第880話初音は我慢をやめる
俺は宣言通り初音の服を上から順に脱がしていく。
・・・考えは変わったが俺という人間の人格がいきなり変わるわけではないため、もちろん恥ずかしさも強い。
それでも俺は今ここで変わるんだという強い決意のもと、それを行動に移す。
「・・・まさかそーくんの方から積極的にしてくれるなんて、思いもしなかったよ」
「いつまでも言い訳をし続けて避けてたらダメな気がしたし、初音に言われた条件が理由でっていうのも良くないと思ったから」
「そ、そーくん・・・!」
初音は感動を受けたような表情になった。
・・・本当に、俺が今の学校に転校してきて、隣の席が初音で、初音と再会した時と比べたら信じられないほどの進歩だと思う。
「もちろん今までも同じ思いだったけど改めて口に出すね・・・私、絶対にそーくんのことを幸せにしてあげるから!」
「そういうのは、俺が言うこ───────」
俺がいつものように反論しようとしたところで、初音はその反論しようとする口を自分の唇で塞いだ。
「は、初音!?ま、まだ脱がせてないだろ?」
「そーくんの脱がし方がゆっくりで焦らしてくるんだもん、焦らさないでよ」
「焦らしてるわけじゃ・・・」
口では堂々としたことを言いながらも実は恥ずかしがっているなんて言えない。
「まぁそーくんの手を見たら恥ずかしがってるんだろうなってことはわかるし、勇気出してくれてるのもわかるけど、それにしたって遅いんだもん」
「いや・・・わ、悪い」
「あ、そーくんのこと責めてるわけじゃないんだよ!?ただ、ある程度のところまでは私がエスコートしてあげるってだけ!」
俺はまた反論しようとしたが、初音の表情と息遣いがもう我慢できないといった雰囲気だったため、俺は両手を初音から離して主導権を譲る素振りを見せた。
そうした途端、初音は我慢していたものを全て解放するようにそのしなやかな手で素早く俺の服を脱がせていく。
「は、初音?そんなに急がなくても良くないか?」
「急ぐよ!今までずっと食べたいと思ってた好きな食べ物をずっとずっと我慢し続けて今ようやく、それを食べるってなったらそーくんだって急ぐよね?それと同じ!」
食べ物に例えられるのは新鮮な気分だが、言っていることはわかるため受け流すことにした。
初音はまず俺の上の服を脱がせると、胴体に頭を預けるようにして抱きついてきた。
「あぁ・・・本当に、色々とあったけど、最後はちゃんとそーくんが私を選んでくれて、本当に良かったな〜」
「最後・・・?」
「え、何?まだ誰かと浮気するつもりなの?」
「え!?いやしないです!余計なことを言いました」
「冗談だよ〜、じゃあそろそろ・・・下の方も、ね」
俺たちはとうとう・・・初めてというものを、互いに経験することになった。
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