第545話初音の問い正し
俺は反動で、すぐに目を開けてしまう。
俺の前にいるためあゆの裸は後ろからしか見えないが、今は正直そんなことがどうでもいいほどに焦っていた。
「は、初音!驚くのは分かるけど冷静に─────」
「っ!」
「・・・え?」
俺が弁解を図ろうとした瞬間に、俺は引っ張られるようにして倒れ込んだ。
それは初音が怒って俺に物理的に攻撃した────わけではなく、あゆのことを地面に押し倒したというよりも地面に叩きつけたと言った方が表現が正しいような感じで叩きつけたせいで、俺も自然と地面に引っ張られてしまった。
「な、何を─────」
「この女の次はそーくんだよ」
「ま、待て!だ、だから俺は─────」
「待て?何を待つの?そーくんの言い訳?どちみち私以外と裸でお風呂になんて入ってたんだから浮気だよね?」
「それはそう・・・なんだけど」
「そうなんですよ〜、実は私たちってそういう関係─────」
`ドンッ`
「ひっ・・・」
あゆがギリギリ躱したから良いけど、もし躱してなかったら今頃初音の包丁があゆの顔を貫いてたな・・・
「白雪せんぱ〜い、魅力で私に負けたからって嫉妬ですかぁ?女の嫉妬は見苦しいですよ〜?」
女の嫉妬は見苦しいって・・・あんまり聞かないけど女子からしたらそうなのか・・・?
「・・・・・・」
初音はあゆのことを刺すよりも俺のことを刺した方が早いと考えたのか、標的を俺に切り替えた。
「まま、待て!?ちょっと話を─────」
「裸で女と出てきたのによくまだ言い訳できるね」
「だ、だから違うんだって・・・」
「そーくんは本当に浮気癖がなかったら至高だったよ」
俺に対する最後の言葉みたいな感じで言われると本当に恐怖を感じてしまう・・・
「・・・はぁ、先輩を殺されちゃったら私が困るので白状します」
そう言ってあゆは脱衣所の着替えと一緒に置いていたらしい契約書を持ち出してそれを初音に見せた。
「・・・は?何これ」
「私と先輩の契約書です、それで私に体を売ってもらったんですよ」
「・・・何このふざけた内容」
「・・・え?」
初音がそれを見た瞬間にそんな声を上げた。
ま、まぁ確かに1億円もの大金なんて書いてたら普通信じられるわけがないか・・・
「さ、先に言っとくけど、俺は騙されたわけじゃないからな?実際に1億円をあゆが持っていることを確認した上で─────」
「そうじゃなくて、たった1億円だけで人権なんて奪えるわけないでしょ?それなら私はもう何回もそーくんの人権なんて奪ってるし、それに何この契約書の最後の一文なんて`何か不都合があれば修正する場合があります`だよ?そんなの後付けでなんでも付け加えれるってことだよ?なんでこんなのに署名したの?」
「そ、それは、その・・・」
「まさか内容も見ずに署名したんじゃないよね?」
「・・・・・・」
・・・お風呂上がりだからだろうか、俺の頬を一筋の汗が伝った。
「・・・そっか、そーくんはそうだよね・・・」
「・・・・・・」
なんていうか、なんでさっきの殺伐とした空気から俺がある意味逃げ出したくなるような空気感になってるんだ・・・
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