第17話 転校生と霊能者
「転校生を紹介する、野田ユキオくんだ、それじゃあ一言」
先生に促されて教壇に進み出て周りを見るとウメさんはいなかった。
気づかれないようにガックリと落ち込んだ。
「東京からきました野田ユキオです、よろしくお願いします」
特に面白い事も言えないまま指定された席に着いた。
それでも微妙な時期にクラスは入り込んだ異物にざわついて僕を観察している。
僕の席は窓際で後ろから二番目、隣は眼鏡をかけた中学生にも見えるツインテールの女の子……何か奇妙な視線を感じる。
とりあえず後ろの男子、木瀬修一に軽く挨拶した。
気のいい兄さん的な感じの人でほっとする。
一応お隣さんの女子にも挨拶と思い顔を向けると鋭く笑い眼鏡のレンズが光った。
「あなた!霊に取り憑かれているわ!」
指を指され意味の判らない事をよく通る大きな声で告げられクラス中が「オー」とどよめくと一瞬で注目の的がレベルを上げてスポットライトで照らされた状態になり、きっと今日から取り憑かれた男子として生きていくんだろうと一瞬にして未来予想を算出した。
「かー!また出たよコウマの霊感商法、野田君気にするな、クラスの3分の1は霊に取り憑かれているから」
木瀬の言葉を聴きつつコウマと呼ばれた女子を見据える。
「と、取り憑かれているとはどういう事かな?えーと、コウマさんでいいのかな」
「ハイ、御堂光磨です。よろしくね」
自己紹介はかわいく決めてきた。
眼鏡越しだがよく見るとかなりの美少女で少しつりあがった目は悪意のない小動物がただ獲物を狙っているようだ。
「そう、あなた、……霊!しかも生霊に近い?ものに取り憑かれているわ、何かすごく珍しい物、こんなの初めてだわ」
そう言って一度左右に首を傾げると眼鏡の真ん中を指で押し上げてまたしてもキラリとさせた。
「めっ、珍しいとは?」
「フフフ、それが知りたければまずこのお札を購入の上相談料として2000円いただきますが」
「えっ、お金とるの?」
僕がこの霊能者に驚愕していると、教壇から先生が、
「おーい、御堂、転校生相手に商売始めんな!」と指導が入った。
笑いをこらえていたクラス中が爆笑の渦に巻き込まれる。
「ふっ、邪魔が入ったわ、この続きは昼休みにでも」
そう言うとコウマは何事も無かったように黒板に向かった。
もしかしてこの子は本当に霊能力者とかいうやつか?何かを感じて言ったのかな、それともあてずっぽ? 電波的な……なのかな? 確かめてみるか。
僕はすぐにこの自称霊能者に興味を持った。
「野田君も大変だね~転校初日から、コウマの家は代々霊視のできる家系でそれを家業としているからな、しかもよく当たるから誰も文句なんかいわねえんだ」
木瀬が後ろからご丁寧な解説をしてくれた。
自称じゃなく公認らしい。
授業の合間に新しいクラスメイトに質問攻めにされ、なるべく愛想よく振舞ってやり過ごした。
人生で初めての転校なので、漠然とイメージしていたけどやはり目立つのは疲れる。その間コウマからのリアクションは特に無く昼休みをむかえた。
「それじゃあ行きましょうか、お弁当持ってきてないなら途中の購買で買えばいいわ」
そういうとコウマはさっと立ち上がり先へ行こうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくれないか、行くって何処に?」
コウマは〈チッ〉と舌打ちをしてめんどうくさそうに僕を見た。
「あなた、朝の話聞いてなかったの?」
「いや、聞いていたけど……」
「じゃあ問題ないでしょ早くして」
間髪いれず、問答無用で連れて行かれる僕を質問攻めの続きを期待していたらしいクラスメイトはただ見送るだけだった。
コウマは用がないなら近づくな!的オーラを放出しているのが分かる。
もしかして、と言うか確実にこの子は恐れられている?
教室のある東棟から購買によってパンとコーヒー牛乳を買い、閑散としている西棟を抜け木造旧校舎に連れてこられた。
旧校舎が丸々部活等になっているとコウマが言った。
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