第618話総明と小姫

 ここ最近、俺には悩みがある。

 ・・・いやまぁここ最近どころか常に悩みどころな俺だがこれはもしかしたら死活問題かもしれない。

 その問題とは・・・ちょっと舐められすぎと言うことだ。

 あゆには一度何かがあると絶対にチョロいとかへなちょこだなんて言われ、結愛には謝罪されながら酷いことをされる始末、霧響には舐められてはないだろうけどそれでも兄としての威厳を保てているのかと問われれば首を横に振るしかなく、言わずもながら初音には舐められてるというか単に力不足なせいでされるがままになっている。


「ど、どうすればいいんだ・・・」


 いっそのこと今から筋トレでもして・・・でも今更筋トレしたところで、っていうか仮に俺が筋肉ムキムキだったとしても勝てるかどうか怪しいしな・・・


「仕方ない、ちょっと誰かに武術的なものを教わりに───────」


「ねぇ、ちょっといい?」


「・・・え」


 俺が武術の心得を得ようと部屋から出ようとドアを開けた瞬間に、小姫さんが俺の部屋の中に入ってきた。


「え、えーっと、な、なんの御用、です、か・・・?」


 今はできるだけ天銀以外の女子とは関わりたくない、もしバレたら初音に何をされるかわからないからな。


「・・・何目逸らしてるの?」


「え・・・」


「ほら、ちゃんと目見て喋ってよ」


 俺から誘ったならまだしもいきなり来られてしかもできるだけ関わりたくないと思っている相手、さらに見た目だけは良い女性という絶対的なハードルを持っている小姫さんに目を見て喋ってくれと言われる。

 ・・・・・・。


「無理に決まってるでしょ!」


「え、何それ、私のこと変に意識してるってこと?キモッ、そういうのウザいからやめてくれない?目合わせることが恥ずかしいことみたいな考え方やめてくれる?こっちからしたら会話してるのに目を逸らしてる方がよっぽど恥ずかしいからね?」


「そこまで言わなくてもいいだろっ!」


「はいぃぃぃぃぃぃ、言いすぎましたぁぁぁぁぁ」


「っ・・・」


 小姫さんはたまにこういうのがあるからなんといか・・・非常にやりにくい。

 さっきまでは俺が色々と悪口を言われてたはずなのに一転して今は俺が小姫さんを虐めてるみたいだ・・・


「あっ、す、すいません、こ、こっちこそちょっと言いすぎました・・・」


 これでお互い言い過ぎたということで、喧嘩両成ば────────


「そうそう、女に対して強い言葉使うなんてまだまだだね、それに、そういう敬語の感じウザイ・・・鬱陶しいからやめてって言ったよね?日本語も理解できないなら学生なんてやめてニートになれば?養ってくれそうな女がいっぱいいるからちょうどいいじゃん、ニートおめでとー」


「っ!だからそう言うところが───────」


「ねぇ、ちょっと聞きたいことあるんだけど」


「なっ・・・」


 自分の言いたいことだけは全部言って俺の言いたいことは全部スルーなのか・・・そっちがそのつもりなら俺だってそっちの聞きたいことなんて聞く義理は無───────


「あんたって本当にあの女の事好きなの?」


「・・・え?」

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