第699話ギリギリの拮抗

「驚いてなんて言ってないよ、今の電話は何って聞いてるの」


 最悪・・・

 私は今晩そーくんとどうやって過ごすかという幸せホルモンしか出ないようなことで頭を埋め尽くしていたため、そこにいきなり急激に出てきたマイナスホルモンのせいで気分を害されてしまった。


「なんでも良いでしょ?」


「ダメだよ、あんなにかしこまってたってことはそーちゃんのお母さん達からじゃないの?」


 聞かれてたんだ。


「まぁ、教えてくれないなら教えてくれないで、そーちゃんのところに行くだけだけど・・・どんなことを言われてたとしても虫がそーちゃんから離れるとは思えないからね」


 今まででもわかってたことだけど、この女はそーくんに纏わりついてこようとするだけの分際でちょっとは頭が回るみたい。

 それでも私がわざわざそーくんのお母様たちが一晩留守にするなんてことをこの女に教えてあげる必要は無い。

 仮に今この女に防がれたとしても、夜は長いし。

 この女が寝た後でこっそりそーくんだけを口にガムテープでもしてお風呂場に連れて行ってえっちすれば良いだけ。

 そーくんのお母様たちが居ないならちょっとぐらい乱暴なことしても大丈夫だし、それを今晩だけは看過するということを伝えるためのさっきの電話。


「・・・電話のことは教えてくれなさそうだからもう良いとして、その身なり何?そんな貧相な体なんて見せつけられても何も嬉しく無いんだけど」


「体でしか人を見れないなんて・・・可哀想な女」


「そんな格好してたら格好に目を行くのは普通でしょ?」


 私としてはここでこんな女と言い争ってても仕方ない、ここは私が折れて早くそーくんのところに向かわないと。

 試合に負けて勝負に勝ったって言うしね。


「そうだね、私が悪かったよ、じゃあね」


 私は大人しくこの場を後にしようとする。


「待ってよ」


 だけど、この女はなぜか私のことを制止する。


「何?」


「そーちゃんは上にいるんでしょ?じゃあ私も上に行くよ」


「は?本当ならそーくんと同じ建物にいることすら許容したくない存在なのにソーくんのところになんて行かせるわけないでしょ?」


「・・・っ!」


 この女はいきなり何かに気づいたかのようにはっとすると、すぐに階段を駆け登ろうとする。

 当然私は今最高に発情しているそーくんの元に他の女なんて連れていきたくないため、この女の肩を抑える。

 無いと思うけど、そーくんが性欲に負けて誰でも良いなんてことになったら最悪だからね。


「離して!上でそーちゃんと何かしてたんでしょ!」


「っ・・・!」


 バレたなら仕方ないと思い、私はこの女のことを階段から無理やりおろし、私が先行する形で階段を登る。

 この女も後続で続いては来るけど・・・

 私はそーくんの部屋に入り、鍵を閉める。


`ドンドンドンッ`


「えっ?えっ?」


 そーくんはいきなりの状況に驚いているみたいだった。

 でもそんなのに構ってるわけにも行かない。

 今あの女が手を出せない間に・・・


「そーくんお待ちかねっ!気持ち良くしてあげるねっ!!」


 しっかりとあの女の目の前で、そーくんは私のものだって再認識させるのにも良い機会だね。

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