第398話あゆの初対面
「なるほど・・・中学時代からの後輩で相手が好意を向けてくれているのをいいことに遊んで捨ててしまうから浮気はしてない、ということね」
「何がなるほどなんだ!全く理解できてないだろ!」
「遊ぶつもりでもないなら二股なんてする必要ないでしょう」
「だから俺だってしたくて二股なんてしたんじゃないんだって!相手が───」
`キーンコーンカーンコーン`
「くっ・・・」
「チャイムね、私たちは席に戻るわ」
そう言って、月愛は自分の席に戻っていった。天銀は左前なので戻るというか単純に座っただけで位置関係はあまり変わらない。
救いを求めてたはずのチャイムがこんなバッドなタイミングでなるとは・・・
「一つお聞きしたいのですが最王子くんは不純異性交遊をするために二股をしているわけではないんですよね?」
「もちろんだ・・・さっきも言ったけど成り行きでこうなっただけなんだ」
「なるほど・・・」
天銀はさっきからずっと何かをメモ帳にメモしている。何もメモされるようなことは言ってないと思うんだけどな・・・
放課後になると、月愛と天銀に誤解を解いていた最終で、その張本人であるあゆが俺の教室にまで迎えにきた。
「せんぱ〜い♪って、あれ?お友達さんですか〜?」
「あ、いや、これは────」
「別に隠さなくてもいいですよ〜?彼女がいてもお友達と話すなんて普通なんですから、むしろ白雪先輩が異常なだけですから」
た、確かにそうだ。隠す必要はないな。恋人がいたって友達と話すことぐらいは普通だ。こんなの高校に入る前の俺ならいちいち考えなくてもわかってたことなのに・・・!
「・・・白雪さんと同等というのも頷けるわね」
「これは・・・厄介ですね」
「厄介・・・?」
「あ、いえ、なんでもありません・・・」
「・・・・・・」
天銀の様子がちょっとおかしかったけど、ひとまずそれは置いておこう。
「それで〜?お名前は〜?」
「黒ノ宮月愛よ」
「天銀です」
「黒ノ宮先輩と〜、天銀先輩?下のお名前は〜?」
「し、下の名前はあまり好きではないので、天銀でお願いします」
そう言えば俺も天銀の下の名前を知らないな。先生もずっと天銀って呼んでるし・・・好きじゃない名前、か。
「わかりました〜天銀先輩!・・・ん?天銀先輩はなぜズボンを?」
「なぜ、とは?学校の校則上制服以外は着てはいけないと思いますが」
「・・・・・・」
あゆは一瞬俺に視線を送った。
「・・・あー、なるほど・・・そういう感じですか〜」
あゆはそういうと天銀に視線を戻した。
「何がそういう感じなのかしら」
「なんでもないですよ〜♪」
「・・・・・・」
も、もしかして天銀が女子だってことがこの一瞬でバレたのか!?いや、天銀は全くポーカーフェイスを崩してなかった。
・・・ということは俺に視線を送ったときに確信したのか・・・!
でもなんで天銀の性別を疑うにまで至ったのかがわからない。
「じゃっ!今日はお挨拶だけさしていただきたかっただけなので!」
そう言ってあゆは俺の車椅子を押して、教室を出て、学校を後にした。
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