8_人望もカリスマも先天的な才能が全てかもしれない ④
♪
翌日。
明日までは午前授業で終わりなのでさっそく放課後の時間を有意義に使うとしよう。
「トイウワケデ――我ラッ!」
校門前で俺と新山は足を屈伸させて両腕をクロスさせて親指を立てた。
「「南関東ゴッドスターズッ!!」」
ふっ。かっちょよくゴージャスに決まったぜ。校門を通る生徒どもの視線を釘付けにしてるぜ。これが俺の求心力、カリスマ性なんだよな。
新山が周りの空気を
「恥ずかしいからやめてください……」
一緒にポーズを決めなかった高岩が両手で顔を覆って唸っている。
「ナンダァノリ悪ィナァ高岩」
中坊の貴様には難易度が高めだが、そこを乗り越えてこそお前は俺に近づけるんだぞ。何を足踏みしてるんだよ。
「気がつかないんですか? お二人を見る観衆の白い目を。凍てつく視線を」
「ハッハッ、ヲ前ハ面白イコト言ウナァ」
そんなに面白くない冗談だがまぁ特別出血大サービスで笑っといてやる。
「平原さんたちは全然笑えませんよ」
一向に真顔を崩さない高岩。何がそこまで奴を白けさせるのかは分からん。
「コレデ我々ヘノ投票数ハウナギ上リダナ」
「んなわけないでしょ。そもそもなんで僕と新山さんがわざわざ時間を割いてこんなバカ高校まで来なきゃいけないんですかね? 拷問ですか?」
「全てはミスコンで勝つためだ。我慢するしかない」
新山は現実を受け入れているようで、俺に変わって高岩に説明した。
「なに新山さんまでノリノリでやって――――顔真っ赤じゃないですか……」
「恥ずかしさに耐えてやったんだ。放っておいてくれ」
「一番痛々しいパターンですね……」
新山に憐みの表情を向ける高岩。
「エー、ツーワケデキタルミスコンニハ、我輩平原圭ニ投票ヲヨロシクオ願イタテマツリマスルゥ~」
「お願いするならちゃんとした日本語で伝えるべきでは?」
今日の高岩はツッコミが多くてダルいぜ。
「コノ調子デ活動ヲ続ケテイクゾ。継続ハ力ナリダ」
「お前、よくその言葉知ってたな」
新山が変なところで感心しているが逆にバカにされている気がして不愉快。
いくら俺が天才といえどもミスコンは初参戦。ここはコツコツと生徒どもの好感度を上げて支持者を増やしていくぞ。
「田村くーん、ミスコン頑張ってー!」
「私田村君に投票するねっ」
「ありがとう、ありがとう」
心の中で意気込んでいると、女子生徒数人に囲まれている田村と会ってしまった。女子を
「ソコノ女子生徒タチ。今カラデモ遅クハナイ。田村カラ俺ニ乗リ換エナイカイ?」
「…………は?」
「えっ待って、なんなのこいつ」
女子どもは犯罪者を見るような目を向けてくる。
「私たちは田村君に入れるんだし」
「あんたには入れないから」
つれない女子どもだ。その塩対応がのちに後悔することになるんだけどな。
「マァイイ。アピールヲ続ケテ徐々ニ支持率ヲ上ゲテイク」
「支持率って……政権じゃないんだからさ」
田村が呆れたような
「俺ハ邦改在学中ニ内閣総理大臣ニナル。ソノタメノ予行練習ヨ!」
ミスコンは単なる学校行事に
「まだそんな
「高岩、ヲ前ハ俺ノ味方ジャネーノカヨ」
「いいえ違いますけど? 僕は自分の味方でしかないです」
高岩が意味不明な
「あんなのはともかく、田村君頑張ってねー」
「ありがとう~」
女子二人は笑顔で田村に手を振って下校していった。
マジで田村はモテるな。悔しいがそこだけは認めよう。俺と同じレベルのモテ男だと。
しかし――
「あっ、田村くーん! ミスコン出るんだってねー!」
「ミスターは田村君で決まりだね。はぁー、田村君と付き合える子が羨ましいなー」
「ははっ、俺はみんなに平等だよ」
田村はすり寄ってくる女子全員に笑顔を振りまいている。罪な男だぜ。何スカしてんだか。
ところで奴の本命は一体誰なんだ?
アイドルなんかが
それと同じ要領で奴に流れる票数を減らせれば大分楽になるんだけどな。
「おい平原。お前今日部活は?」
「ゲゲゲッ、ヲ前ハ沖山!? 生キテタノカ!?」
「勝手に故人にするなよ」
アピールの舞台を廊下に移した矢先で先月引退した陸上部OBの沖山とエンカウントしちまった。いや、お前引退してもなお普通に登場してくるのかよ。
「曲がりなりにも副部長がサボっちゃ部員たちに示しがつかないだろ」
「示シヲツケルタメニミスコンデ王者トナルノダ!」
もうお前は部長じゃないだろ。引退してまで俺に説教ムーブかましてくるのはやめろや。
「お前は副部長の立場として部活よりもミスコンを優先するのか?」
何言ってやがんだ。本来ならそんな愚問にわざわざ答えてやる義理もないんだが。
「ウム。ドチラモ甲乙ツケ
「どうせ一切天秤にかけずに即ミスコンを取ったんだろうけど」
沖山がいちいち図星を突いてきてうるせぇ。こいつうるせぇな。
いいじゃないかよ。内閣総理大臣への道が近づき、かつ俺がモテる証明ができる。更には永田大地と田村に現実を見せつけられる。こんなに美味しいとこ取りのイベントはなかなかないんだぞ。
「しかも他校の生徒まで無理矢理巻き込んで、いくらなんでも極悪じゃない?」
「善意ノボランティアニナンテコトヲ」
「いやいや、嫌々参加してるんだけど」
「僕受験生なんですけど。勉強時間どうしてくれるんですか?」
二人は無理矢理巻き込まれているような口ぶりで被害者ぶってきやがった。
「ヲ前等無駄ニ嘘ヲ
そうやってすーぐ周囲に同情を売ろうと目論むから一流の領域に足を踏み込めないんだよ、お前らはよ。
「嘘
やりとりを交わすことすら億劫なのか、新山はこめかみを掻いて適当に反応した。
「はぁ。お前って奴は……」
沖山もこめかみに手を当てて唸っている。頭痛なら早く家帰れや。
俺たちは沖山を放置して廊下をひたすら練り歩いた。
部外者の新山と高岩がいることもあってか、校内に残る生徒からは奇異の視線が向けられる。ふむふむ、いい具合に注目を集めているな。これで俺の話題が増え、投票数向上にも繋がる。
「ミスコンガ今カラ楽シミデ仕方ナイワ」
「俺は全く楽しみじゃないなぁ……」
「右に同じです」
ここではっきりと永田大地や田村を筆頭にバカなバスケ部に俺の格の高さってものを見せつけてくれるわ。
以前の乱闘では惜しくも敗北を
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