エリカの章

第22話 鳶

 リンも風呂から上がってきた。

「かあさん、上がったよ。」

「わかったよ。」沙絵は本をテーブルに置き立ち上がる。

レイの部屋からは話し声。沙絵のシャワーを浴びる音。リンはテレビを消しソファーに転がり天井を見ている。

「リン、鳶を貸してほしい。」

「なにするの?」

「エリカを探す。」

「エリカって誰?」

「大事な人だ。リンも小さい頃にあってるぞ。」

「憶えてないよ。」

「小さかったからな。」

「いいよ。おじさんなら。『鳶もいいだろ?』危ないことしないでね。」

「わかってるよ。ありがとう。すぐ返すよ。」

「リン、布団で寝なさい。」母の声。

リンは眠ってしまったようだ。

「今何時?」

「10時40分。」

「かあさん、エリカさんって知ってる。」

「あなた、憶えてるの?」

「憶えてない。おじさん夢にでてきたから。言ってた。エリカを探すって。」

「なんでそんな夢。」

「教えて。誰?エリカって。」

「ちょっと待って。」沙絵は手の平で顔を擦りながら台所へ向かい、水を汲んで戻ってきた。リンの斜め向かいに座り水を一口飲む。「なにから話したらいいのかな。」

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