第49話 ドア
リザはスタスタ歩いて行き、誰もついてきていないのに気が付くと振り返り三人に向かって叫ぶ。三人は座ったままリザを見送っていた。
「行くんでしょ。ついてきなさい。」ちょっとご機嫌ななめな様子である。
倫弥はレイとナズナにむかって『行くよ。』と言ったふうに頷く。
「どこに行くんだか。」そう言って倫弥は立ち上がりリザの後を追う。レイとナズナも倫弥についていく。リザは立ち止まって待っている。近くまで行くとリザはまた歩きだす。ちょっと距離を置くようにして三人はリザの後をついて行く。
「あの人は、リザさんは知り合いですか?」ナズナは倫弥に尋ねる。
「そんなとこかな。」倫弥は応える。
「綺麗な人だね。」レイは言う。
「ありがとう。」倫弥が代わりに礼を言う。リザは前を歩きながら一瞬振り返る。
「何してる人なんですか?」ナズナは尋ねる。
「ここの番と案内よ。」さっきまで前を歩いていたリザがナズナと並んで歩いている。倫弥は前を歩いている。ナズナとレイは驚いて一瞬足を止めるがすぐにまた歩きだす。
「なんの番をしているんですか?」リザの顔を見ながらレイが尋ねる。
「行き来する人の番をしてるの。この先に行っていいのと、そうでないのがいるからね。」リザのご機嫌はなおっているようだ。
「忙しいんですか?」レイが聞くと、
「忙しいわよ。」とリザが応える。
「どこまで歩くんですか?」ナズナが聞くと、
「この先の手前まで。」とリザが応える。
レイとナズナとリザは話しながら歩く。倫弥は話に入らず、ずっと前を歩いている。
「さあ着いたぞ。」と倫弥が立ち止まる。いつのまにか倫弥とリザの役割りが入れ替わっているみたいだ。しばらく歩いたがほとんど景色は変らない。
おもむろにリザは両手でなにか大きく重いものを担ぎ上げ、地面にドンッと置くような仕草をする。すると高い壁に囲われる。鉄筋コンクリートのような灰色の壁で入口も出口もない。見上げれば青い空。
リザは壁に向かい、壁をノックする。壁の向こうからノックを返す音がする。コンコン。木の扉をノックしたような音がした。
「取り込み中ね。」とリザは笑って振り返る。
「冗談よ。」そう言ってドアのノブを回す仕草をする。ドアが現れる。そして、リザがそのままドアを引いて開く。
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