第6話 海上音速バトル

 海上ステージは遮蔽物のない海の広がるステージ。

 そのため設置系や隠密を主とした武器をボックスから引いてしまうと相性が悪い。ボックスからは

 シミュレーションがスタートしまずステラがとった行動は意外なものだった。

「さぁ、ボックスから何が出るかなぁ~。ってあれ! ステラちゃんどこ行くの!?」

 ステラは開始と共に後方へと全速力で飛んで行った。 

 クルミのレーダーの範囲から消え行動を悟られないようにしたのだ。

「あらら、遠く行っちゃったよ。でも、スナイパー引いちゃったもんねぇ」

 クルミはある程度近づき射程ギリギリから狙う作戦に出た。


 一方ステラはフィールドのエリア限界まで来ていた。

「ここまでがフィールドか。とりあえずこれを開けて武器をゲットしないと」

 その時、解放しようとしたボックスに弾が飛んできた。

 ボックスは傷一つなく微動だにしていないが一歩間違えればステラに当たっていた。むしろ、レーダーの範囲外からかなりの精度狙ってきたクルミにステラは驚きを隠せなかった。

「武器は……爆弾か。使いづらいけど仕方ない!」

 ステラはフィールドの端のギリギリを飛びながら少しずつ浮上しつつ相手の射程外へと逃げた。

 レーダーで捉えてないということはスコープ越しに捉えていたことにある。ならば移動し続ける限り正確に狙われることはない。

「考えたねぇ。じゃあ、こっちも新しいボックス引いちゃおっかな」

 ボックスは各地に設置されておりボックスの指定された場所に数秒手をかざすと解放される。場合によっては解放中に攻撃されることもある。

 取っ手を掴むことでボックスを移動させることもできるが基本的に遮蔽物のないこのフィールドでは移動させるメリットはあまりない。

「さぁ、次の武器は何かなぁ~」

 クルミはスナイパーを所持したまま二つ目の武器をゲットした。

「近距離のナイフね。スラスターを傷つけるには使えるか」

 ナイフを腰に据えた。

 遠距離と近距離の武器を手に入れたことでクルミがかなり有利に。

 それに対しステラは五つセットの小型爆弾。威力はそこそこだが設置型であるためにこのフィールドでは扱いづらい。空中や水中に設置でき、投擲や投下もできる。タイマーをセットして起爆させるタイプのものだ。

「とりあえず遠距離では戦えない。何とか近づいて攻めないと。それに新しいボックスも」

 少しずつ近づくステラに構えるだけいいクルミ。

 誰が見てもステラの状況は不利だった。

 しかし、クルミが待てどもなかなかステラはやってこない。何分経ってもだ。

 いい加減しびれを切らしたクルミが攻めようとした瞬間。

 レーダーにはステラの反応が表示される。

「最初の場所から真逆に回ってたのか。そりゃ時間がかかるわけだね」

 レーダーのアシストを受けることでスナイパーはある程度の場所を知ることができる。

「私よりも高度が低い。上から狙えちゃうね」

 クルミはしっかり狙いを定めステラを撃った。

 ステラのほうには攻撃アラートが鳴り響く。その瞬間、別のボックスから解放したシールドを展開した。

「ポイントシールド! これは厄介だなぁ」

 ポイントシールドは使用者の前面に対して透明のシールドを張る。そのシールドに触れたポイントにのみだけエネルギーを消費して防御をするものだ。

「でも、そこまで長くは持たないよね!」

 低空飛行で迫ってくるステラに数発撃ち込むとシールドはガラスが割れるように破壊された。


 観戦してるウララとミチはステラの動きに違和感を感じていた。

「ステラは何か飛んでもないことをしようとしてる気がする」

「ウララもわかる? 私も同じこと考えてた。空が大好きなステラが海をスレスレで飛ぶなんてなんだか窮屈な気がするんだ」

 二人のそんな会話を聞きミソラはステラに興味を持った。


「このままだとスナイパーじゃ狙いづらくなる。近接戦闘の準備をしないと」

 クルミはスナイパーからナイフへ武器をチェンジ。

 Vスラスターが二つ付いているドレスのため最高速は通常のベーシックドレスの約二倍。加速力は人体への負担と重力制御装置の兼ね合いで通常のVⅠ型と変わらないがステラはすでに最高速。ここまで接近されてしまうと停止状態のクルミにも不利なのだ。

 唯一の救いはナイフがあること。これがクルミがまだステラに対して対抗できる手段。

「さぁ! かかってきな!」

 ステラは急速接近。一気に高度をクルミよりも上げた。

「攻撃じゃない……? いや、違う!?」

 太陽を背にしたステラは黒い物体を二つ落とした。

「なにあれ?」

 疑問に思ったのもつかの間タイマーが見えたことでそれが爆弾であることを理解した。

 即座にスナイパーを片手で構えスコープを使わずに爆弾を撃ち抜く。

 爆弾はひとつは通り過ぎるときに投下、もう一つは上へと投げていた。爆発の煙の中からもう一つの爆弾が現れる。ギリギリスナイパーの装填が間に合い二個目の爆弾も撃ち抜いた。

 爆風で視界が悪い中、レーダーに目をやるとターンしてきたステラが急速接近。

「取ったぁ!!」

 ステラはクルミに攻撃するのではなく、片手で持っていたスナイパーを横取りして通り過ぎた。

「やるじゃん! こっちだって負けないよ! Vスラスターフルブースト!!」

 通常の加速ではVⅠもVⅡも人体のことを考えそこまで違わないが、VⅡに搭載されているフルブーストシステムを利用することで加速も二倍にする。

 すぐに追いかけてきたクルミを確認しつつステラは時間を確認した。

 高度を低く保ち再びフィールドを駆け巡る。

 ステラは少しだけ減速してるためクルミが徐々に追いついていく。

「このまま切っちゃうよ!」

 その時である。

 海面で爆発が起きた。ステラの設置した爆弾だ。これでステラは爆弾を三つ消費。

 そのあとももう一つ爆発したがクルミはもろともせず追いかけてくる。残りの爆弾はひとつ。

「スラスターまでもう少し!」

 あともう少しでナイフが届きそうなところでステラは一気に減速。真上へ急上昇した。

「えっ!?」

 ステラがいた場所には最後の小型爆弾が配置されていた。さっきまで見えていなかったのはステラが正面にいた影響でちょうど死角になっていたからだ。時間を常に気にしていたのはこの小型爆弾がジャストタイミング起爆するのを計算していたため。

 ステラの思惑は見事に成功した。

 しかし、小型爆弾の一撃で壊れるほどスカイドレスはやわではない。

 クルミも少しひるんだがドレスの操作に異常が出るほどのダメージはなかった。すぐに真上に飛ぼうとした瞬間だった。

 視界が鮮明になり上を見るとそこから極太のビームが飛んできていた。

「うそっ……!?」

 クルミは動揺しつつもドレスの搭載されてるエナジーシールドを展開。

 ポイントシールドと違いドレス本体からシールドのエネルギーを供給するためドレスの残留エネルギーに依存する。

 クルミはありったけのエネルギーを消費してなんとか防ぐが完全防御には至らなかった。

 ビーム兵器はA級以上の武器だ。ドレスごと人を包み込めるこれだけの極太ビームならS級武器ぐらいしかない。

 だが、シミュレーションにおいては実戦のものよりも劣る。威力と引き換えに砲身は一度しかその攻撃に耐えられない。二度目はないのだ。

 それを知っているクルミは煙が巻き上がるドレスの全てのエネルギーをスラスターに注ぎ込む。相手がどこにビーム兵器を隠してもっていたかという疑問は残るがあとはナイフで全力アタックをしかけるしかない。

 真上に飛び上がろうとしたその瞬間。

「これで最後ッ!!!」

 アラート音が鳴り響くと共に目の前にはステラの姿。急降下してきたのだ。

 だが、武器をもっていないはず。そう思ったのもつかの間。

 ステラは右手に箱型の物体をもっており、それで力強くスラスターを叩き割った。

 この瞬間、勝敗が決まった。

 4位のステラと2位のクルミの戦いはステラに軍配が上がった。


 二人がマシンから出てくると観戦していたみんなは拍手で出迎えた。

「私の仇を取ってくれたね。次は私とステラが戦う番だよ」

「もう最後まで目が離せなかったよ。ステラはシミュレーションでも無茶するよね」

 ウララはやる気をみせミチはホッと安心していた。

 クルミはさっきの戦闘で気になることを問いかけた。

「なんであんなビーム兵器をもってたの? 追いかけてるときは見えなかった。それに最後何で攻撃されたかわからないんだよね」

「実はビーム兵器は空中にあるボックスの上に置いてたの」

「おいてた?」

「うん。ボックスって各地に配置されてる場所から動かなくて取っ手を掴んだ時だけ動かせるでしょ? だから、あそこまでおびき寄せて爆弾で怯ませてから確実に当てようと思ったの」

「じゃあ、最後の攻撃は?」

「あれもボックスだよ。ボックスってスナイパーの銃弾をもろともしないほど固く設定されてるみたいなの。だから、それならスラスター壊せるかもと思ってビームが外れたりしたときのための手段だったってわけ」

「ボックスを武器にするなんてそんな発想なかったよ」

「たまたまスナイパーがボックスに当たったの見て思い浮かんだの。スナイパーの一撃のおかげだね」

 海上という遮蔽物のないと思われた場所でのシミュレーション戦闘における唯一の遮蔽物がボックスだった。偶然起きた出来事からの発想。

 クルミは今回の戦いにおいて完全に自身の負けを認めた。

 それと同時に1位のミソラはさらにステラに対して興味が沸いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る