第18話 心霊デザイン研究部
「心霊デザイン研究部?見積もり無料?」
そんなタイトルの紙が貼られた部屋の前に立つ。
「あの、御堂さん、ここは?」
「見てわかんない、部室よ!ブ・シ・ツ、あーそれとコウマでいいわ」
木造校舎ならではの建付けの悪い引き戸をガタガタと開けて中へ入った。
「あっ、コウマちゃんお弁当持ってきたよ一緒にたべよ、あれ、野田君どうしたの?あっコウマちゃんと同じクラスか」
怪しげな置物やお札で飾られたインテリアの中央のテーブルで部員らしい女子が笑いかけた。
「何だウメちゃんと知り合いなんだ、じゃあ話が早いわね」
そこには朝に変態警官から助けてくれた佐藤ウメがいた。
「あれ、サトウメも来てたんだ」
後ろから声をかけてきたのは同じクラスの木瀬だった。
「あの、いったいここは何をする……」
僕の予想が正しければスピリチュアルな空間であるのは間違いない、微かにお香がたかれていて鼻腔を刺激する。
「勘の悪い子ね、部活に決まっているじゃない」
「それは分かったけど、心霊デザイン研究とは?いったい何をするところなんですか?」
「ふっ、この部活はね!」コウマのメガネが光る。
「人間の人生における霊的なトラウマや障害など心霊現象に悩む生徒、心の余裕を失って霊視に導きを求める人達を導き学校生活を充実したものにかえてあげる活動をしているのよ、いわば霊視による霊に邪魔されない生活をデザインしてあげる活動、まあほとんど恋愛相談とか多いんだけど、私が部長兼専属霊能者のコウマちゃん、と、その仲間たちね」
木瀬とウメが苦笑いして、
「いや、俺達ただの幼馴染だから、勝手に部員にされてるけど」
不満を述べるわりには楽しそうな木瀬だった。
「でも、コウマちゃんの心霊占い、ホントによく当たるんだよ」
ウメのお墨付きが出たわけだ。
「早速だけど、野田君、君に取り憑いているといったけど正確ではないわ、君と言うよりも家に憑いているの、そのオーラを纏って学校に来ていると言うわけ」
僕はコウマの言う事に心当たりがあり過ぎるので少しだけゾッとした。
この子は本物なのだろう。
「と言うわけで、とりあえず今日の活動は放課後に野田君の家へ幽霊見学と言う事です各自準備をお願いします」
何か訳の分からないうちにこの人たちが家にくる事になった。
「って、違うでしょ!急に言われても引っ越したばかりで片付いてないし」
「べつに気にしなくてもいいのよそんなの、そんな事より早く食べないと昼休み終わるわよ」
僕の意見など最初から聞く気など無いようだ。
木瀬がまあまあと肩をたたいた。
こうなれば、家にいる誰かの事を気付かれないようにしなければならない。
コウマはかなりの能力だが隠し通さないと気付かれる。
怖い気持ちも有るけどやはり家にいる何者かに興味があるのだ……でも、ウメと帰れるのはラッキーだと認めよう。
午後の眠たい授業を乗り切って校門に集合した。
みんな特に変わった道具とか持ってないので安心したのもつかの間。
「それじゃー幽霊屋敷にしゅっぱーつ!」
ほかの関係ない生徒がぎょっとしてこちらを見る。
コウマのよく通る掛け声に落胆する僕と対照的に楽しそうな人たちに背を押されしぶしぶ道案内する。
途中コンビニでお菓子やらジュースやら買い込んでいく始末、こんな物も必要なのか聞くとなにやら僕の歓迎会も兼ねているらしい、しかも入部の。
「いつ僕が入部すると?」
「そんなの私の心霊占いに出ていたんだからしょうがないじゃない、それにまんざらでもないとも出てたけど」
といって、僕の顔とウメの顔を交互に見た。
「なっ、何を……」
ウメはキョトンとしていたが、僕の顔は燃えるような暑さを感じた。
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