第7話 牛丼(ノブ丼)
あれからニーチェに行く頻度は減った。
オープンキャンパス、進路説明会、三者懇談。そして勉強。受験の準備は着々と進んでいた。それによるストレスも増え、僅かな時間を割いて見るリンの笑顔と美味しい料理だけが私を癒してくれた。
今日も笑顔で迎えてくれたリンは、珍しい獣が獲れたから楽しみにしててとウキウキで厨房に入っていった。
数十分後、リンはどんぶりバチを持ってきて私の前に置いた。
「暴れ牛を柔らかーく煮て、オリジナル調味料で和えて、ネリ米に乗っけた、ノブ丼!」
「おおお!」
それはまさに牛丼。だが玉ねぎのような野菜は入ってない、暴れ牛肉だけのシンプルなどんぶりだ。
「ネリ米って?」
「ネリ村で採れた麦を、聖水で練って蒸してある。」
なるほど、日本のお米のようなものとは違う…チネリ米だったか。
箸で肉をどけると、タレが染みたネリ米が顔を見せた。タイ米よりももうちょい細長く、タレがよく絡んでいる。
「頂きます。」
暴れ牛肉とネリ米を一緒に口に放り込む。
「んふぉ!?」
ネリ米がすごくモチモチだ。タレもよく絡んでいる。そして驚いたのはお肉の柔らかさ。どのくらい漬け込んだのか、溶けていくように柔らかい。少し粘り気のあるタレが肉と米によく絡んでいる。私は10分もしないうちにかき込んだ。
「美味しかったー。ご馳走様!」
私はいつも通り入り口にお金をおいてニーチェを後にした。
「毎度あり!」
元気なリンの声が店内に響いた。
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