第583話小姫の来訪

「で!そーちゃんの場所は!?」


「ラブホテル」


「・・・え?・・・ホテル?」


 桃雫さんは段々と顔を青ざめていっています。

 ・・・かく言う私も、きっと似たような表情をしているでしょう。

 ・・・お、お兄様が私ではなく白雪さんと、ホ、ホテルに行っていたなんて・・・


「そんなっ・・・そーちゃんがあの虫とホテルに居たなんて・・・」


「ホテル・・・」


 先程までは特に濃い反応は示していなかったあゆさんが、ここで初めて少し苦い表情をしました。


「ホテル、朝から昼間のうちはずっと雨が降っていたので、もしかしたら雨宿りのためにホテルに入ったのかもしれませんね、でも、ラブホテルというのは・・・?」


 本当に私より一つ年上なのでしょうかと疑いたくなるほど性的な方の知識は何もない天銀さんは、そんなことを口にしました。


「あっ、天銀先輩、ラブホテルっていうのは男の人の下半身にあるものを私たちの下半身の──────」


 あゆさんが天銀さんに余計なことを言おうとしたので、私はそれを遮るように言います。


「それで、なぜあなたはここに来たんですか?」


「え・・・」


 私がそう質問すると、その方はなぜか刹那口を閉じるともう一度口を開きました。


「別に?暇潰ししにきただけ」


「あまり関わりのない人の家に来て暇潰しというのはどうなのでしょうか」


「関わりならあるし」


「・・・どのような?」


「ラブホテルのベッドの上で一緒に過ごす仲」


「「「・・・えっ?」」」


 ・・・お兄様がこの方ともラブホテルに・・・?


「・・・なんでそーちゃんとラブホテルになんて行ってるの?」


「は?別になんだっていいでしょ?他人のラブホテル事情探るとか・・・キモ─────」


「いいから!なんでそーちゃんとラブホテルになんて行ってるの?っていうかどうやってそーちゃんがそれを承諾したの?で、もしかしてナニかしたの?したなら今すぐ───────」


「あー、もう、うざいうざい、うざいって、なんであの子の周りってこんなに地雷女が多いわけ?別に何もしてないって」


 あの子・・・お兄様のことでしょうか。

 この口ぶりからしてお兄様より年上、ですが所感で大学生という感じではないので、そうすると高校3年生・・・

 お兄様より一つ年上なだけでお兄様をあの子呼ばわりとは・・・


「・・・え、え、ちょっと待って!?じゃあもしかして今そーちゃんはあの虫とホテル街で2人なの!?」


「どっか行ったからわかんないけど、まぁそうなんじゃない?」


「あぁぁぁぁぁ・・・!は、早くそーちゃんを助けに行かないと!そーちゃんが襲われるぅぅぅぅぅぅ!汚されちゃうぅ〜!」


 そう言うと桃雫さんは軽量の荷物だけ持って出ていってしまいました。

 私は闇雲に探すことなどできないので、レンタル彼女の方とあゆさんが話している隙にお兄様の部屋にとあるものを仕掛けることにしました。

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