第647話好きの定義

「─────あ、私はきーちゃんが来たこと伝えにきただけだからそろそろ戻るね〜」


「はい!」


 そう言って母さんは洗面所を後にし、この場には俺と結愛だけが残されたわけだが・・・


「じゃ、じゃあ俺たちもリビングに戻ろう!」


 俺は今結愛と2人きりになるのは非常に気まずいというか居ずらいため、すぐにその状況を打開しようとするも・・・


「待って!そーちゃん!」


「・・・・・・」


 結愛に呼び止められてしまう。

 ・・・さっき死ぬどうのの話をしてたんだ、これからする話だって絶対それ関連に決まってるよな・・・


「な、なんだ?」


「・・・あの虫の意見関係なく、そーちゃんは私の提案どう思ってるの?」


「え・・・」


「そーちゃん、よく考えて欲しいんだけど、そーちゃんの思う好きって何?」


「す、好きって何って・・・?」


「うん」


「・・・・・・」


 いきなり振りかけられるにしては難しい質問すぎる。

 好きって何って・・・好きは好きとしか言いようがない。

 強いて言うなら・・・


「ずっと一緒に居たいと思う気持ち、とか・・・?」


「52点だね、正確には運命的なものを感じてずと一緒に居て楽しいとか一生を添い遂げたいとか身も心も人生も捧げたいって思う気持ちが好きってことなの」


 好きが重い・・・!!

 と、とりあえず合わせておこう・・・


「・・・は、はぁ、なるほど・・・?」


「そこまではそーちゃんもわかるよね?」


「ま、まぁ・・・」


 ニュアンス的には俺の言ってることとあまり変わらないような気もするけどまあ重さで言うと全然違ったし、一応それも好きに含まれるだろうから何も異論は挟まないでおこう。


「で、それを踏まえてそーちゃんは、本当にあの虫に対してそんな風に思ってるの?」


「・・・え?」


「だから、そーちゃんはあの虫に対して運命とか楽しいとか一生を遂げたいとか身も心も人生も捧げたいって思ってるのって聞いてるの」


「い、いや、そ、そこまでは思ってないけど・・・」


「思ってないんだよね?なら──────」


「ちょちょ、ちょっと待ってくれ!」


 俺はここでようやく異論を挟む。


「何?」


「そ、それで好きじゃないとかどうこう決めるのは違う、そもそも俺と結愛の好きの価値観が違う可能性だってあるだろ?」


「・・・そうだね」


 結愛は俺の反論を聞き入れてくれる。


「・・・じゃあそーちゃん、好きじゃない人に自分のえっちな姿見せる?」


「は、は?な、何言ってるんだ、そんなわけないだろ?」


「・・・わかったよ」


 そう言った瞬間、結愛は俺のことをちょうど良い感じに背中が痛くないように俺の足を崩し、俺の膝の上に跨って見せた。


「い、いきなり何して──────」


「そーちゃん、今からそーちゃんが私のこと好きって証明してあげる」

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