第866話天銀が女って知ってたよね?
俺にしてはかなり頑張って、なんとか色々な言い回しをして基本10分の休み時間を凌いできたが。
「放課後だね、そーくん・・・もう誤魔化せないよ?」
・・・誰しもが待ち望んでいたであろう放課後だが、俺にとってはただただ最悪の時間でしかなかった。
「はぁ〜あ、そーくんがすぐに話してくれれば優しく聞いてあげようと思ってたけど、こんな時間まで誤魔化し続けたそーくんが悪いんだし・・・場所、変えよっか」
それから俺は前に地獄を見せられたマンションの地下に連れてこられた。
もちろん途中で抵抗を見せたが、俺の抵抗なんて全く意に介することなく初音は俺のことをここまで連れてきた。
・・・そろそろ筋トレでも始めてみようか、生物的には男なんだし、本気で頑張れば理論上は初音に力負けする道理はないはずだ。
「それで?そーくん、天銀が女だってことは知ってたよね?」
「・・・いや、知らなかっ───────」
「じゃあ体育の着替えの時とかはどうして気づかなかったのかな?天銀が仲良くしてるのなんてそーくんくらいなんだし、着替えの時だって会話くらいしたよね?その時に気づかなかったの?もし気づかなかったんだとしたら天銀はよっぽど男の子っぽい体なの?それなら後で天銀のこと無理やり脱がせ───────」
「待ってくれ・・・知ってる、知ってた」
俺は本当のことを白状する。
・・・天銀のことをもし脱がされでもすれば天銀が男の子っぽい、どころか発達しすぎている女性らしい部分までバレてしまう、そうなると俺の言い訳のしようもないし、何より天銀にそんな迷惑をかけることはできない。
「やっと認めたね」
「・・・・・・」
「これでようやく話を進めることができるけど、今まで天銀が男だからってことで色々許可してきたことあったよね?それこそ二人きりでいることも見過ごしてきたしお風呂に入ったりとかも見過ごしてきたし、初めて天銀を見た時の相合傘だってその時は怒ったけど、後から咎めたりしなかったよね?もし女だって分かってたらあんな程度じゃ済まなかったし、日常の細かなことまで数えだしたらもう切りが無いよね」
「そう・・・だな」
確かに天銀の性別を隠していたのは初音からしてみれば最悪なことだとは思うが、俺にだって言い分はある。
「でも、俺と天銀はそんな異性として意識し合ってるわけじゃない」
「うん、分かってるよ、もし意識し合ってたりしたらもっと早くに気付いてただろうしね・・・まぁ、片方が想ってるかどうかはわからないけど」
初音は言葉の最後に小さく何かを呟いた。
・・・とにかくそこは分かってくれているようだ。
「なら、隠してたことはちゃんと謝るから、許してくれないか?」
「仮にも女とお風呂に入ってたのに許してって?・・・前の私なら許してなかったけど、最近は私もちょっとずつ寛容になってきたし、私のこと100回好きって言ってくれて100回抱きしめてくれれば、愛を実感して許してあげるかもね」
「・・・わかった」
俺はその後、少し恥ずかしくは合ったが初音に言われた通りにした。
許してくれるかどうかは初音次第だが、俺にできる限り気持ちを込めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます