね!」

 青空航空科学高等学校と大地陸行科学高等学校の大規模な模擬戦はスカイドレスが勝利した。

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