第586話初音の焦り

 昨日は薬とかも打たれずご飯もちゃんと食べたため、体調的にはもうすでに回復している・・・が。

 明日初めてをするなんて考えると精神的にそれどころではない。


「そーくん?」


 初音は特にいつもと変わらない様子だ・・・


「な、なあ、初音、ほ、本当に明日するのか・・・?」


「ん?もちろんだよ?そのためにこうしてるんでしょ?」


 そう言って初音は今俺と初音の手首に繋がれている手錠をガチャガチャと揺らした。


「そ、そうだよな・・・え、もしかして今日一日中こうしてるつもりなのか?」


「そうだよ?今日が終わった瞬間、つまり次の0時が来たらその時に初めてを遂げるんだから、そーくんもそれまでには気持ちの整理しておいてね?」


「・・・・・・」


 気持ちの整理・・・できるわけないだろ!

 いやまあ初音からしたら昨日薬のせいとはいえ初めてをしそうになってたのに何を今更みたいな感じなんだろうけど、それでもやっぱりそんな簡単に気持ちの準備なんてできないし、できて良いものでもないと思う。

 ・・・こ、これは、あれだな。

 俺がもうなんとかして初めてを失敗させるしかない・・・

 ネットで見た記事によると初めてをするときに緊張して大きくならない・・・みたいなこともあるらしいから俺もそれを狙おう。

 そうすれば初音だってまた今度にしてくれるはずだ。


「・・・無理だな」


「無理?何が無理なの?」


「えっ、あ、わ、悪い、ひ、独り言です・・・」


 初音の裸を見てしまって興奮しないほど俺は女性経験がない、そもそもそんなことができるほど女性慣れしてるなら多分ここまで苦労していない。


「そーくん、このままあの女たちがいる家から離れない?」


「・・・え?」


 初音からいきなりそんなことを提案される。


「い、いきなりどう言うことだ!?」


「今私すっごく幸せなの、他に邪魔がいなくてそーくんと2人きり・・・❤︎ほんとに夢みたいなの!お金なら絶対に苦労させないから・・・!」


「そ、そんないきなり・・・が、学校はどうするんだ?」


「・・・そのことなんだけど、今まで私が悪かったの」


 初音は下を向きながら言った。


「そーくんと学校で楽しくできれば良いなって思ってたんだけど、よくよく考えれば別にそーくんと楽しくするなら学校になんて行かなくてもいいし、むしろ学校に行くことでそーくんが他の女と接する機会を与えちゃうし・・・本当今までの私を殺しちゃいたいぐらいだよ・・・それに、何度も言ってるけど、そーくんには学歴なんて必要ないから」


「そ、そんなこと──────」


「そんなことあるの」


「・・・・・・」


「だからね?そーくん、このまま初めてを遂げたら、私の実家に来ない?」


「じ、実家・・・?」


「うん、私の両親にそーくんが挨拶に行くの」


「あ、挨拶って・・・」


 いくらなんでも急すぎる、それこそ心の準備が必要だ。


「で、でもここがどこかもわからないのにどうやって実家に行くんだ?」


 確かスマホの充電も切れてるって言ってたし・・・


「・・・えっ?」


 と、初音は普段あまり見せない焦ったような表情と声音を出した。

 ・・・ん?

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