第507話初音の火種
「っ!そーくんっ!」
俺の唇と少女の唇が触れてしまう前に初音が高速で少女が手に持っているリードを奪い、そのリードを握ったまま後ろに下がった。
「うわぁっ!」
そんなことをされれば、俺は初音の方に引っ張られる。
「ごほっ・・・!首が・・・」
今日だけで一体何回首が絞められてしまうんだ・・・
「本当に死にたいの?あろうことか私のそーくんの唇を奪おうとするなんてっ・・・!」
初音はさっきの生気の無い目ではなくなったものの、怒りの目になっていた。
「そーくんもそーくんでっ!何好きなようにやられてるの!?」
「えっ・・・」
俺にまで火種が飛んでくるのか・・・
「い、いや、今のは不可抗力というか・・・」
「私以外の女に唇を奪われるところだったんだよ!?不可抗力なんていう言い訳で済まさないでこれからはどうすべきなのか今回の件を踏まえて考えて!」
「・・・はい」
普通なら恋愛に出てこないようなことを言われまくってるけど間違ったことは言われてないため何も反論ができない。
「大体そーくんはいつも私に好きなようにされるのは良いとして、私以外の女にも好き放題されすぎなの!」
「・・・はい」
「だからそーくんの浮気癖が治らないんじゃないの!?」
「いや、俺は浮気なんてしてな─────」
「私に隠れてレンタル彼女なんてレンタルしてたくせによく言うね」
「うっ・・・」
「このことは、帰ったら本当にじっくり吐いてもらうからね、でも、その前に・・・」
そう言って初音は少女に歩み寄って言った。
「私のそーくんに手出そうとしたんだから今ここで殺しても良いよね?」
「ま、待てって初音、殺すとかそういうのは─────」
「なんでこの女のこと庇うの?浮気してるから?」
「そ、そういうわけじゃ・・・」
「・・・でも確かに私も冷静さちょっと欠いてたかもね」
は、初音が俺のことを浮気してると思ってるのにも関わらず冷静さを取り戻してくれた・・・!?やっぱり初音も徐々に普通の女の子に─────
「こんな女なんかに構ってる暇があったら早く家に帰ってそーくんに洗いざらい吐いてもらわないとね」
「えっ、洗いざらい吐いてもらうって・・・俺もう話せることは全部話し─────」
「はい行くよー、これ便利だね♪」
そう言って初音は俺の首輪と繋がっているリードを引っ張って歩みを進めた。
普通に首が絞まって痛いしこの見た目も普通に恥ずかしい・・・
俺はチラリと後ろを見てみるとなぜか少女は笑っていて、俺と目があった瞬間に────目を見開いて笑った。
「な、なんなんだ・・・」
俺はあまりにもそれが怖すぎるため、もう後ろを振り向かないようにした・・・が、前を見てみると明らかに初音の殺気が振り撒かれていて、余計怖かったので俺はどこを向けば良いのかと戸惑っていた。
・・・帰ったらどうするかだけを考えて帰ることにしよう。
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