第13話 張り込みは本業じゃない

「まったくもう少しデカイ車なかったのかよ」

 俺は部下の今野に悪態を付いた。

 1コ前のカローラの後部座席でタブレットとノートパソコンを開いて交互に使いながら情報を整理して、一度タバコをふかした。

 このあたりがエネルギーの発生地域で昨日から車で何度か回っていたのだがついに腰と尻が限界に近づいてきたのだ。

 そう簡単に見つかるはずもないことは百も承知だ。

「しょうがないですよ、この案件に渋々予算つけた部長もかなり信用してないですから、局の車もこれしかなかったし」

「それでも普通さ……こう、なんていうか、それなりの装備とか付いた車じゃないと盛り上がらねーよ、警察の張り込みじゃねーし、こっちは宇宙人がらみだろ」

「装備とか付いていても使えないと意味ないですけどね、張り込み何て本業じゃないですし」

 今野の言葉に、ふんっと鼻を鳴らして次のタバコに火をつけ強く吸い込んだ。

「まあ、この件でファーストコンタクトにでもなれば予算どころか部隊を率いて作戦立てられるのはまちがいねえな、指揮は俺が執るからそんときゃおまえに鞄持たせてやるよ、手柄の分け前計算しとけ」

 勢いよく煙を吹き出すと今野はあからさまにいやそうな笑顔を見せた。

「あっ、今の」

 今野が目を丸くして通りを過ぎていくミニバンを見送った。

「ん、今のがどうした?いい女でもいたか」

 俺はタブレットのメールをチェックしながら言った。

「はい、美人が運転を……いや、違いますよ、ほら、例の画像データの高校生」

「ふーん……画像の高校生ね、ん?……お前今なんてった?」

「だから、あの画像に映っていた高校生が助手席にいて車で通って……」

「はぁ!何やってんだ!とっとと追いかけろ、この役立たず」

 大声で怒鳴った俺の声につられて、今野がアクセルを踏んだ。

「ナンバーは?」

 泣きそうな声で今野は見てませんと言った。

 狭い路地で無茶な方向変換をしてクラクションを鳴らされるがお構いなしだ。

「どの車だ?見えねえじゃねえか」

 無常にも信号で止められた車からとび降り、走り出してミニバンを追いかけてみたがすでに走り去った後だった。

 情けなく肩で息をして髪をかき上げた。

 こういう時に日本の特務機関の限界を感じる。低予算で権限も僅か、クソだなと思いながら俺は地面を思い切り踏みつけた。

「見てろよ宇宙人、ぜってー捕まえる」

 後ろから今野の運転する車が追いついてくる。

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