第832話結愛の願望
「・・・選べないのに私とは今日で別れようと思ったの?どうして?」
「・・・罪悪感が凄かったからだ」
「そっか、じゃあもし今私がここで既成事実とか作ったりしたら、そーちゃんはもっと罪悪感を感じたりするの?」
「それは、まぁ・・・」
浮気相手とそんなことになったら余計に罪悪感を感じてしまうに決まっているだろう。
「・・・そーちゃん、私から提案なんだけど」
「提案・・・?」
「今ここで何もしないであげるから、その代わりに私と別れるって言ったことを撤回してほしいの」
「それが・・・提案ってことか」
半分脅しなようにも聞こえるが、それが結愛からの提案というらしい。
いつもこういった状況になると何かしらの形で助かったりしていたことがあったが、今はそういったものが全く無いように思える、というか結愛がこうして提案なんてしてきていなければ俺は今頃その既成事実というものを作らされていたはずだ。
つまり・・・結愛と既成事実を作るか、結愛の提案をのんで別れるのを延期するかの二択だが。
「・・・・・・」
はっきり言ってもし既成事実なんて作ってしまったら俺は結愛にまで罪悪感を抱いてしまうだろう、そうなってしまってほあ本末転倒だ。
「・・・わかった、それで頼む」
「そーちゃん、ありがとうね、私と別れないでくれて」
これを別れないでいてくれてと表現するのは少し違うような気もするが、言葉の意味だけを見るなら間違ってはいない・・・か。
「あ、あぁ・・・」
本当にこれで良いのだろうか。
こんな風に長々と関係を続けて・・・
・・・でも、俺は初音にバイトを黙ってしたいた件でスマホを取り上げられてしまっている、助けなんて呼べなかった。
仕方なかった。
「・・・っ」
こういった考えがきっと初音のことを疑い深くさせてしまい、より初音の束縛が強くなっていくんだろう。
なら、俺が少しでも変わらないと俺たちの間にある問題点も何も変わらないということだ。
なら・・・
「結愛、一つ聞きたいことがある」
「何かな?」
「結愛が俺と恋人で居たいとか、結婚したいと言っていたが、俺と恋人や結婚したいことは幼馴染のままじゃダメなのか?」
「ダメだね、私はそーちゃんと幸せな家庭を築いて幸せになりたいんだもん」
「それは・・・昔みたいに家絡みで仲良くってことじゃ、ダメなのか?小学生の時はほとんど家族みたいな感じだっただろ?」
「そーちゃん、私はそーちゃんのお嫁さんになりたいの、もちろん一番はそーちゃんと一緒に居られることだけど、少なくとも・・・あんな虫とそーちゃんが結婚なんて未来がある限りは、私はそーちゃんのお嫁さんになることを諦めないよ」
「・・・そうか」
・・・いつもと言っていることは変わらないようにも聞こえるが、何故か。
今結愛が言ったことの中に、少しだけ結愛の本質が垣間見えたような気がする。
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